新大阪駅から南、梅田駅と難波駅のほぼ中間地点に位置する大阪市営地下鉄・堺筋本町駅。そこから直結のコワーキング&デジタルファブリケーションスペース・The DECKで第2回の「パッカソン」が開催された。■「プロ野球×データ」、新サービス創出へ…

新大阪駅から南、梅田駅と難波駅のほぼ中間地点に位置する大阪市営地下鉄・堺筋本町駅。そこから直結のコワーキング&デジタルファブリケーションスペース・The DECKで第2回の「パッカソン」が開催された。

■「プロ野球×データ」、新サービス創出へ第2回「パッカソン」開催

 新大阪駅から南、梅田駅と難波駅のほぼ中間地点に位置する大阪市営地下鉄・堺筋本町駅。そこから直結のコワーキング&デジタルファブリケーションスペース・The DECKで第2回の「パッカソン」が開催された。

 2015年の前回は東京で「プロ野球×データ」をテーマにして行われたが、今回は関西圏に初進出。「プロ野球(パ・リーグ)の新しいファンを増やすこと」をテーマに全6チームが様々なユーモア溢れるアイデアを出し合い、それを実際に形にすることで競い合った。

 そもそも、パッカソンの名前の由来となった「ハッカソン」が何を意味するのかについて触れてみたい。前向きな意味の「ハック」と「マラソン」を組み合わせてできた造語で、プログラマーやデザイナー、エンジニアなどで複数のチームを作り、技術とアイデアなどを出し合って競い合う開発イベントのことを指す。その「ハッカソン」に「パ・リーグ」の「パ」を組み合わせてできた新たな言葉が「パッカソン」である。

 ファン目線の新たなアイデアを必要としていたパシフィックリーグマーケティング株式会社(以下PLM)により、今回もこのイベントが行われることになったわけだが、2日間に渡って開催され、参加者はもちろんのこと、取材しているこちらまでもが疲労感を感じるほどの、「マラソン」の要素がたっぷりと詰まったパッカソンを振り返ってみることにする。

■会場を24時間開放、徹夜で作業進めるグループも

【3月4日(土)パッカソン1日目】

 ファシリテーターをハッカソン芸人・ハブチン氏が務め、キャンプインと題して参加者がそれぞれ〇〇芸人というニックネームで自己紹介。その後はPLMマーケティング室室長の荒井勇気氏の「PLMが何をしているか」、「なぜパ・リーグがハッカソンをやるのか」についての説明や、ソサエティアンドヘルスラボ(SHL)の鎌田真光氏による「人類vs運動不足」についての講義、さらには今回のAPIについて、会場に用意されているプロトタイプのガジェットの説明などを実施。ユニークなものでは、ロボット型の動くスマートフォン・ロボホンによる説明も行われた。

 また、スペシャルゲストとして森脇健児氏とかみじょうたけし氏のプロ野球大好き芸能人の2人が登場。森脇氏は南海ホークスのユニホームに「42.195」の背番号が入った姿で現れると、かみじょうたけし氏は楽天・茂木選手のユニホームの下にウィーラー選手のTシャツを着用し、「もぎ、もぎ、もぎえいごろう!」と茂木選手の応援歌を口ずさみながら登場。「川崎球場の流しそうめんは有名だが、大阪球場の外野ではキャッチボールが行われていた」という話や、「ドカベン香川は試合中にベンチ裏のお好み焼き屋にお好み焼きを8枚買いに行っていた」というエピソードトーク、「さすらいのコーヒー売り・ヤマモトさんは~」といったマニアックな話まで、“昔のパ・リーグ”について語りつくし、会場を盛り上げた。

 一通りパッカソンについての説明やパ・リーグトークが終わり、企画のアイデア出しからスタート。そのアイデアをもとに投票を行い、投票数上位の企画者を中心に6つのチームを結成。こうしてパッカソンの長い2日間が始まった。

 最初は各チームで積極的に意見を出し合い、細かい話し合いを重ねてイメージを膨らませていく。そこである程度の形(イメージ)が出来上がると、PCでそれぞれがデータを打ち込むなど、実際に手を動かし始める。数時間が経過し、早いチームは3Dスキャナやプリンタ、カッティングマシンなどの機材がそろうファブスペースで製作を開始。たったの数時間という驚異のスピードで試作機を作り上げていく。

 驚くべき光景を目の当たりにし、どうして今回のイベントに参加したのかという興味から、参加者に話を聞いてみると、「特別野球が好きというわけではないけれど、ハッカソンが好きだし、興味はあった」といった理由で参加している方や、「パ・リーグのチームを応援していて、エンジニアとしての仕事もしているので」というように、その理由は様々だ。

 その後も6チームの参加者による作業は続けられ、会場は24時間開放。中には徹夜で作業を進めるグループも……。

■ユーモアあふれるアイデア集まる

【3月5日(日)パッカソン2日目】

 初日に蓄積した疲れが影響しているのか、2日目は静かなスタートとなった。

 前日の疲れを和らげるため、審査員を務めるSHLの林英恵氏による「プレゼンテーションで力を発揮するためのヨガ教室」が開かれた。ヨガの定番・木のポーズからエネルギーをチャージするための呼吸法など、簡単に実践できるものから難易度がやや高めのものまで約10分間、じっくりと本格的なヨガが行われた。

 その後は朝の9時半から発表時間の16時までそれぞれのチームがひたすら作業。完成するまで、そして納得のいくまで黙々と、ひたすら作業。疲れがピークに達していようが、ひたすら作業。これがハッカソンの「マラソン」たる所以なのだろう。

 そして16時に発表の時を迎え、あらかじめ決められた順番通りにそれぞれの方法でプレゼンを開始。発表順はお手製のスコアボードに1回表から3回裏までチーム名が記載されたものが会場に設置された。以下、発表順通りに2日間の各チームの完成企画、アイデアをご紹介していこう。

1・チーム名:たぬきそば 企画タイトル:フレフレパ・リーグ

 メガホンに加速度センサーを組み込み、球場でメガホンを叩き、応援の熱の入り具合をファン同士で対決させるという企画。しっかりとメガホンをたたくことでメガホンの色が鮮やかに変化することがこの企画の特徴。

2・チーム名:パパパパッとび 企画タイトル:パッとび

 球場までのルートや、球場内で指定されたとおり、タイミングよくジャンプをすることでパッとびボードが光るという企画。一体感を感じさせることがこの目的であり、球場に向かうまでの道筋においてもファンは楽しめる要素が満載であるということからこの企画は発案された。

3・チーム名:マイナス2 企画タイトル:パッ喰MAN

 街中の看板や商品名などに記載されているパを探し、そのルートを通過することで「パ」を集めるというアプリ。10パ集まると、選手ガチャを引くことができ、それぞれのチームが作れるというもの。街中を意識しながら歩いてみると「パ」という文字が意外に多かったこと、「パ」という響きはかわいいという理由からこの企画は生み出された。

4・チーム名:にゃん海ホークス 企画タイトル:パ・リこれスターズ

 歩けば歩くほど、球団マスコットの様々なコスチュームが手に入り、お好みの着せ替えができるというアプリ。野球には興味がなくても、マスコットに興味を持つファンがいるという点に着目した。

5・チーム名:スイング 企画タイトル:ポスト・イチロー

 室内でも振ることができるコンパクトなバットでスイングスピード&飛距離を出し、ランキングで競わせるというもの。ボール遊びができない公園が増えたこと、野球がどんどんプレーしにくくなっている現状を考慮し、「室内でも野球ができる」というアイデアを形にした。

6・チーム名:ペアチア 企画タイトル:ペアチア

「どんなことをすれば子供に喜んでもらえるか」という調査をネット上で行い、導き出された答えは「親が一緒に遊ぶことで子供は喜んでくれる」というもの。そのデータを用い、野球の応援歌などを親子で一緒にcheer(応援)しようというアイデアを考案。パソコンなどのデータ通信が行える端末さえあればどこでも一緒に楽しめるという点が強みだ。

■グランプリ受賞は…

 このように、ユーモア溢れる企画発表や横一線のハイレベルな戦いが繰り広げられたことで、4人の審査員の頭を悩ませた。受賞チームの決定も当初予定されていた15分を過ぎ、30分ほどを要する形となった。そして悩みに悩み抜いた末にようやく決定され、各賞の受賞者が発表された。

 見事、栄えある「パパパパッカソングランプリ賞」に輝いたのは4番目(2回裏)に発表されたチーム・にゃん海ホークスのパ・りこれスターズだった。すでにリリースされている「パ・リーグウォーク」にマスコットの要素が組み込みやすく、今すぐにでも実現できるという点が評価された結果だ。

 前出のPLMマーケティング室室長の荒井勇気氏は「2日間を通して徹夜までして開発をしてくださった方もいて、その上で短期間にもかかわらず非常にクオリティが高い発表が多く、改めてパッカソンを開催できてよかったなと強く感じました」とイベントを終え、率直な感想を述べる。

 さらに「現時点では次回以降の開催は決定していませんが、今回のパッカソンを通し、ファンの方とサービスを共創することの重要性を改めて理解することができました。次はどこで開催するのか? いつ開催するのか? といううれしいお声を複数の参加者からも頂戴し、早く第3回パッカソンを開催したいなと思いました」と今回の手応えを口にした。

 優勝チームには「特別な体験付き試合観戦チケット」が贈られ、参加者のアイデアにより、パ・リーグ(PLM)には今後の大きな可能性がもたらされた。いわゆるWin-Winと呼ばれる最良の結果につながり、第2回パッカソンは“パ・リーグ(PLM)の今後の展開が非常に楽しみだ”と思える内容の濃い2日間となった。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」編集部●文