この「自転車ライフ」コラムにも数回登場している北海道のオホーツク地方。今回は北見市で、特別の走行許可を取り、初開催の場所となる雪上をファットバイクで走る「スノーライド」が企画された。今回は日本航空(JAL)の北海道アンバサダーらを迎え、女性…

この「自転車ライフ」コラムにも数回登場している北海道のオホーツク地方。今回は北見市で、特別の走行許可を取り、初開催の場所となる雪上をファットバイクで走る「スノーライド」が企画された。今回は日本航空(JAL)の北海道アンバサダーらを迎え、女性たちが走った様子をお伝えしたい。



雪や氷の上を走るスノーライド。今回は常南ビーチなどを走る



遠くに流氷が見える!美しい青と白の景観の中を走る

初めて走行することになったのは、北見市常呂町のところ常南ビーチと、国定公園であるワッカ原生花園。特別に走行許可が降り、イベントとして企画されたのだが、新型コロナウィルスの感染拡大を受け、一般参加者を迎えたイベントとしての開催は叶わなかった。
とはいえ、予定通りワッカ原生花園の散策ルートは除雪が施されることになり、せめて走行の記録だけは残したいということで、お招きしていたJALの北海道アンバサダーの谷口由紀さん、山内聖美さんと、元プロロードレーサーの横山杏菜さんに、予定されていたエリアを走っていただくことになったのだ。



ゲスト到着前に路面の確認をするノーザンアーク ヒーローズパークのヒロさん

今回のライド会場は、ところ常南ビーチ。夏季になると「日本一オープン期間が短い海水浴場」として知られ、オホーツクの海を満喫できる貴重な海水浴場だ。最北端として知られる海水浴場は他にあれど、実際に海水浴を楽しむ人々がいるビーチとしては、事実上、最北端と言えるらしく、夏は家族連れで賑わう。冬季はこの景観が一変。氷点下20度以下となる厳寒の冬には、流氷が接岸することもあり、他にはない絶景を楽しめるのだ。海岸に降り、散策等はもちろん認められているのだが、ファットバイクで走行を試みるのは、今回が初めてだ。
ワッカ原生花園は、300種類以上の草花が咲く海浜植物の一大群生地であり、サロマ湖と、オホーツク海を分ける砂州は北海道遺産に認定されている。



国定公園であり、北海道遺産にも認定されたワッカ原生花園

園内の散策路は、自転車走行が認められているが、厳寒の土地とあり、開園は4月下旬から10月上旬まで。今回は閉園時期ではあるが、この散策路とオホーツク海に面する海岸を走行できる許可を得たのだった。
谷口さん、山内さんは、スノーボードのウェアやアウトドアジャケットといういでたちで常南ビーチに現れた。乗るのは極太タイヤのファットバイク。大ぶりな車体だが、またがってしまえば、抜群の安定力。少々の路面の荒れはタイヤが飲み込むように吸収し、走破することができる頼もしいオフロードバイクだ。
この予想不可能な経験を前に、緊張しているかと思いきや「楽しみ!」と笑顔の二人。以前、e-バイクで阿寒湖を走り楽しんだ経験があり、怖さは全くなく、この日が来るのをとても楽しみにしていたそうだ。



JALの北海道アンバサダーの谷口由紀さん、山内清美さんが到着



路面状況は、その場によって異なる。走りやすいエリアを探してライドを楽しむ

今年の冬はイレギュラーで、異常に気温が下がったかと思えば、奇妙なポカポカ陽気もやってくる。氷や雪が溶けたのか、海岸の砂が流出している部分もあった。さらに波しぶきが氷になったのか、氷の玉が散らばっているエリアもあり、海岸の中に均一な条件が広がる場所はないと言えるほど。
地域のサイクリング協会のスタッフや、北見市内でMTBやスノーライドが楽しめるコースがある「ヒーローズパーク」のヒロさんらにサポートをしてもらいながら、まずは砂が露出した走りやすいスポットで乗車練習をすることになった。



ヒロさんなどが全員にバイクの扱い方、乗り方のコツをアドバイス。サドルは低めに設定



最初は砂が露出して、走りやすい場所を選び、ファットバイクをマスター

二人は、すぐにファットバイクをマスター。果敢にトライして、乗りこなし始めた。タイヤが太いため、たいていの凹凸はクリアできるのだが、さらさらの雪が深いところは埋まってしまい、雪に噛まないため、前に進めず倒れてしまう。見た目では雪の深さが分からず、行けると思っても進めなかったり、ダメだと思っても意外と乗り切れたりと、予測ができない。だが、そこがまた面白い!



ファットバイクの感覚を確認しながら練習する谷口さん



積極的に雪上にもバイクを向け、すぐに乗りこなし始めた山内さん

次第にエリアを広げ、海際のエリアに挑戦。岩が点在するのだが、岩にはつららが下がっていたり、ごろごろと氷のかけらが転がっていたりと、厳寒の冬の自然そのもののビーチ自体が非常に興味深い。簡単に乗れそうに見えても、思うようにはハンドリングできず、想定と違う場所に向かってしまったり、すべったり、ぶつかったり。皆、失敗するたびにひたすら笑う。最近、日常でこんなに笑ったことがあったっけ?



市役所のメンバーなども試走。ハマってしまうかも!?



海のキワで岩々の間を縫い走る。岩陰につららがあったりと環境そのものが魅力的で面白い

路面を見極めながら、走れるところを探し、乗車を楽しむ。この日は軽い練習のみの予定だったが、午後から総合リゾート、ノーザンアークリゾート内にある「ヒーローズパーク」の常設コースを走りに行ってみることになった。海岸はあまりに自然のままで、テクニックがある人たちでも、継続して乗れる区間は短い。海岸は、自然の景観や環境を楽しむフィールドとして、走行を楽しむために作られたコースも走行してみようということになったのだ。
ノーザンアークリゾートのスキー場は、スキーやスノーボードを楽しむ客で賑わっていたが、我々はその横をファットバイクで移動し、コースに向かう。皆、不思議に思っているにちがいない。
このコースは、グリーンシーズンにゴルフ場のカートコースとして使用されているルートをヒロさんが選び、設計、除雪し、作り上げたもの。2020年シーズンは、3kmの周回コースと、1km程度の下りコースが作られた。関係者たちも体験した方が良いということになり、用意できるレンタルファットバイクの数だけ、メンバーが参戦することになった。



コースの景観は多様!日の光に照らされ、雪の上に木の影のボーダーを描く林間を抜ける



上れそうで上りきれない!少々踏ん張りが必要な雪上のアップダウンはまさに初の挑戦だ

スタートはゴルフ場のクラブハウス前(ゴルフ場は11月中旬にクローズ)。ルートは並木の横を抜け、真っ白な平原を眺めたり、時には林間を進んだり、景観のバリエーションも豊かだ。ルートには意外とアップダウンが設定されており、上りはオンロード走行とは異なる。しっかりと踏ん張る必要があり、それなりに頑張りを求められる。この上り区間には、苦戦を強いられたようだ。
先行者の轍(わだち)を見つけながら進むと走りやすいのだが、そう上手くいかないのがスノーライド。あちこちから「思わず、あげてしまった」叫び声が聞こえてくる。景観の開放感もあり、まるで子供の頃に戻ったように、無心で楽しむ大人たち。



一度降りてしまうと、踏み込みが必要な再スタートは場所を選ぶ必要がある。苦戦するシーンも

小屋まで上れたら、あとはダウンヒル! ブレーキをかけすぎると、タイヤがロックすることがあるため、かけすぎないようにとアドバイスを受ける。とはいえ、怖くてついついブレーキをかけてしまう。すると、左右にガタガタガタと車体が揺れてバランスを崩し、冷や汗。上手くリズムを作って、コーナーなどは体重を移動しつつ、気持ちよく下れれば、安定して走れるようだ。



ダウンヒルを楽しむ一同。山の天気は変わりやすく、3kmを走る中でもコロコロと天候が移り変わっていく



下り基調のエリアも気持ちよく走る



3kmサーキット終了!転んだりもしたけど楽しんだ!

3kmサーキットは走ってしまえばあっという間。道に合流するところまで上って終了。楽しかった!
ここから下りルートも走ることになったのだが、ここを抜けた方が、早くメインの建物まで戻れるらしい。ゆるいアップダウンを繰り返しながら下っていくルートだ。勢いを活かしつつ、シュプールを描くように楽しみながらゴール。スピードを怖いと思い、身体が固まったり、変にブレーキをかけたりしてしまうとバランスを崩す。自分を信じて楽しもうとすれば、気持ちよく楽しめるということか。



スピードが出る下りも、思い切ってクリア!

参加メンバーの多くが、日常的に自転車に乗ってはいなかったのだが、それでも全員が笑顔で走り終えることができた。このファットバイクという乗り物の安定感はピカイチであるし、スノーコースは難しそうに見え、実際は楽しみやすい種類の挑戦であると言えるだろうか。
ここから横山杏菜さんが合流し、皆で常呂に確保した宿へ向かった。翌日は、特別に走行許可を取ったワッカ原生花園の散策路と海岸を走る予定。この日は万全の回復策を練り、翌日に備えることになったのだった。

(後編に続く)

※ガイドラインに従い、感染予防への最大限の配慮をして走行しております
画像:サイクルアドベンチャーオホーツク推進協議会提供 Naoki
YASUOKA(Cyclowired.jp)