ホンダがF1で33年ぶりの5連勝を果たした。4日に行われた第9戦オーストリアGPでレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(23)=オランダ=が3戦連続ポールトゥウインをマークし、ライバルとなっているメルセデス勢を完膚なきまでにたた…

 ホンダがF1で33年ぶりの5連勝を果たした。4日に行われた第9戦オーストリアGPでレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(23)=オランダ=が3戦連続ポールトゥウインをマークし、ライバルとなっているメルセデス勢を完膚なきまでにたたきのめした。ホンダの5連勝はアイルトン・セナ、アラン・プロストの2人で全16戦中15勝をもぎ取った1988年以来で、その年は11連勝を記録した。

オーストリアGPで3連勝をマークしたレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペン(ホンダ提供)

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 「ポールポジションからスタートしたフェルスタッペン選手は、先週に続いて完璧にレースをコントロール下に置き、レッドブルにとってのホームレースで連勝という、また一つ記憶に残る勝利を挙げてくれました。いつもながら素晴らしいパフォーマンスだったと思います」。現場部門を預かるホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはコメント。レース後にはチームを代表して表彰台に上がり、フェルスタッペンと一緒にシャンパンファイトを繰り広げた。

 レッドブルリンクはオーストリアをルーツとするレッドブルのホームサーキット。中高速コーナーが主体で、エンジン全開率はイタリアGPのモンツァに次ぐ高さを誇るパワーサーキットだ。平均時速も230km近くで、レース時間も1時間23分54秒543とあっという間にゴールする。

 今季5勝目を挙げたフェルスタッペンは最後まで盤石の走りを続けた。危なげなくピット2回の作戦をこなして他を圧倒。「いい戦いができるとは予想していましたが、ここまでとは思っておらず、マシンはまるでレール上を走っているようでした。ドライブしていてとても気持ちよかったですし、どちらのタイヤコンパウンドでも素晴らしいペースでした」と振り返った。

 返すがえすも惜しまれるのは絶好調のホンダが今季を最後にF1の活動を終了することだ。昨年10月に正式発表し、2022年以降はレッドブルが立ち上げた「レッドブルパワートレインズ」が業務を委託することも決まった。が、どうやら完全撤退ではなく、「フェードアウト撤退」の道を選んだもようだ。

 英メディアなどによると、田辺TDは「レッドブルとホンダはプロジェクトを進めており、来年の意向をプロセスについても検討を続けている。詳細については言えないが、いい方向に向かっている」としたが、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は「2022年は移行期間。ホンダとはソフトランディングを模索している。22年はHRD―Sakura(ホンダのF1開発部門)で組み立てを続け、23年に新しい施設に引き継げるようにと考えている」と来季もホンダが間接的にF1活動を継続することを明かした。

表彰台ではホンダの田辺豊治テクニカルディレクターがフェルスタッペンとともにシャンパンファイト(ホンダ提供)


 ホンダは撤退後の2年間はレッドブルに対して有償でサポートをするといい。「レッドブルパワートレインズ」のバッジをつけたホンダ製パワーユニットが来季の開幕戦で走ることになりそうだ。せっかく熟成させたホンダの開発技術をドブに捨てることなく、継承者に後を託したことはある程度の評価はできるが、F1ファンであれば、「ホンダ」のブランドの何かしらの存続を望みたいところだろう。

 ホンダのプロジェクトは現行が第4期と呼ばれるが、その前の第3期プロジェクトは2008年にリーマン・ショックの影響で終焉(しゅうえん)。ワークスチームを手放し、ロス・ブラウン氏に二束三文の1ポンドで売却した。ところが、継承した新チーム「ブラウンGP」は1年目の2009年にドライバー、製造者のダブルタイトルを獲得してしまった。車体は実質的にホンダが設計・開発したものながら、栄誉に預かったのはあくまでブラウンGP。表現はきついかもしれないが、ホンダは骨折り損だった。

 かつてF1に参戦したトヨタも09年で活動を終了。一時は知的財産を第三者に移譲して間接的に活動を続ける計画もあったが、頓挫してしまった。それでも開発拠点だった独TMG(トヨタモータースポーツ有限会社)は残り、結果的にF1から仏ルマン24時間レースへとプロジェクトを変更。現在も世界ラリー選手権との両輪で活動を続けている。

 ホンダの来季のF1活動はいわば「OEM(相手先ブランドによる生産)」。軽乗用車やアパレルブランドではよくある産業形態ながら、来季のパワーユニットについては中身は「ホンダ」と言われても、表札は「レッドブル」なんでしょ、ということに。素直に感情移入はできなくなるかもしれない。だからこそ、この1年でホンダの名前がF1から去ることがもったいなくてならない。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)


※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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