7月23日、アウディが電動ドライブトレインのクロスカントリーラリーマシンアウディ「RS Q e-tron」の“デジタルワールドプレミア”を実施した。フォーミュラEやDTMで培った技術も活用しつつ生み出したマシンで、2022年のダカールラリー…

7月23日、アウディが電動ドライブトレインのクロスカントリーラリーマシンアウディ「RS Q e-tron」の“デジタルワールドプレミア”を実施した。フォーミュラEやDTMで培った技術も活用しつつ生み出したマシンで、2022年のダカールラリーに参戦する。

電動車でダカールラリー四輪総合優勝戦線に参入することを目指しているアウディが、出場を予定する同ラリー2022年大会の“挑戦車”をプレゼンテーションした。マシンの名は「Audi RS Q e-tron」。最初のコンセプトアイデアから1年に満たない期間でテスト開始に漕ぎ着けたことに対し、アウディのモータースポーツ活動を統括するユリウス・シーバッハは、「白紙状態から記録的なスピードで開発・製作されたマシンだ」と誇らしげに語る。

アウディはサーキットレースで培われたテクノロジーも活用しつつ、いろいろな意味で効率的にこのマシンの準備を進めてきたようだ。今季(2020/2021シーズン)でファクトリーレベルの活動を終えるフォーミュラE、2020年で終了したDTMのファクトリー活動、それぞれから技術の“有効利用”が見られる。

まず、RS Q e-tronはフォーミュラEのモータージェネレーターユニット(MGU)を3つ持つとされる(そのうち2つがフロントとリヤのアクスルをドライブする=前後各1つ)。そして、DTMの高効率TFSIエンジン(2リッター4気筒ターボ:2019~20年)がバッテリーを充電するエネルギーコンバーターの一部として搭載されている、というのだ。

開発を統べるステファン・ドライヤーは「エンジニアとして我々は、すべてのコンポーネントに開発のポテンシャルを見出している」とした上で、「ドライブトレインシステムに関しては既にフォーミュラEでかなりハイレベルなシステム効率を実現しているため、(そうした意味では)改善の余地がない(くらいだ)よ」との意を語り、自信を示している。

外観については、アウディのモータースポーツ・デザインのチームリーダーであるファン・マヌエル・ディアスがこう語った。「未来的であり、アウディらしいデザイン要素もたくさん取り入れたものになっている」。

アウディのダカール参戦は「Q Motorsport」と共同で進行中。Q Motorsportを率いるのはスヴェン・クワント(Sven Quandt)、ラリー/クロスカントリーラリー(ラリーレイド)の世界で長いキャリアと成功を誇る“有力首脳”のひとりである。クワントは今回のアウディとの“電動ダカール計画”を人類初の月面着陸に喩え、「何が起こるかまったくわからないわけで、状況は似ていると思うね。もし我々が最初のダカールを(概ね無事に)フィニッシュできたなら、その時点で成功といえる」と、挑戦の意義、そして難しさを説く。

既にドライビングクルーは発表済みだ。ダカールの強豪としてお馴染みのカルロス・サインツにステファン・ペテランセル、そしてDTM王座獲得経験を有し、アウディと深いつながりのある“オールラウンダー”マティアス・エクストロームといった顔ぶれがRS Q e-tronをドライブすることが決まっている(公開されたテスト走行シーンの写真にはエクストロームがコクピットに座る姿も)。

ダカールラリーの2022年大会はサウジアラビアにて1月開催予定。ちなみに同大会はFIAの新たなクロスカントリーラリー世界選手権の開幕戦となることが発表されている。

なお、アウディは7月21日にカスタマーレーシング活動における基幹車種のひとつ、サーキットレースのGT3規定車である「Audi R8 LMS GT3」の現行車2度目となるエボ化を受けた新モデル、“evo II”(2022モデル)をプレゼンテーションした。7月31日~8月1日に決勝レースがあるスパ・フランコルシャン24時間レースにて、evo IIのディスプレイが行なわれる予定だという。