オリンピックで現在、「人力」以外に認められているのは「馬力」だ。1900年の第2回のパリ大会で馬術が初採用され、東京五輪でも正式種目となっている。他に波、風、水流など自然の力を利用する競技はあるものの、人以外の生き物が直接的に介在するのは…

 オリンピックで現在、「人力」以外に認められているのは「馬力」だ。1900年の第2回のパリ大会で馬術が初採用され、東京五輪でも正式種目となっている。他に波、風、水流など自然の力を利用する競技はあるものの、人以外の生き物が直接的に介在するのは馬術だけだ。

オートバイのトライアル競技 ライディングするのはホンダの元世界王者・藤波貴久(ホンダ提供)

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 かつては「機械の力」、つまりエンジンを使った競技も存在していた。1908年のロンドン大会でモーターボート競技が正式競技として開催され、無差別級、60フィート級、8メートル級の3種目が実施された。

 また、非公式競技として自動車レース、オートバイレースも1900年のパリ五輪の関連イベントとして開催されたとの記録も残っている。実際は同年のパリ万国博覧会の中で実施されたようで、公開競技としても国際オリンピック委員会(IOC)ではカウントされていない。

 IOCの公式サイトによると、エンジンを使った正式競技としては「ウオーターモータースポーツ」の名称で1908年ロンドン大会のモーターボートが唯一、紹介されている。

 モータースポーツの場合は、この「機械の力」が働くことが難点だ。F1のように使われるパワーユニット(エンジン)は各チームともばらばらなこともあり、イコールコンディションは必ずしも保持されていない。だから、車両の機械的な優劣で競技が左右される場合があり、競技種目入りに懐疑的な見方をされているのが現状だ。

 それでも採用に関する検討は継続してされているもよう。代表例はオートバイのトライアルだ。岩場など自然の地形を足をつかずに走破する競技で、オートバイのほかに自転車もトライアル競技があることから、25年以上前にダブルでの採用の可能性が話題となったことがある。

FIAのカート委員会会長を務めるフェリペ・マッサ(モビリティランド提供)


 最近では電動レーシングカートが議論された。国際自動車連盟(FIA)のカート委員会の会長に元F1ドライバーのフェリペ・マッサが就任。次の2024年のパリ大会の採用を目指し、2018年にアルゼンチン・ブエノスアイレスで行なわれた第3回ユースオリンピック夏季大会で電動カートによるデモンストレーションレース開催を実現させた。

 ジャン・トッドFIA会長も昨年1月にスイス・ローザンヌで行われたユースオリンピック冬季大会を視察し、「安全で持続可能な環境において、電動カートはモータースポーツを紹介する上で面白い方法」と売り込みをかけた。が、残念ながら、その年の12月に開催されたIOC理事会ではパリ五輪の追加競技に盛り込まれなかった。

 ただ、FIAやオートバイ競技を統括する国際モーターサイクリズム連盟(FIM)はIOCの認可団体になっており、車体、電気モーターを含めたパワーユニット、タイヤなどを全選手共通にすれば、今後、五輪競技に関与する道が開ける可能性は残されている。

 競技とは関係ないものの、F1マシンが五輪を彩ったことはある。2006年のトリノ冬季五輪の開会式では、赤一色のフォーミュラカーがアトラクションの1つとしてドーナツターンを披露した。トリノはフェラーリを傘下に収めていたフィアットの本社があり、前年型のフェラーリF2005を改良したマシンを元F1ドライバーでイタリア出身のルカ・バドエルが操った。

 モータースポーツはそもそも純粋なスポーツなのか、興行要素の強いエンターテインメントなのか、意見が分かれる面もあるのは確か。さまざまなハードルをクリアする必要はあるようだ。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)


※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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