3月12日、「2017 WORLD BASEBALL CLASSIC™」(以下、WBC)の2次ラウンドが東京ドームで行われた。初戦で侍ジャパンはオランダと対戦し、両軍合わせ27安打、16投手が登板した死闘を、延長11回タイブレークの末に8対…

3月12日、「2017 WORLD BASEBALL CLASSIC™」(以下、WBC)の2次ラウンドが東京ドームで行われた。初戦で侍ジャパンはオランダと対戦し、両軍合わせ27安打、16投手が登板した死闘を、延長11回タイブレークの末に8対6で勝利した。

★序盤戦は打撃戦の様相も

まさに死闘だった。延長11回の末に勝利した小久保裕紀監督は、試合後のヒーローインタビューで「死闘でした(勝因は)このインタビューだけでは語りきれないです」と声を震わせた。

試合序盤は打撃戦の様相だった。2回に、この日8番に抜擢された秋山翔吾外野手(埼玉西武)の犠牲フライで侍ジャパンが先制。だが、その裏に先発の石川歩投手(千葉ロッテ)がスクープ内野手にソロ本塁打を浴びすぐさま同点に追いつかれた。

さらに3回には中田翔内野手(北海道日本ハム)の3ラン本塁打と秋山のタイムリーで4点を勝ち越すが、その裏にもオランダ打線が石川を襲い、バレンティン外野手(東京ヤクルト)の2ラン本塁打などで同点に追いつかれた。

それでも5回に、攻守で今大会好調が続く小林誠司捕手(読売巨人)がセンター前にしぶとく運ぶタイムリーで勝ち越し。その後幾度もピンチを招くが、中継ぎ投手陣の踏ん張りや、菊池涼介内野手(広島)の好守などでリードを8回まで守った。

だが、9回に今大会初めて抑えとしてマウンドに上がった則本昂大投手(東北楽天)が2死までアウトを取りながらも、スクープに痛恨の同点打を浴び、試合は振り出しに戻された。

★牧田の好リリーフが勝利呼び込む

写真提供=Getty Images

延長10回表は1死満塁のチャンスを作りながらも青木宣親外野手(ヒューストン・アストロズ)が併殺に倒れ、勝ち越し点を奪えず。それでもオランダに流れを渡さなかったのが、この裏から登板したアンダーハンド右腕の牧田和久投手(埼玉西武)。「力強い打線でしたが、自分特有の胸元に浮き上がるボールを投げれば打たれないと思いました」と、度胸よく投げ込み三者凡退に抑えた。

すると、無死一、二塁から始まるタイブレーク制度が導入された延長11回。途中出場の鈴木誠也外野手(広島東洋)がきっちり犠打を決めると、打席には中田。「誠也から“あとは頼みました”と言われたので、先輩として意地でも打たねばと思いました」と2球目をレフト前に弾き返し、二者が生還。東京ドームは大熱狂に包まれた。そして、その裏を牧田が二者の走者をものともせずに三者凡退に抑え、激闘に終止符を打った。

小久保監督は、試合後の記者会見で「一生忘れられない試合になるでしょう」と語り、「勝ちたいという執念とチームの和による勝利です」と選手たちを労った。

貴重な2次ラウンド初戦を制した侍ジャパンは、1日の休息を挟み、14日にキューバ、15日にイスラエルと戦いグループ上位2カ国に与えられる準決勝進出を争う。

◎オランダ・ミューレン監督(元ヤクルト外野手)

「こちらは高めに浮いた球を仕留めきれずに、相手は仕留められたことが勝負のアヤになりました。まだ2試合あるので、今日の教訓を生かしていきたいです」

◎牧田和久投手

「イメージ通りの投球ができました。登板前は臆病に思うようなところもあったのですが、投げてみると自分のボールで差し込むことができていたので、これはイケると思いました。今後も強いチーム相手に自信を持って投げ込んでいきたいです」

文=高木遊