7月17日・18日、ツインリンクもてぎでスーパーGT第4戦が開催された。ゴールデンウェーク中に行なわれた第2戦・富士以来、レースは実に2カ月半ぶり。新型コロナウイルス感染拡大によるまん延防止等重点措置の適用により、本来5月末に予定していた…

 7月17日・18日、ツインリンクもてぎでスーパーGT第4戦が開催された。ゴールデンウェーク中に行なわれた第2戦・富士以来、レースは実に2カ月半ぶり。新型コロナウイルス感染拡大によるまん延防止等重点措置の適用により、本来5月末に予定していた第3戦・鈴鹿が8月に延期となったからだ。


スーパーGT第4戦で繰り広げれた

「ホンダvsトヨタ」

 第4戦の大会直前に関東一帯が梅雨明けしたことにより、栃木県のもてぎは予選日から気温30度を超える真夏日。決勝スタート時は気温33度、路面温度51度と、灼熱のコンディションとなった。

 予想以上の暑さに、各チームは対応に追われて四苦八苦となる。そんな厳しい環境のなか、ホンダ、トヨタ、日産がしのぎを削るGT500クラスでは、WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋@ナンバー19)が予選から存在感のある走りを見せた。

 ポールポジションを獲ったのは、ホンダ陣営のSTANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐@ナンバー1)。しかし、19号車は予選2番手からスタートすると、前半スティント担当の国本雄資が牧野任祐の駆る1号車を抜いてトップに浮上した。

 その後、ピットストップで1号車に逆転を許してしまったが、後半スティントを務めた宮田莉朋(りとも)が快進撃を見せる。当初は5秒近く引き離されてしまうが、1周あたり1秒近いペースで急接近。ついに1号車を射程圏内にとらえた。

 GRスープラを駆る宮田は、次世代のトヨタ陣営を背負う「エース候補」として期待される21歳。GT500クラスのフル参戦2年目となる今年は、突出した速さを随所で見せている。

 第2戦・富士では並みいるライバルに競り勝って初のポールポジションを奪取し、第4戦・もてぎでも予選でトップに0.05秒差まで肉薄。また、今年から本格参戦しているスーパーフォーミュラでもデビュー戦でいきなりポールポジション争いを演じるなど、その成長ぶりにパドックでの評判も上々だ。

 今もっとも勢いがある若手ドライバーのひとりだけに、今回のレースでは1号車を再び追い抜いてGT500初優勝を飾るだろうと、メディア関係者の多くが結末を予想した。

 宮田はトップを奪うべく、何度もオーバーテイクを試みる。しかし、なかなか1号車も隙を見せない。攻略しようとしている相手は、スーパーGTで2度、スーパーフォーミュラで3度の年間王者を経験している山本尚貴だ。王者の壁を突き崩すのは、そう簡単ではなかった。

 後方から何度もプッシュを受けると、逃げる側は精神的に追い詰められ、最後は勝負もあっけなく決まってしまうことが多い。しかし山本にとって、"追いつかれること"は想定の範囲内だった。

 その時の状況を、山本はこのように振り返った。

「レースの序盤を見ていても、あのコンディションでは19号車のほうが速いのはわかっていました。幸いピットストップで逆転できたので、あとは"どう守り切るか"でした。順当に速さだけで競い合っても、それでは太刀打ちできないなと思いましたので。

 無理に逃げようとしてタイヤとブレーキを酷使してしまうと、余計に苦しくなる可能性がある。だから無理に逃げようとはせずに、相手を引きつけることにしました」

 ツインリンクもてぎは追い抜きのポイントが少なく、勝負どころは限られてくる。そこで山本は、あえて接近戦に持ち込むことで背後から迫る宮田の強みを消す作戦に出た。

 さらに山本は、前で逃げている状態にありながら、相手の隙を探っていたという。

「正直、すぐにやられるかなと思ったんですけど、(宮田選手が)後ろについてから1周くらい、狙いにくる素振りをあまり見せてこなかったんです。無理にでもインに飛び込んでくる素振りがあれば、相手にまだ余裕があるだろうと思ったかもしれませんが......その動きがなかったので『たぶん相手も余裕はないな』と瞬時に察知しました」

 山本の読みは当たっていた。

 一方、宮田もファステストラップを更新する勢いを見せていたが、いざ1号車の背後につくと、勝負できるほどの余裕はなかったという。

「もてぎはやっぱり抜きづらいですし、タイヤ特性が大きく影響しました。(1号車が履く)ブリヂストンの強みと(19号車の)ヨコハマの弱みが出てしまって、ヨコハマの強みが薄れている状態でのバトルになってしまいました。GT300との混走で相手が引っかかっている状態なら勝負できるんですけど、2台だけの勝負で追い抜くのは難しい状況でした」(宮田)

 結果、約30周にわたって繰り広げられたトップ争いは、山本が最後まで逃げ切って終幕。1号車が待望の今季初優勝を飾った。栃木県出身の山本は参戦12年目にして初めて地元優勝を達成し、マシンを降りると笑顔で何度もガッツポーズを繰り返した。

 レース後、山本は最後まで食らいついてきた宮田の走りを称えた。

「若いからこそ結果を求めて、ガムシャラにトップを狙って走りたくなる年齢だと思います。だけど、相手にぶつけることなくフェアに戦い、あのポジションを持ち帰ってきた彼のセンスは目を見張るものがありました。彼が勝つ日はすぐ来るだろうな、と思いましたね」

 王者に果敢に挑んでいきながら、一歩及ばず2位となった宮田はマシンを降りたあと、悔し涙を流したという。しかし、表彰式を終えた頃には、すでに"次"を見据えていた。

「本当に悔しいです。でも、やり切った成績です。ずっとトップ争いをしたいと思っても、それができないシーズンが続いていましたが、今年に入ってくうまくいくようになって、富士でポールポジションが獲れ、今回も最後まで攻めて2位で終えることができました。

 スーパーGTのなかで、ブリヂストンとミシュランに勝つのは本当に大変なことです。でも、努力を怠ってはいけない。やり続ければ、最強と言われているライバルに勝てる時が絶対くると信じています」

 ホンダを牽引するベテランのエースとトヨタの次世代を担う若きエースの対決は、山本に軍配が上がった。だが、宮田も勝利に値するパフォーマンスを披露した。ふたりが再び対決するシーンを、ぜひとも見てみたい。