第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はアジアで開催された1次ラウンド、2次ラウンドが終了。日本とオランダが決勝ラウンドへの進出を決めた。アジアで開催された両ラウンドで予想外の活躍を見せたのが、イスラエルだった。韓国・ソウルでの…

第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はアジアで開催された1次ラウンド、2次ラウンドが終了。日本とオランダが決勝ラウンドへの進出を決めた。アジアで開催された両ラウンドで予想外の活躍を見せたのが、イスラエルだった。韓国・ソウルでの1次ラウンド・プールAを無傷の3連勝で突破すると、2次ラウンド初戦のキューバ戦も勝って4連勝。オランダと日本に敗れ、決勝ラウンド進出はならなかったが、世界の野球界に大きなインパクトを与えたことは間違いない。

■関心低いイスラエル本国、2次R登録選手は全28選手が米国生まれで興ざめ

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)はアジアで開催された1次ラウンド、2次ラウンドが終了。日本とオランダが決勝ラウンドへの進出を決めた。アジアで開催された両ラウンドで予想外の活躍を見せたのが、イスラエルだった。韓国・ソウルでの1次ラウンド・プールAを無傷の3連勝で突破すると、2次ラウンド初戦のキューバ戦も勝って4連勝。オランダと日本に敗れ、決勝ラウンド進出はならなかったが、世界の野球界に大きなインパクトを与えたことは間違いない。

 チームを率いたウェインスタイン監督は「今回の結果を受け、イスラエル本国で野球に対する注目が高まればいい。野球の育成プログラムを支援する寄付などが集まれば最高。選手たちの活躍が、ユダヤ系アメリカ人の子供たちが野球を始めるきっかけになればいいし、イスラエル本国でも子供たちの目に留まれば」と話していた。

 今回、イスラエル代表として国旗のついたユニフォームに袖を通した選手の大半はユダヤ系アメリカ人。イスラエル国籍を持つ選手は1次ラウンドには投手リペツがいたが、2次ラウンドからは登録外となり、同じく投手のクレーマーも“正式な”イスラエル人だが、カリフォルニアで生まれ育ち、ドジャース傘下のマイナーに所属。それ以外はユダヤ系アメリカ人でメジャー球団や傘下マイナーチームと契約を結んでいる選手ばかりだった。

 WBCでは「パスポートを取れる資格のある選手」というのが代表になれる条件だが、この条件のためにイスラエル本国ではWBCにまったく関心が寄せられていないという。イスラエルの現地紙「ハアレツ」電子版で、前回2013年大会の予選に同行したイスラエル国籍を持つ元野球選手、ダン・ロゼム氏が痛烈な指摘をしている。

■スポーツ・文化大臣は「国が率先して資金を費やしたい分野ではない」

 野球が世界に広く普及するように――。そんな願いが込められたWBCで見せたイスラエルの快進撃は、大会の理想をまさに現実化したようなケースだった。だが、盛り上がっていたのは、選手の“母国”アメリカとWBC参加チームだけ。米全国紙「USA Today」電子版によれば、イスラエル本国ではスポーツ・文化大臣を務めるミリ・レジェブ氏は「野球チームがあることは知っているけど、それ以上のことを知ったかぶりしたくない。彼らを後押しすることが私の仕事だが、国が率先して資金を費やしたい分野ではないことは明らか」と話したそうだ。

 この温度差の原因について、ロゼム氏は大きな問題を2つ指摘する。1つは、イスラエルにある野球育成プログラム出身の選手が1人もロースター入りしなかったことだ。ブルペン捕手としてイスラエル国籍を持ち、育成プログラムから輩出されたタル・エレルが同行していたが、近々アメリカの大学に進学することが濃厚で、彼の経験がイスラエル本国に還元されることは望まれないそうだ。

 もう1つは、実際にイスラエルに住む人々と、ユダヤ系アメリカ人が抱く「イスラエル」に対するイメージの違いのようだ。WBCの試合前にある国歌斉唱時に、イスラエルはチーム全員が「キッパ」と呼ばれる帽子のようなものを頭に乗せていたが、本国の人々から見ると「この行為こそイスラエルらしくないものに見えた」という。つまり、イスラエルを代表するチームと言いながら、そのチームこそがイスラエルの本質を理解せず、ステレオタイプのイメージを抱いている感覚を沸かせたのだそうだ。

 また実際のイスラエルは、人口の20%がユダヤ系ではないが、WBCチームは全員が“ユダヤ系”を主張していたことも不自然さが残るという。

 イスラエル本国に野球が根付くまでには、まだまだ長い時間が掛かりそうだが、こういった議論が生まれたことこそが、その一歩になるのかもしれない。