今週末のレッドブル・リンクには、10万人の大観衆が訪れる。 1週間前の第8戦シュタイアーマルクGPでは、試験的に1万5000人の観客が動員された。だが、オーストリア政府が7月から観客動員制限を撤廃したことを受け、今週末の第9戦オーストリア…
今週末のレッドブル・リンクには、10万人の大観衆が訪れる。
1週間前の第8戦シュタイアーマルクGPでは、試験的に1万5000人の観客が動員された。だが、オーストリア政府が7月から観客動員制限を撤廃したことを受け、今週末の第9戦オーストリアGPには地元のレッドブルファンのみならず、オランダからフェルスタッペン応援団が大挙して訪れる。サーキットはオレンジ色に染まることになりそうだ。
角田裕毅は同じコースでどんな
「答え合わせ」を出すのか
「そういう雰囲気を待ち望んでいたから、とてもうれしい。ファンの人たちに囲まれてレースをするのは楽しいし、ましてやここではオランダからのファンも多いからね。そんなファンのみんなのためにも、いい週末をお届けできればと思っているよ」
選手権を18点リードするマックス・フェルスタッペンは余裕の笑顔を見せた。先週のシュタイアーマルクGPではメルセデスAMGを圧倒する走りで勝利を収めたのだから当然だ。
今週のオーストリアGPは同じサーキットとはいえ、タイヤが1ステップ柔らかくなり、モナコGPやアゼルバイジャンGPと同じ最も柔らかい組み合わせとなる。
「正直言って走ってみないとわからないけど、当然ながら(タイヤが柔らかければ)それだけ速く走れるわけだから楽しみ。選手権リードは、まだ小さな差でしかない。シーズンはまだまだ長いんだ。まずは目の前のレースに集中していかなければならない。
同じサーキットでのレースとはいえ、今週はタイヤも柔らかくなるし、コンディションも違うだろう。先週よりもチャレンジングな週末になるはずだ。だから、それをしっかりとこなすことに集中しなければならないんだ」
レッドブル・リンクで2週続けて開催されるということは、先週のデータをもとに失敗点を見直し、同じサーキットで"答え合わせ"ができる。つまり、ほぼすべてのチームがほぼ完璧なセットアップと戦略に仕上げてくる、ということだ。
これは、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)のようなルーキーにとっては絶好の機会だ。
「同じサーキットでもう1回レースができるのは、僕にとっていいことですね。もちろん、コンディションにもよるので雨にはなってほしくないですが、去年のFIA F2の時もオーストリアで2週連戦をやって2ラウンド目はうまくいったので、今年も楽しみにしています。
今週末はタイヤコンパウンドも違ってC5タイヤを使うので、先週よりもグリップが高く、楽しい予選になると思います。それが決勝でどのようになるのか、そこも楽しみですね」
先週は抑えめのアプローチがうまくいき、ミスなく週末を乗り切って10位入賞を果たした。
しかしレースペースという点では、前走車を抜けずに抑え込まれてしまったこともあって、満足のいくものではなかった。同じサーキットでその"答え合わせ"ができるということは、角田にとって極めて大きな前進のチャンスになり得る。
ライバルとの力関係という点では、相対的なポジションは下がる可能性さえあるだろう。しかし、そこにはF1マシンやタイヤマネジメント、レース運営を学ぶうえで極めて重要な学びがある。
チームメイトのピエール・ガスリーは言う。
「今回はサーキットのことを熟知した状態で臨むことになるから、どういう妥協点に持っていけばマシンのパフォーマンスを最大限に引き出せるか、みんなある程度わかった状態で戦うことになる。だから、いつも以上に僅差の戦いになるだろう。僕たちはディテールに目を向け、それをきちんとまとめ上げる必要がある」
シュタイアーマルクGPではフェラーリが思いのほか強力なレースペースを見せ、6位・7位でフィニッシュした。ガスリーは、自分が1周目の接触でリタイアしていなかったとしても、彼らと戦うのは難しかっただろうと振り返る。
「シャルル(・ルクレール)が1周目にピットストップしたところから7位まで挽回したように、フェラーリは思っていたよりも速かった。だから、リタイアしなくても相対的に彼らと戦うのは厳しかったと思う。
マクラーレンやフェラーリと戦うためには、もっとインプルーブ(改善)しなければならないところがいくつかある。僕らは予選では強力だけど、日曜のペースではライバルよりも少し苦しんでいるから。今週はタイヤが柔らかくなればデグラデーション(性能低下)も厳しくなるので、戦略面も先週とは違った選択肢が必要になると思う」
つまり経験の浅い角田にとっては、また新たな試練に直面することになる。
角田はチームメイトやライバルとの差を気にする前に、まずは自分の"答え合わせ"に集中しなければならない。それがうまくいけば、結果は自然とついてくるだろう。
ライバルと戦う前に、まず自分に勝つこと。前戦シュタイアーマルクGPでようやく手にしたその成果を、今週もしっかりと自身の成長につなげてもらいたい。