島津アリーナ京都(京都府立体育館)で開催されているATP公認大会「第53回 島津全日本室内テニス選手権大会(京都チャレンジャー)」(本戦2月20~26日/賞金総額5万ドル/室内カーペット)の本戦6日目は、男子シングルス準決勝と男子ダブル…

 島津アリーナ京都(京都府立体育館)で開催されているATP公認大会「第53回 島津全日本室内テニス選手権大会(京都チャレンジャー)」(本戦2月20~26日/賞金総額5万ドル/室内カーペット)の本戦6日目は、男子シングルス準決勝と男子ダブルス決勝が行われた。

 日本勢で唯一残っていた内山靖崇(北日本物産)は第2シードのグレガ・ゼムラ(スロベニア)を3-6 6-4 6-3で破り、この大会初の決勝に進出。20歳のロイド・ハリス(南アフリカ)を6-4 6-7(3) 7-6(5)で退けた第6シードのブラズ・カブチッチ(スロベニア)との決勝に臨む。 

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 この大会がATPポイントのつくチャレンジャー大会になってから丸20年が過ぎたが、その間に決勝に進出した日本人は5人しかいない。そして6人目となったのは現在世界ランキング227位、国内では10番目となる内山だ。

 227位が国内で10位に過ぎないほど日本男子が底上げされていることにあらためて驚かされる。例えば、国際大会化してから3年目に日本人として初めて決勝に進んだ本村剛一は、当時266位で国内3位だった。そしてそのときの国内10位の選手はATPランキング535位である。

 20年前、いや10年前、5年前と比べても格段に高まった競争レベルの中で、選手の向上心もさらに高まってきた。デビスカップのメンバーに何度も選出され、自分よりも上の選手と濃密な時間を長く過ごし、幅広い視野を養ってきた内山の場合はなおさらだろう。このままではダメだという思いは何かがきっかけで芽生えたものではなく、少しずつ育ってきたものだと語った。

 準決勝。家族やコーチといった身内だけではなく、最終日の盛り上がりのためにも日本選手をなんとしても残したい大会関係者の願いも背負っての一戦だ。しかし気負いすぎず、気持ちをうまくコントロールしながら試合を進めた印象だった。

 第1セットは6度ブレークポイントを握りながらいずれもものにできず、逆にたった一度ブレークポイントを握られた第4ゲームを失った。

 「相手はこっちのチャンスになるとギアを上げてきた。それを上回れない自分にイライラして、フラストレーションはすごいたまりました」と振り返り、「セカンド(セット)からは攻め急ぐのではなく、押し込むようなプレーをしようと切り替えていく中で自分のほうに徐々に傾いてきたと思う」と続けた。

 実際、一度ブレークされてからはブレークポイントすら与えず、第2セットは5-4で迎えた第10ゲーム、このセット初のブレークポイントを生かした。ボレーでミスをしても積極的にネットに出る姿勢を変えず、速いサーフェスを生かしてコートをワイドに使ったスピード感ある攻撃も随所に見せる。

 最終セットは両者危なげないキープ合戦で中盤を過ぎたが、「サーブはよかったので、そんなに怖さはなかった。最後はタイブレークまでいっても絶対取れると思えた」という。

 第8ゲームで15-40のチャンスが訪れた。かつてはトップ50にいたこともある30歳のベテランのボレーはネットにかかり、決定的なブレークに成功。尻上がりの痛快な締めくくりだった。

 チャレンジャー大会での決勝進出は2015年の7月以来となる。初優勝をかけた相手は世界ランク166位のカブチッチ。対戦経験のない20歳のハリスよりも、昨年2度対戦したカブチッチのほうがイメージしやすいと話していた。しかも2度目の対戦となる9月の上海ではストレートで勝っている。

 「100位を目指すことを考えれば年に2、3回はチャレンジャーの優勝のポイントがほしい。通過点として必要だと思うし、明日勝って初めて意味がある」

 その決意と、一戦ごとに高めてきた自信でいいクライマックスシーンを見せてほしい。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)