アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されている「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)の本戦6日目、シングルスはドローのボトムハーフ(下半分)の3回戦が…
アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズで開催されている「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/本戦3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)の本戦6日目、シングルスはドローのボトムハーフ(下半分)の3回戦が行われ、第4シードの錦織圭(日清食品)は世界ランク28位のジル・ミュラー(ルクセンブルク)を6-2 6-2で一蹴。3年連続の4回戦に駒を進めた。
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安心ムードの源はサービスにあった。
リオ(ATP500)での1回戦敗退からこれまで、「サーブの調子を戻すことが大事だったので、サーブの練習は重点的にやっていた」と錦織。少なくともこの3回戦では成果が出た。第1セットのファーストサービスの確率は95%で、そのうちの75%をポイント獲得につなげた。
心地好いサービスキープはリターンゲームに費やせる余力を生む。193cmと長身のミュラーは昨シーズン記録したエースの数でツアー3位というビッグサーバーだが、錦織は第3ゲームと第5ゲームでいずれもデュースのあとブレークに成功。スピンをかけて高く弾ませるボールが効果的だったと、試合後は満足顔を垣間見せた。
ミュラーとの前回の対戦は昨年10月のバーゼル( ATP500で)の準決勝で、第2セットでマッチポイントを握られながらの逆転勝ちだった。3セットで計20本のサービスエースを奪われている。
この日も立ち上がりのゲームで時速200km近いサービスエースを3本決められ、前回の対戦の記憶が蘇ったというが、「徐々にファーストが入らなくなってきたので、自分のリターンで攻めることができた」と振り返った。
第2セットになると錦織のファーストサービス確率も64%まで落ち、その分、サービスキープ多少てこずるゲームもあったが、第1ゲームで先にブレークしていたことでプレッシャーは大きくなかったはずだ。第6ゲームで一度ブレークバックのピンチをしのいだあとの第7ゲームで、2度のデュースの末にブレーク。ミュラーのアドバンテージから3ポイント連続のダブルフォールトだった。
最後のゲームは40-15からのサービスウィナー。試合を通じたファーストサービスの確率が50%を切ったミュラーから、わずか1時間11分で勝利を奪った。
波乱が相次ぐ今大会。第1シードのアンディ・マレー(イギリス)が初戦となる2回戦で予選を勝ち上がったのバセック・ポスピショル(カナダ)に敗れたのがもっともショッキングだったが、第6シードのマリン・チリッチ(クロアチア)、第7シードのジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)も初戦で敗れた。錦織の4回戦の相手もシード勢が順当に勝ち上がれば第14シードのルカ・プイユ(フランス)と第23シードのサム・クエリー(アメリカ)の勝者だろうと予想されたが、その両方を倒してドナルド・ヤング(アメリカ)が勝ち上がってきた。
対ヤングはこれまで錦織の4勝0敗。ミュラー同様に左利きだが、「まったくタイプが違う。よりラリーは長くなるだろうし、その中でも攻めてくる選手。ストローク戦がしっかりできるので、コンディションに慣れるという意味ではいい相手」と分析した。さらに先を見据えたテーマをさらりと口にする錦織に、このところ囁かれていた〈スランプ〉の影は見えない。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)