「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)の男子シングルス2回戦で、西岡良仁(ミキハウス)が第19シードのイボ・カルロビッチ(ク…
「BNPパリバ・オープン」(ATP1000/アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズ/3月9~19日/賞金総額699万3450ドル/ハードコート)の男子シングルス2回戦で、西岡良仁(ミキハウス)が第19シードのイボ・カルロビッチ(クロアチア)を6-4 6-3で破り、マスターズシリーズ2度目の3回戦に駒を進めた。
171cmの西岡と211cmのカルロビッチ。ツアー一の大男を、ツアーで1、2の小柄な選手がストレートセットで破った。体格がアドバンテージを左右するスポーツの世界では、小さい者が持てる技を駆使して大きい者を凌駕する光景は人の心を打つ。〈スタジアム3〉は満員ではなかったが、居合わせたファンは皆、小さな勝者に喝采を送った。
第1セット、西岡はサービスゲームで何度もピンチを迎えた。第2ゲームは5度デュースを繰り返し、その中で4度ブレークポイントを握られた。第6ゲームも40-15からデュース4回のロングゲームとなり、3度ブレークポイントに直面した。
「あそこで我慢できたのがよかった。シーソーゲームでついていけてからこそ相手にもプレッシャーをかけることができた」
ピンチをすべてしのいだ西岡はそう振り返ったが、その間、自分にブレークチャンスは一度もなく、初めてチャンスが訪れたのは第9ゲーム。1本目、カルロビッチのファーストサーブに対してフォアでリターンエースを決めると、2本目は211cmの頭上をバックハンドのロブで抜いた。サービスウィナーで1本を返されたが、そこから2ポイント連続のダブルフォールトで西岡がブレークして5-4。第10ゲームはラブゲームでキープし、6-4でセットを先取した。
「(カルロビッチのサービスは)回転がかかっていない分、手の届くところなら当てさえすればなんとか返せるという感覚がつかめていました」
ラリーになれば西岡のストローク力で十分勝負できたし、頻繁にネットに出てくるカルロビッチに対して得意のパッシングショットが生きた。第2セットは自分のサービスゲームをより簡単にキープし続け、3-3から3ゲームを連取。マッチポイントはダブルフォールトで決した。
これまでツアー記録の1万1801本のエースを叩き出し、サービスキープ率でも歴代ナンバーワンのカルロビッチだが、同時にダブルフォールトの数もツアー最多の1試合平均5.2本という面もある。このところの3大会で連続して初戦敗退という結果で自信を失いかけているせいかもしれないが、その欠点が露呈した。1ゲームで2つのダブルフォルトをおかしたケースは3度。そして西岡はその3ゲームすべてでブレークに成功した。何もしないで4ポイントのうち2ポイントももらえばブレークはたやすいと思われるかもしれないが、カルロビッチのサーブ力を思えばその勝負強さは大したものだ。
予選で敗れながらラッキールーザーで本戦入りした大会で、シードを破って3回戦まで駒を進めたことも勝負強さの表れだろう。
「僕はもうすでに負けたので、これ以上負ける心配はしなくていい」
オンコートでは英語のインタビューでそう言ってスタンドの笑いを誘い、記者会見では試合後の握手について「全然、顔は見えなかった。僕の目線は彼の腰くらいだったので(笑)」とジョークまじりに話した。
3回戦の相手は第13シードのトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)。一昨年の全仏オープンでストレート負けしたが、「あのときほど一方的にはならないんじゃないかと思っている」と確かな自信を覗かせた。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)