専修大学卓球部女子のエースは木村香純(きむらかすみ)だ。Tリーグ・木下アビエル神奈川では、2020-2021シーズン、シングルス6勝3敗の成績を残した。特筆すべきはその勝利した相手だ。早田ひな、平野美宇、赤江夏星と日本代表クラスに加え、シャ…

専修大学卓球部女子のエースは木村香純(きむらかすみ)だ。

Tリーグ・木下アビエル神奈川では、2020-2021シーズン、シングルス6勝3敗の成績を残した。特筆すべきはその勝利した相手だ。早田ひな、平野美宇、赤江夏星と日本代表クラスに加え、シャン・シャオナ(ドイツ)、于梦雨(ユモンユ・シンガポール)、エリザベタ・サマラ(ルーマニア)と海外トップクラスの選手からも勝利をあげた。

Tリーグプレーオフファイナルでは再び早田に勝利し、シーズンの快進撃はまぐれではないことを自ら証明した。

専修大学卓球部女子特集第2話では、“日本卓球界のニューヒロイン”木村にこの1年を振り返ってもらった。すると、木村の強さの秘密が見えてきた。




【木村香純(きむらかすみ)】1999​年10月24日生まれの専修大学4年生。千葉県出身。四天王寺高校ではインターハイ団体優勝の実績を誇る。木下アビエル神奈川からTリーグに参戦した3rdシーズン、早田ひなや平野美宇、シャン・シャオナら格上を連破しシングルス6勝3敗の大ブレイクを果たした。2020年の関東学生選手権でも優勝を飾り、大学女子卓球界を代表する選手の1人。

早く「勝って当然」と言われるような立場に

――昨年12月の取材以来ですね!今回もよろしくお願いいたします。

Tリーグファイナルは早田ひな選手に第3マッチで勝利して、ビクトリーマッチ(VM)にも登場と大活躍でしたね。

木村香純:ありがとうございます。第3マッチの勝利は素直に嬉しかったです。嬉しかったんですけど…。




写真:木村香純(専修大学)/撮影:槌谷昭人

木村香純:最後、VMで負けてしまったので、やっぱりショックの方が大きいです。次の日からは、ずっと負けたことを考え続けていました。




写真:木村香純(木下アビエル神奈川)/撮影:ラリーズ編集部

――考え続けた結論は出ましたか?木村香純:考え続けた結果、「Tリーグで勝ったね」とか「すごいじゃん」とか言われるのは嬉しいんですけど、将来的にはそう言われないくらいになりたいなという気持ちが芽生えました。

言われてる間は「負けて当たり前」と思われているということ。今はそういう立場ですけど、早く「勝って当然」と言われるような立場になりたいなという気持ちが強くなりました。

そういう意味では、VMはすごく勝ちたかったですけど、次に進める良いきっかけとなる敗戦でした。




写真:早田ひなと対峙した木村香純(木下アビエル神奈川)/撮影:ラリーズ編集部

コロナ禍に自分を見つめ直して気づいたこと




写真:木村香純(専修大学)/撮影:ラリーズ編集部

――昨年、今年と学生卓球の集大成となるはずだった年は、コロナで思うように行かない期間が続いています。ここ1年を振り返ってみてどうですか?木村香純:コロナで卓球ができない自粛期間が長く続き、戸惑いが大きかったです。――これだけ卓球を休んだのは初めてだという選手の声も良く聞きます。木村香純:私もそうでした。

でも、自分だけではなく、周りの人も同じ状況なので、みんな一緒の0からのスタートだと考えて、トレーニングなどに取り組んできました。Tリーグでも、全員同じ状況だという気持ちで試合ができたので、今まで以上に強い気持ちを持って試合ができたかなと思います。

むしろ今では、自分の中でコロナの自粛期間は前向きに捉えられています。



――特にどういった点でしょうか?木村香純:いつ練習が開始できるかもわからないし、試合ができるかもわからない。そういう不安定な状況でしたが、卓球ができない分、卓球以外のことも含めて、今まで考えたことがないことをずっと毎日考え続けられた時間でした。

自分を見つめ直す時間、みたいな感じです(笑)

――卓球以外にも視野が広がったんですね。卓球面でも変化がありましたか?木村香純:考え方が特に変わりました。

以前までは、練習中に自分を責めすぎる傾向がありました。上手くできなかったら「なんで?なんで?なんで?」とだんだん沈んでいくことが多かった。でも、自粛明けからは自分を責めすぎず、できなかったら「なぜできないんだろう?」と考えられるようになった。

できなかったらどこができなかったのかなど、1つのことを真っすぐ見すぎないで、考えが柔軟にまとまるようになりました。



木村香純:また、怪我で少し休む期間もあったのですが、自粛の長い期間に比べたら可愛いものだと思えました。前まで3日休んだら焦っていましたけど、もう怖いものはないですよ(笑)。

あのときが一番怖かった。自粛期間を乗り越えているから、みんな10日くらい休むのはへっちゃらだと思いますよ(笑)



自分で何かを得ないといけないという焦り




写真:木村香純(専修大学)/撮影:ラリーズ編集部

――加藤充生樹監督も木村選手の卓球への意識の高さを絶賛していました。「どれだけ実力差のある選手とやっても気を抜かない。もちろん態度が悪くなることも一切ない」と。木村香純:気を抜かないという気持ちで入るというより、「今日はこれを磨こう」、「何かしら得よう」と考えて、練習に臨んでいます。例えば練習相手が左利きだったら「こういう攻め方の練習をしよう」などです。

そういう考えを持って練習に入れば、自然と気は抜けなくなります。




はい、間違いありません

木村香純:大学に入ってからは特にその気持ちが強くなりました。

というのも、四天王寺高校の時は自分と二人三脚の担当コーチがいましたが、大学入学後、環境ががらっと変わりました。

自分で何かを得ないといけないという焦りがあって、何かを掴み取らないといけないという気持ちが高くなりました。

高校の時もありましたけど、大学に入ってから良い刺激が増えましたね。



卓球で、生きていきます




写真:木村香純(専修大学)/撮影:ラリーズ編集部

――最後に今後の目標を教えてもらえればと思います。木村香純:春のリーグ戦がなくなって、自分の力を発揮する場所が少なくなってきましたが、大学卒業までの一番の目標は全日学優勝です。――ありがとうございます。

ちなみに…卒業後の進路についてはどうされるんですか?

木村香純:将来のことは自粛時期に少し考えていました。

でも、卓球に触れていない時間なので、自粛明けてから自分の実力が上がるか下がるか全然わからなかった。将来のことをそこで深く考えると全てが崩れる気がして、自粛明けに自分の実力を上げるためにはどうするかを考えていました。

でも、自分に卓球があるのが一番なことに変わりはないです。卓球で、生きていきます。

――ちなみに具体的な進路は…?木村香純:決まったらお知らせしますね(笑)――ぜひ!(焦らない)



取材・文:山下大志(ラリーズ編集部)