アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されている「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)の本戦7日目は、男子シングルス4回戦が行われ、第4シードの錦織圭(…

 アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されている「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)の本戦7日目は、男子シングルス4回戦が行われ、第4シードの錦織圭(日清食品)はノーシードで勝ち上がったドナルド・ヤング(アメリカ)に6-2 6-4で勝利。2年連続、そして今大会では自己最高タイのベスト8に駒を進めた。

 日本勢でもう一人勝ち残っていた西岡良仁(ミキハウス)は、第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)に6-3 3-6 6-7(4)の逆転負け。手の届きかけた金星をつかむことはできなかった。

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 マスターズ1000の4回戦という舞台に日本人が2人いる。それだけでも十分心躍る状況だったが、その2人が揃ってベスト8に駒を進めるという夢のようなシーンが、相当鮮やかな色彩を帯びて目の前に広がりかけていた。第4シードの錦織の順当勝ち、そしてラッキールーザーの西岡の大金星と-----。

 錦織はほぼ狙った通りの試合展開だった。簡単に決着するポイントは少なく、ファンはそのラリーを楽しみ、錦織自身はこのコンディションでのストローク感覚をさらに高めた一戦だっただろう。

 錦織と同い年のヤングは世界ランク60位。ジュニア時代は世界ナンバーワンで、錦織世代の〈星〉だった。しかし直接対決はプロになってからで、錦織が4勝している。ヤング自身の成績はグランドスラムもマスターズシリーズもベスト16が最高。差は十分あるとは思えたものの、こうした楽観が今年は何度か裏目に出ている。

 錦織が今年これまで敗れた相手4人のうち、ロジャー・フェデラー(スイス)以外は皆それまで敗れたことのない相手だ。例えば、過去錦織に5連敗で66位のアレクサンドル・ドルゴポロフ(ウクライナ)がブエノスアイレスの決勝でその錦織に勝ったことなどは、近いランキングのヤングのような選手にも力を与えるものだろう。しかも今回のヤングは、第23シードのサム・クエリー(アメリカ)と第14シードのルカ・プイユ(フランス)を破って自信をつけてきている。

 しかし、打ち合いになれば錦織のショットの精度や種類が勝ることは明らかで、立ち上がりのゲームでブレークに成功すると、第7ゲームに2度目のブレークを果たし6-2でセットを先取。第2セットは第2ゲームでブレークを許した。奪われたポイントはほとんど錦織のアンフォーストエラーで「彼のショットはスピン量が多いので、うまく対応できなかった」と振り返った。

 そのまま1-4まで離されたが、ここでブレークバックがほしいというところで錦織は集中力を見せた。第7ゲームで相手のダブルフォールトももらってブレークバック。結局1-4から5ゲーム連取で試合を締めくくった。

 この日は第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第15シードのニック・キリオス(オーストラリア)に敗れ、第11シードのダビド・ゴファン(ベルギー)は第27シードのパブロ・クエバス(ウルグアイ)に敗れた。シードダウン、番狂わせが相次ぐ大会となっているが、錦織はこうした現状について、「20位、30位くらいにいい選手がいるので、誰が上がってきてもそんなに驚きはない」という。

 誰が誰を倒してもおかしくないというムードに、この日もっとも乗っていたのが西岡だろう。3つのグランドスラム・タイトルを持つ世界3位から第1セットを奪取。ワウリンカはアンフォーストエラーを繰り返したが、サウスポーの西岡のスピンを嫌がっていたことは間違いない。いつも通り、足を使って深いショットを粘り強く返し、ショートアングルやドロップショットを効果的に使い、時にサーブ・アンド・ボレーも効果的に使った。

 しかし、予選から数えて6試合目である。先々週のアカプルコでも予選から5試合を戦った西岡には連戦の疲労が出始め、第2セット途中から流れが変わってきた。

 「横は動けていても、自分からパワーが出なくて、ボールが浅くなってきた。相手のボールが重く感じるようになって、最後は力を見せつけられたという感じ」

 強打のフィーリングが合っていなかったワウリンカは自分から打つことをやめ、つなぎのショットを中心にしながらチャンスを待ち、狙いを定めて強烈なウィナーを両サイドから放った。不調の中でもこうして勝つ方法を見出し、実行できるのが、この位置にいる選手である。

 最後の最後まで西岡にチャンスがあったが、最終セットは2度のサービング・フォー・ザ・マッチを締められず、タイブレークで力尽きた。

 「やりきった結果なので、悔いはないです」と言う西岡の笑みは力なかったが、必ず次の何かにつながるという確信はつかんだ。

 勝った錦織の準々決勝の相手は第17シードのジャック・ソック(アメリカ)だ。第6シードのマリン・チリッチ(クロアチア)が初戦で敗れたドローの“山”から勝ち上がってきた。今年はすでにATP250のツアー・を2つ獲得し、2月にトップ20入りを果たしたばかり。対戦成績は1勝1敗で、前回対戦時の60位から現在の14位という成長を考えれば大いに警戒は必要だが、「体力は残っているので集中力は持続すると思う」と錦織。ここを突破すれば、フェデラーかキリオスの勝者が待っている。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)