マセラティは5月28日、レーシングカーの『ティーポ61』(Maserati Tipo 61)が、ドイツ・ニュルブルクリンクで開催された「ニュルブルクリンク1000kmレース」で勝利してから、60周年を迎えた、と発表した。◆約200本のチュー…

マセラティは5月28日、レーシングカーの『ティーポ61』(Maserati Tipo 61)が、ドイツ・ニュルブルクリンクで開催された「ニュルブルクリンク1000kmレース」で勝利してから、60周年を迎えた、と発表した。

◆約200本のチューブを組み合わせた鳥かご状のシャシー「バードケージ」

マセラティは1959年3月、『ティーポ60』の製造を開始した。マセラティのチーフエンジニアのジュリオ・アルフィエーリは、非常に細いパイプを多数組み合わせてシャシーを製作する手法を考えた。これが1951年に誕生したティーポ60の「バードケージ」だ。ティーポ60は、わずか36kgのシャシーに、ディスクブレーキと排気量1990ccの直列4気筒ガソリンエンジン(最大出力200ps)を搭載したフロントエンジンのスポーツカーだった。

マセラティは1959年11月、ルマン24時間耐久レースに出場するための技術的なレギュレーションに準拠したティーポ61を製造した。直列4気筒ガソリンエンジンの排気量は1990ccから2890ccに拡大され、最大出力は200psから250ps/7000rpmへと引き上げられた。それ以外のコンポーネントは、ティーポ60で採用したレイアウトやソリューションを踏襲していた。

ティーポ61は、ジュリオ・アルフィエーリが設計した5つのモデルシリーズの中で、最も有名な1台とされる。約200本のチューブを組み合わせた複雑な構造のシャシーが鳥かごに似ていることから、バードケージの愛称で親しまれていた。この構造は、当時の他のレーシングカーよりも軽量でありながら、より剛性の高いシャシーを実現していた。2シーターバルケッタのティーポ61は、フロントエンジンの後輪駆動モデルとして、究極かつ最良のレーシングカーだったという。

◆ティーポ61の車両重量は600kgで最高速は285km/h

ティーポ61ではティーポ60に対して、車両重量は570kgから600kgに変更された。最高速は270km/hから285km/hへ引き上げられている。

1959年から1961年までの3年間で、ティーポ60とティーポ61は国際的なレースシーンの頂点に君臨し、パワーとスピードで驚異的な勝利を重ね、マセラティの勝利の伝統を引き継いだ、と自負する。マステン・グレゴリーとロイド・カスナーが駆ったマセラティティーポ61は、スターリング・モスとダン・ガーニーがステアリングホイールを握った1960年の優勝からわずか1年で連覇を達成し、記念すべき2冠を打ち立てている。

ティーポ61は大出力にもかかわらず、燃料効率が非常に高かった。そのため、耐久レースでは給油回数を減らすことができ、ニュルブルクリンクでの勝利に貢献したという。

ティーポ61は1961年、ミッドマウントエンジンを採用した『ティーポ63』へと発展した。その後、ティーポ63の改良モデルの『ティーポ64』、『ティーポ151』のエンジンを搭載したティーポ64も登場している。

◆630psツインターボを搭載するMC20

マセラティはニュルブルクリンクでのティーポ61の勝利を記念して、2000年代にレーシングカーのマセラティ『MC12ストラダーレ』に、イメージカラーのホワイト&ブルー塗装のカスタマイズを施した。このレーシングDNAは現在、新型スーパーカーの『MC20』に引き継がれ、マセラティはモータースポーツへの復帰準備を進めている。

MC20のミッドシップには、新開発の3.0リットルV型6気筒ガソリンツインターボエンジンを搭載する。「ネットゥーノ(Nettuno)」と命名された新エンジンは、マセラティが自社開発し、イタリアのモデナ工場で組み立てられる。

新しいパワーユニットは、バンク角90度のV6アーキテクチャーを基本として、ツインターボとドライサンプ潤滑システムを採用した。3.0リットルの排気量から、最大出力630ps/7500rpm、最大トルク74.4kgm/3000~5500rpmを引き出す。

レブリミットは8000rpmで、リッターあたりの出力は210psだ。圧縮比は11:1、ボア×ストロークは88×82mmとした。新たな「メイド・イン・モデナ」エンジンは、伝統的な90度V6レイアウトを基本としながら、これまでに例のないレベルのパワーとトルクを実現しているという。MC20の動力性能は、0~100km/h加速2.9秒以下、最高速325km/h以上、としている。