女子海外メジャーの全米女子オープン(6月3日~6日/カリフォルニア州)は、通算4アンダーで並んだ笹生優花と畑岡奈紗による、史上初の日本勢同士によるプレーオフへ突入。9番と18番での2ホールによる戦い(ストロークプレー)では決着がつかず、サ…

 女子海外メジャーの全米女子オープン(6月3日~6日/カリフォルニア州)は、通算4アンダーで並んだ笹生優花と畑岡奈紗による、史上初の日本勢同士によるプレーオフへ突入。9番と18番での2ホールによる戦い(ストロークプレー)では決着がつかず、サドンデスとなった3ホール目に笹生がバーディーを奪って、初のメジャー優勝を飾った。



全米女子オープンを制した笹生優花。photo by Getty Images

 世界中の女子プロにとって、最大目標となる全米女子オープン。その大舞台で歴史的な戦いを繰り広げた笹生と畑岡は、ともに大会前から状態はよさそうだった。難コースでのプレーに対して、前向きに語っていた。

「風が強いし、ラフも長いですし、フェアウェーもかなり狭いので、やっぱり難しい。コースの傾斜もきつくて、こういうゴルフ場でプレーするのは初めて。でも、全米女子オープンに出られるというだけで、すごくうれしい。いい経験になるとか、(自身が)楽しむことに気持ちがいっている。

 結果を出したいという気持ちは、誰にでもあると思う。それは自分も同じ。でも、そこにはあまりこだわっていない。結果を出すためには今、何をしなければいけないのか。いつものことですけど、まずはそこに集中したい」(笹生)

「(コースについては)ティーショットをカーペットに打っていくような、それぐらい(フェアウェーが)細い印象。でも、ラフに外してしまうと、すごくラフが絡まってしまうので、フェアウェーに運ぶことが一番のポイントになるかな、と思います。また、横風のほうが多いので、そういう風をうまく使った攻め方だったりをしていきたい。

 練習ラウンドはよかった? そうですね。だいぶイメージどおりのボールが打てるようになってきました。今日ぐらいの調子なら、たぶん上に行けると思う。この状態を崩さないようにしていきたい」(畑岡)

 そして初日、笹生は4バーディー、2ボギーの「69」。2アンダー、6位タイと好発進を決めた。畑岡も1イーグル、2バーディー、5ボギーの「72」。1オーバー、26位タイとまずまずのスタートとなった。

「今日は朝から風が吹いていなくて、最初にバーディーを取れたのがよかったかなと思う。流れ的にはまあまあで、パターがちょこちょこ入ってくれたのがよかった。どの試合でも緊張はありますが、その中で楽しんでゴルフができるように意識していきたい」(笹生)

「バーディー発進といいスタートを切れたと思うけど、後半になるにつれて、(ショットが)風の影響を受けたりして、グリーンの読みもすごく難しかった。(前半を終えて)3アンダーまでいっていただけに、(最終的に)オーバーパーにしてしまったのはちょっと悔しい。いいショットをしてもラフにいったりしたのがあったので、風の読みをもう少し慎重にやっていかないといけないなと思いました」(畑岡)

 2日目も、笹生、畑岡はいずれもスコアを伸ばした。笹生は風が弱まった午後スタートで、6バーディー、2ボギーの「67」。通算6アンダーまで伸ばして、単独首位に立った。畑岡も、7バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの「69」。通算1アンダーとして、9位タイまで浮上した。

「ショットも安定していて、パットも入ってくれたのでよかった。今日は楽しくラウンドできました。優勝を意識? そういうことを考えるより、自分のゴルフをどうするかのほうが心配なので、そちらに集中すると思う。ここまでスコアが出ちゃっているので、満足じゃないと言ったら、逆におかしい(笑)。残り2日間もこんな感じでがんばれたらいいな、と思います」(笹生)

「今日、アンダーパーまで持っていけたのは大きい。昨日よりフェアウェーを捉える回数も多くて、いい位置からピンを狙うことができた。昨日よりグリーンもスピンが効いて止まるところも多かったので、よりデッドに狙っていけたのかな、と。上との差もそんなに開いていないので、明日しっかり伸ばして、いい位置で最終日を迎えられるようにしたいなと思います」(畑岡)

 快晴に恵まれた3日目は、グリーンが乾いてスピードが増し、一段と難しいコンディションとなった。多くの選手がスコアを崩すなか、笹生と畑岡はともに「71」のイーブンで回ってスコアをキープ。通算6アンダーの笹生は首位と1打差の単独2位で、通算1アンダーの畑岡は6位タイで最終日に向かうことになった。

「今日はパターがなかなか思うようにいかなかったけど、イーブンで終われてよかった。惜しいパットが多かった? USオープンなので、全部が全部入ることはないと思っています。何個か入ってくれただけでもうれしい。

 緊張はありますけど、プレッシャーはないです。(最終日に)最終組で回るということを想像していなかったので、 今日のように自分のゴルフに集中してがんばれたらいいな、と。明日は明日でまた、違う経験ができると思うので、その経験をすべて吸収していきたいと思います」(笹生)

「出だしが3連続ボギーで始まって、すごく苦しいラウンドでした。でも、4番で難しいパーパットが決まって、流れを変えられたと思う。タフなセッティングのなか、意外と伸ばせていない選手が多いのかなという感じがあって、途中までは『我慢』ということを自分に言い聞かせてプレーしていました。

 強い風? すごく読みにくかったです。グリーンも硬くなっていました。ちょっとまだ攻めきれていない部分があって、悔しい部分もあるんですけど、今はそれを言っても仕方がないので、明日一日、また集中してやるだけかなと思います」(畑岡)

 迎えた最終日、首位のレキシー・トンプソンが安定したゴルフを披露。前半を終えた時点では笹生に5打差、畑岡に6打差をつけて、そのままいくかと思われた。しかし、後半に入ってスコアを大きく崩して失速。代わって、通算4アンダーでフィニッシュした笹生と畑岡がトップタイでホールアウトした。そしてプレーオフの結果、笹生が1977年の全米女子プロを制した樋口久子、2019年に全英女子オープンを勝った渋野日向子に次いで、日本人3人目のメジャー制覇を遂げた。

「(勝負を決めるバーディーパットは)入ってくれたらいいなと思って打った。(入った瞬間は)うれしかったです。とにかく、キャディーが私を支えてくれた。『自分を信じよう』『全力を尽くそう』とずっと声をかけてくれた。それが力になりました。この数日間、自分の持てる力はすべて出せたつもり。こうして優勝できたことは本当にうれしい。ただ、このタイトルが余りにも重すぎて、まだうまく言葉にすることができない」(笹生)

 一方、畑岡は2018年の全米女子プロに続いて、手の届くところまできていたメジャータイトルを再びプレーオフで逃した。

「(首位と)6打差あって、攻めていかないといけないと思っていた。途中、ダブルボギーとかもあったけど、最後まで諦めずにプレーできたと思う。『ああしていれば......』というところもあったりして、悔いがないと言ったら嘘になります。負けたのは残念ですけど、(自らは)レベルアップしていると思う」(畑岡)

「黄金世代」「プラチナ世代」「新世紀世代」――。日本女子ツアーは今、数多くの若手選手が躍動している。その勢いは今回、笹生と畑岡によって、世界でも通用することが証明された。それほど遠くない日、複数の日本勢が再びメジャー大会で優勝争いを演じてもおかしくない。