Jプロツアー第9戦となる「第55回JBCF西日本ロードクラシック広島大会」が7月4日、広島県中央森林公園サイクリングコースを舞台に開催された。そもそもは6月に同コースで全日本選手権が開催され、新たなチャンピオンが選出された後のレースになって…

Jプロツアー第9戦となる「第55回JBCF西日本ロードクラシック広島大会」が7月4日、広島県中央森林公園サイクリングコースを舞台に開催された。
そもそもは6月に同コースで全日本選手権が開催され、新たなチャンピオンが選出された後のレースになっていたはずなのだが、新型コロナウィルスの感染拡大で、広島県に緊急事態宣言が発令され、全日本選手権は開催を延期(現段階での開催時期未定)。さらに第8戦として予定されていた古殿ロードレースも中止となり、レーススケジュールに大きな変更があった。全日本選手権に向けてピークを作っていた選手たちは、いったん緊張を解き、このレースのブランク期間を経て、仕切り直しをした上で当日を迎えることになった。
諸状況から欠場したチームもあり、圧倒的な存在感を放ってきていたフランシスコ・マンセボらは、母国のナショナル選手権出場のために欠場。55名のみがスタートするコンパクトな形となった。
この日のレースは、1周12.3kmのサーキットを12周走る147.6kmの設定だ。梅雨の晴れ間で気温が上がり、蒸し暑さに包まれながら、正午にレースがスタートした。



蒸し暑さに包まれた梅雨空の下、レースがスタート

さっそく活発なアタックと、集団への吸収が繰り返される。2周目に4名が先行、5名の追走が合流し、9名の先頭集団が形成された。この集団には、小森亮平(マトリックスパワータグ)、住吉宏太、當原隼人(以上愛三工業レーシングチーム)、尾形尚彦、風間翔眞(以上シマノレーシング)、香山飛龍、井上文成(以上弱虫ペダルサイクリングチーム)、冨尾大地、白川幸希(以上CIEL BLEU KANOYA)と主要チームはメンバーを送りこんでいた。



2周目に形成された9名の先頭集団



地元eNShareレーシングチームがメイン集団をコントロール

後続のメイン集団は地元チームのeNShareレーシングチームが先頭を固める。この後ろにシマノレーシング、マトリックスパワータグが控え、状況を伺いながら、先頭集団との差を2~3分に維持して周回を重ねていった。
7周目に、動きが起きた。メイン集団から、安原大貴(マトリックスパワータグ)、鈴木譲(愛三工業レーシングチーム)、湊諒(シマノレーシング)、入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)と力のある4名が飛び出し、先頭集団に合流したのだ。この動きは決定的なものになり、メイン集団はペースダウン。ほぼ13名となった先頭集団と後続との差は4分まで開く。



4名が合流、先頭集団は13名に。これが決定的な動きとなった



入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)と白川幸希(CIEL BLEU KANOYA)の2名が先行し、10周目に入る

9周目、この先頭集団から白川がアタックし、入部が食らいついた。2名は後続に20秒ほどの差をつけて10周目に入っていく。登坂区間で白川が遅れたことを受け、入部は単独で先行する。しかし小森、安原、冨尾、井上、湊、鈴木、安原ら7名が入部の独走を許さず、集団を作って追走し、入部を吸収。新たに9名の先頭集団が形成されることになった。



白川が遅れ、入部は単独で先頭を行く



追走7名が入部を捕らえた

4分以上のタイム差を開いていたメイン集団はすでに崩壊しており、レースは完全に先頭集団に託されていた。11周目、登りで井上がアタック。小森、冨尾、入部がこれを追い、4名の集団となって、最終周回に突入した。ラスト10kmあまりとなり、この4名と集団後方との間には1分以上のタイム差が開いていた。事実上、勝負の行方はこの4名に絞り込まれた。



11周目、井上文成(弱虫ペダルサイクリングチーム)がアタック

ラスト5kmを過ぎ、最後の登り区間に入ると、小森、入部が立て続けにアタック。入部は展望台への登りで再度アタックするも決定打とならず、下りで3名に追いつかれてしまう。



最終周回に臨む4名



ゴールに向けアタックする小森

勝負はホームストレートでのスプリントで決されることになった。



ホームストレートに差し掛かり、スプリント勝負へ



競り勝った小森が、Jプロツアー初優勝!

残り200m付近から伸びてきた小森が、追う井上、冨尾らを下し、Jプロツアー初優勝を決めた。マトリックスパワータグは欠場で出走メンバーを減らしながらも、前戦で優勝した小林海に続き、2連勝を決め、改めて層の厚さを見せつけることになった。



初優勝を決め、小森は心からの笑顔を見せた。2位には井上、3位には冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)が入った

小森にとっては、メジャーレースでの勝利としてはU23の全日本選手権以来だという。広島は地元でもあり、勝利の喜びがあふれる笑顔を浮かべた。そして「最初の逃げが最終局面まで続くとは思っていなかった」とレースを振り返る。スプリント勝負に持ち込みたくはなかったが、避けることができなかったと語ったが、結果的にはそのスプリントで競り勝った形になる。「自分より強いチームメイト」の存在に触れつつも、「彼らがいるからこそ思い切って自分の走りができたことが良かった」と勝利を噛み締め、チームの名物監督への感謝の言葉でインタビューを締めくくった。
再三アタックを繰り返す積極的な走りを見せた入部に敢闘賞が贈られた。
リーグの通算成績の首位を示すリーダー、U23リーダーには変動がなく、それぞれホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)、山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が守ることになった。



リーダージャージを守ったホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)

次戦は福島県の石川町で開催されるクリテリウムとロードレース。欠場したマンセボは個人総合ランクを3位に落とし、2位に岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が上がってきている。次戦以降、どのような動きが生まれるか、楽しみだ。

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【結果】JBCF西日本ロードクラシック広島大会 147.6km
1位/小森亮平(マトリックスパワータグ) 3時間48分37秒
2位/井上文成(弱虫ペダル サイクリングチーム)+0秒
3位/冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)+0秒
4位/入部正太朗(弱虫ペダル サイクリングチーム) +0秒
5位/安原大貴(マトリックスパワータグ)+58秒
6位/鈴木譲(愛三工業レーシングチーム)+1分7秒

【中間スプリント賞】
1回目/風間翔眞(シマノレーシング)
2回目/対象者なし
3回目/安原大貴(マトリックスパワータグ)

【敢闘賞】
入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)

【Jプロツアーリーダー】
ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)

【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)