木村和久の「新・お気楽ゴルフ」連載◆第2回 松山英樹選手のマスターズ優勝は、ゴルフファンに限らず、日本中に大きな衝撃を与えました。なにしろ、日本ゴルフ界、始まって以来の快挙ですからね。当分、"松山フィーバー"は続きそうです。 各ゴルフ雑誌は…

木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第2回

 松山英樹選手のマスターズ優勝は、ゴルフファンに限らず、日本中に大きな衝撃を与えました。なにしろ、日本ゴルフ界、始まって以来の快挙ですからね。当分、"松山フィーバー"は続きそうです。

 各ゴルフ雑誌は増刊号を出して、松山選手のマスターズ優勝を称賛。コロナ禍にもかかわらず、若者のゴルフ人口は増加し、ゴルフ人気に弾みがつきました。

 渋野日向子選手の全英女子オープン優勝もすごかったですが、松山選手の快挙はそれ以上のビッグウェーブが来ているような気がします。彼はきっと、何か"持っている"んでしょうね。

 キャラクターで言えば、渋野選手のほうが気さくで、お菓子を食べながらラウンドするなど、子どもたちからも絶大な人気を得ました。

 松山選手はマスターズの優勝スピーチからもわかるように、朴訥(ぼくとつ)で多くを語りません。キャラクターとしてはむしろ地味な印象を受けますが、そんなことは問題ない。とにかく、彼が成したことがすばらしいのです。



松山英樹選手のマスターズ優勝によって、活気づいている日本のゴルフ業界

 マスターズはご存じのように、4大メジャーの頂点に君臨するトーナメントです。だから、それ以上はないのです。

 そうなると、我々アマチュアゴルファーを含めたゴルフ界ではどんなことが起こるのか? 少し予測してみましょう。

(1)アマチュアの楽しみがひとつ消えた
 アマチュアゴルファーの楽しみは2つあります。

 ひとつは、自らプレーしてスコアアップを目指したり、レジャーとして嗜んで健康維持を図ったりすることです。

 そしてもうひとつは、見るスポーツとしての楽しみです。これが、松山選手の優勝で日本人選手が初めててっぺんを極めてしまった。だから、ゴルフファンとしては最高のものを見せられて、ある意味、もうこれ以上、望むものがないのです。

 個人的には「やったぁ~!」と思った瞬間、一抹の淋しさも漂いました。だって、あとは何を楽しみにゴルフ中継を見ればいいのか?

 そんなですから、このタイミングでゴルフはちょっと置いておいて、エンゼルスの大谷翔平選手の二刀流の行方を見るほうに、シフトチェンジした人も結構いるのではないでしょうか。

 そういうわけで、アマチュアゴルファーの夢は、自分自身のことに舵が切られました。シングルを目指すでもいいし、海外でゴルフをするでもいい。年間50ラウンドを目指す、というのもありでしょう。

 さまざまなスタイルで、自分のゴルフを極めること、楽しむこと――そういった点に、重きが置かれていくような気がします。

 そうした状況にあって、人々の意識はどう変わるのか。おそらく、こうです。

(2)スポーツからよりレジャー化へ
 現在、ゴルフ場は大入り状態が続いています。その余波は、ゴルフ場以外のところにも波及しています。

 ゴルフのクラブショップやシャフト屋さんなど、注文が多くて受注をこなせていないところもあるとか。コロナ禍で海外からの材料や製品が入ってこないため、商品作りが追いつかないそうです。

 どこのゴルフ場に行っても、大入り満員。売れているゴルフ雑誌は"松山効果"もあって、広告は倍増。「徹夜して雑誌を作った」などと、うれしい悲鳴を上げているところもあります。

 実際にゴルフ自体、比較的安全で密になりにくく、社交性もあって健康にいい。しかも、堂々と大手を振って行ける"遊び"として、脚光を浴びています。そうして、コロナ禍でやることがなくなった若者が「ゴルフでもやってみるか」と、興味を持ち始めたのです。

 つまり、新しくゴルフをやる人はこれまで以上に、スポーツというより、手軽なレジャーとして捉えています。

 そうなると、従来の倶楽部メンバーと、新しく始める若者ビジターとの間で軋轢(あつれき)が生じる可能性があります。頑固オヤジとカジュアルな若者は、水と油のようなもの。お互いに、よく思っていない感じがします。

 じゃあ、いったいどうすればいいのか?

(3)メンバーよりビジター優先という時代へ
 従来のカントリー倶楽部は、メンバーが集まり、自主独立の運営をして、エクスクルージブな集まりを生み出していました。

 ゆえに、メンバーに連れられて来たビジターは、ほとんど借りてきた猫状態でした。メンバーのお情けにより、普段は入れない場所に特別に入れてもらい、ちゃんと行動しなさい、というわけですね。

 ただこれは、メンバーとメンバーの家族&友人のみの運営で成り立っている場合の話です。

 今や、日本の純然たるメンバーシップ制度は崩壊し、ゴルフ場の多くがインターネットなどによるビジター予約が可能となりました。要するに、多くのゴルフ場がメンバーシップによる倶楽部運営が行き詰ったため、縁もゆかりも面識もない人を、ネット予約経由でラウンドさせているのです。

 古いメンバーさんは、いまだにそうしたビジターに対して「特別におまえらをラウンドさせてやる」という意識でいますが、実はどっこい、最近では立場が逆になってきているのです。

 メンバーシップによる運営が立ちいかなくなったから、ビジターにお願いして高い料金を支払っていただき、倶楽部運営を助けてもらっているのです。特に土日、祝日は、ビジターはメンバー料金の倍以上かかる場合もありますからね。そりゃ、すごい出費です。

 そして、そうやって高い料金を払ってくれるビジターの代表格が、新しくゴルフを始めた若者たちなのです。

 そんな若者たちが、メンバーコースをネットで予約して、せっかくの休みに2万円も払ってラウンドしていたら、メンバーらしき見知らぬオジサンから「ポロシャツの裾をズボンの中に入れて」なんて、注意されることが起こります。

 そのあたりの軋轢は、どっちがどうとは言いません。けど、今後はもっとビジターに優しいゴルフ場というスタイルで運営していかないと、ビジターが逃げてしまいます。

 倶楽部の品格を守るのも大事ですが、そもそもの経営が成り立たなくなっては、元も子もありません。メンバーさんたちの意識改革も必要になってくるでしょうね。

(4)ビジターへの対応
 そんななか、ビジター同士では「あのコースは口うるさくない」とか「フロントで呼び止められて注意された」などと情報交換をして、比較的行きやすいコースを選んでいます。

 翻(ひるがえ)って、コース側も建前は「倶楽部に相応しい恰好でご来場をお願いします」としていますが、ビジターが多い現在、服装が乱れているからといって、追い返すことはありません。

 今後は、ますますビジターの数が増える一方。そろそろ、ビジター用の服装マニュアルやローカルルール(オール6インチプレースプレー等)などを緩く定めて、ビジターを来やすくさせる。それぐらいしても、よろしいかと思うんですよね。