2月8日から11日まで、カザフスタン・アスタナ(ナショナルテニスセンター/室内ハード)で開催されている女子国別対抗戦「フェドカップ(フェド杯)」のアジア/オセアニアゾーン・グループⅠ。大会最終日の11日、日本は決勝でカザフスタンに1勝2…

 2月8日から11日まで、カザフスタン・アスタナ(ナショナルテニスセンター/室内ハード)で開催されている女子国別対抗戦「フェドカップ(フェド杯)」のアジア/オセアニアゾーン・グループⅠ。大会最終日の11日、日本は決勝でカザフスタンに1勝2敗で敗れ、ワールドグループⅡプレーオフへの挑戦権を逃した。

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 カザフスタンはシングルス2に世界ランク263位のガリーナ・ボスコボエワを起用してきた。46位のヤロスラーワ・シュウェドワはダブルスに温存、しかし何よりボスコボエワの調子が上向きだった。自己最高42位を記録したことのある32歳のベテランが大坂に襲いかかった。

 「すごく緊張していた」と大坂なおみ(日清食品)が言う。ボスコボエワは“大坂封じ”とばかりにドロップショットを多用し、大坂のミスを引き出す。完全にリズムを崩した大坂はミスを重ね、コートの上で喘いでいた。ファーストサービスも入らず、第1セットはわずか30 分足らずの1-6で失った。

 攻めていくべきか。守っていくべきか。大坂は迷っていた。ただ、ひとつだけわかったことがあったという。「何よりも戦う気持ちを取り戻すこと」だった。1ポイントごとに拳を強く握りしめ、声を張り上げ、仲間を見る。そして必死にボールに食らいついていった。それはツアーでは決して見られない姿だった。

気迫十分に戦った大坂

 大坂の気迫に圧されたか、ボスコボエワのミスが早くなる。第2セットを6-3で奪い返した大坂は最終セットも4-1から4-3まで迫られるが、最後は「もっと集中力を上げて」6-3で勝利をものにした。

 ワールドグループⅡのプレーオフ進出まで、あと1勝と迫った日本。しかし、ここから日本にとって、長く苦しい戦いが待っていた。

 エース対決となった土居美咲(ミキハウス)とユリア・プティンセバの戦いは、序盤から土居のペースで進む。世界ランク42位の土居が、27位で先週のロシアでWTAツアー準優勝を飾って勢いに乗るプティンセバを力強いストロークで追い込んでいた。

 3-1、4-2とリードする土居だが、突き放せそうで突き放せない歯がゆい展開でもあった。するとピンチを逃れたプティンセバが逆襲に転じ、第1セットはタイブレークにもつれ込まれた末、プティンセバの手に渡ってしまった。

「突き放せなかったのが痛かった」と土居

 第2セットは2-3まで競り合ったが、第6ゲームを失って2-4とされると、もう流れを引き戻すことはできなかった。プティンセバが全身で勝利の喜びを表現すると、スタジアムの観客は大騒ぎとなり、これで1勝1敗のタイとなった。

プティンセバが歓喜の勝利

 勝敗の行方はダブルスにかかった。日本は青山修子(近藤乳業)/穂積絵莉(橋本総業ホールディングス)にすべてを託し、カザフスタンはシュウェドワ/ボスコボエワのペアで勝負をかけてきた。

 180㎝のシュウェドワと183㎝のボスコボエワは果敢にネットに出てくる。青山と穂積は沈めたり、ロブを上げたりと、多彩なテクニックで翻弄するが、第1セットは3-3から3ゲームを連取されて3-6で失った。

穂積(右)/青山の日本ダブルス

 あとがない第2セット、日本は4-1とリードを広げるが、この日の穂積と青山は勢いとリズムがなかった。「ここ一本というところをとりきれなかった」と穂積が悔やむ。青山も「勝負どころで無難にいってしまった」と唇をかんだ。

 4-4に追いつかれてからは一進一退の攻防となったが、最後はタイブレークの末にカザフスタンが勝利を手に入れた。スタジアムに勝利の歓声が上がり、会場のあちこちでカザフスタンの国旗が揺れる。日本の敗戦が決まった。

 逆転負けに終わり、今年もまたワールドグループⅡプレーオフへの挑戦権をつかむことができなかった。「選手たちは一生懸命にやってくれましたし、力を出しきって代表に相応しい戦いを見せてくれた」と土橋登志久監督が選手たちを労う。

 「今の日本の力は、まだここにあるということ。またアジアを抜け出すという宿題を残してしまった」と土橋監督。そして「選手たちを次のステージに連れていけなくて申し訳ない。ただ、全力でぶつかったし、やるべきことはやった」と前を向いた。

日本を倒したカザフスタンがセンターコートを一周

 4日間に渡る戦いが終わりを告げた。日本は徹底した準備と充実のメンバー&スタッフ陣で戦いに挑んだが、またしても勝てなかった。であれば土橋監督が言うように、今のこの位置こそ日本の実力ということになる。アジアを抜け出すことは簡単ではないが、挑戦を続けていくことしか方法はない。

(テニスマガジン/編集部◎牧野 正)