※本記事は『第4回コンバインドジャパンカップ盛岡大会 公式プログラム』の掲載内容を一部再構成したものです。 新形式導入の経緯、従来との違い 今大会からコンバインド種目の新形式が導入される経緯について羽鎌田さんは、「CJC2021は…


※本記事は『第4回コンバインドジャパンカップ盛岡大会 公式プログラム』の掲載内容を一部再構成したものです。 

新形式導入の経緯、従来との違い

 今大会からコンバインド種目の新形式が導入される経緯について羽鎌田さんは、「CJC2021は東京オリンピックの代表内定選手にとって最後の実戦の場であると同時に、パリオリンピックにコンバインド種目での出場を目指す選手のための大会でもあります。ですので少し気は早いですが、パリオリンピックで導入されるであろう2種目複合の形式を世界に先駆けて採用させていただきました」と話します。 これまでとの大きな違いは成績の計算方法です。従来はスピード、ボルダリング、リードの順位を掛け算し、その値の小ささを競いました。しかし新形式の2種目複合では順位の掛け算はせず、ボルダリングとリードそれぞれのポイントを足し合わせたものを複合ポイントとして成績とします。その背景には「オリンピックではメダリストを決める必要があるため、極力順位がタイとなることを避けたい」という前提があるそうです。3種目複合と比べ、2種目複合で順位の掛け算をするとタイ順位が出てしまう可能性が大きいのです。 この問題を避けるため、「IFSC(国際スポーツクライミング連盟)総会で案として挙がったのが、ボルダリングとリードそれぞれで選手のパフォーマンスに従って極力差がつくように100点満点のポイントを与え、その結果を足すというものです。今大会のルールもこのIFSC総会の議論をベースに作られています」と羽鎌田さんは話します。 

順位決定に関するルールの要点

 新形式に関して具体的なルールを伺ったので、図表とともに要点を解説します。

①パフォーマンスポイント(PP)

 まずボルダリングとリードの両方でパフォーマンスポイント(PP)を算出します。 ボルダリングは完登数とゾーン数に従い「基礎ポイント」が入ります。基礎ポイントが並んだらアテンプトを考慮してポイントを引き、その結果が「ボルダリングPP」となります。一見複雑に見えますが、羽鎌田さんが「従来のルールをポイント化しただけであり、新ルールになって順位が入れ替わるわけではないです」と指摘するように、本質的にルールは変わっていません。例えば予選ならば1完登の選手は25、4ゾーンの選手は20となるので、両者の成績は逆転しません。あくまでリードと足し算するためにポイント化しているだけと考えていいでしょう。 リードも同様に従来通り高度で競います。高度に2.5ポイントを掛けたものが選手の「リードPP」となり、+は0.5ポイントが追加されます。また今大会では制限時間内であれば、タイムは成績に影響しません。これに関しては、「タイムを成績に反映することはリードの本質ではないという意見もあるので、新形式ではタイムを除外しました。ただし、タイ順位の解消のために今後再びルールに追加される可能性はあります」と羽鎌田さんが述べるように、タイムが完全に除外されるかどうかは現状不明です。

②ステージポイント

 次に①のPPをボルダリングとリードそれぞれで「ステージポイント」に換算します。具体的には、それぞれで1位の選手のステージポイントが100となるように全選手のポイントを調整します。なぜPPをそのまま成績にしないかというと、「両種目の間での難しさの違いが選手の成績になるべく影響しないようにするため」だと羽鎌田さんは話します。例えばボルダリングが難しく完登者が出なかった場合、全選手のボルダリングPP は20以下になりリードでほぼ成績が決まる状況になりかねません。そのため両種目で1位の選手のポイントを100に合わせることで、ボルダリングとリードそれぞれの最終成績への影響をできるだけ同等にしているのです。

③複合ポイント

 最後に②で算出されたボルダリングとリードのステージポイントを足し合わせ「複合ポイント」として、その大きさで順位を競います。 今大会の新形式は、パリオリンピックでも採用されるのでしょうか。この点は「IFSC総会でルールの大枠は決まりつつありますが具体的な議論は続いているため、今大会ではルールの細部を日本独自に決めたものもあります」とのことなので、今大会とパリオリンピックのルールはまったく同じではなく、今後も微修正されることが予想されます。 羽鎌田さんが「選手のみなさんには新ルール対応の負担をかけることになりますが、今大会のフィードバックを参考にルールのフォーマットを固めていきたいです」と述べるように、選手側も運営側と一丸となって、クライミング界のために新たなものを作り上げていく気持ちで大会に臨めるとよいのではないでしょうか。