F1第3戦ポルトガルGPの舞台「アルガルベ・サーキット」にやってきた角田裕毅は、晴れやかなスッキリとした表情をしていた。 前戦イモラ(第2戦エミリア・ロマーニャGP)では予選と決勝で大きなミスを犯し、12位ノーポイントという結果に終わって…

 F1第3戦ポルトガルGPの舞台「アルガルベ・サーキット」にやってきた角田裕毅は、晴れやかなスッキリとした表情をしていた。

 前戦イモラ(第2戦エミリア・ロマーニャGP)では予選と決勝で大きなミスを犯し、12位ノーポイントという結果に終わっていた。金曜フリー走行からトラブルが出て思うようにいかず、予選直前のFP3では苛立ちの無線が全世界に放送されてしまった。



角田裕毅にとって初めてのサーキットとなるポルトガルGP

 走り慣れたチームの地元イモラでは、目を見張るような好結果が現実的な目標として見えていた。それだけに、現実との差に焦りが募り、予選のクラッシュにつながってしまった。

「イモラは最も走り込んでいるサーキットということもあって、ここで大きくポイントを獲りたいという意気込みがあった。フリー走行からいい結果を残していって、予選では何ならトップ4くらいを狙いたいと思っていたんです。

 でも、それが逆に出てしまいました。過去の経験からも、そういうときこそ油断しがちなので、気をつけていこうとは思っていたんですけど......」

 フリー走行3回目でトラフィックに引っかかり、本格的なアタックが一度も完了できなかった。その苛立ちを予選まで引きずってしまった。

「後々調べてみれば、FP3のパフォーマンスは4番手くらいにいたんです。だけど、苛立ちから予選に向けてFP3の見直しをエンジニアとしっかりしていなくて、それを知らないまま予選に臨んでしまったこともあって無理をしすぎました」

 本当はプッシュする必要などない場面で、角田は無意識のうちにプッシュしすぎてしまった。F2時代に何度か犯してしまったミスだ。

「あのコーナーまでは結構うまく決まっていて、少し興奮しすぎたというか、1回も試したことがないくらいまで遅らせて奥でブレーキングしたんです。イチかバチかで行ってしまって、予想以上にリアが滑ってバリアまで行ってしまった。Q1でやるべきじゃなかったですし、本当にすごく反省しています」

 しかし、角田は冷静になってその過ちを見詰め直し、自分の弱さを認めた。だからこそ強くなれる。ポルトガルGPでは同じ過ちを犯すことはないだろう。

「自分の弱いところがすべて出たようなレース週末だったので、もちろん結果としてはとても悪かったし悔しかったです。けど、今後を考えてポジティブに考えれば、自分のミスを見詰め直してどこが悪いのかを考えるいい機会になった。今までの自分の甘さや姿勢を見つめ直す機会になったと思うので、いい週末になったと思います」

 ポルトガルGPの舞台アルガルベ・サーキットはヨーロッパの西端に位置し、下位カテゴリーでもほとんどレースイベントの開催がない場所だ。コロナ禍を受けて昨年初めてF1が開催され、今シーズンもカレンダーに加わった。それゆえに、角田もアルガルベを走るのはこれが初めてとなる。

 それだけに、一歩ずつドライビングやセットアップを積み上げていくことが必要だということは、角田自身もはっきりと認識している。

 しかしだからといって、攻めの姿勢を守りに変えるわけではない。イモラの週末に学んだことを生かし、攻めるべき瞬間を見極めて攻めるだけだ。

「僕にとっては新しいサーキットなので、今までのバーレーンやイモラとは置かれた状況がまったく違う。なので、フリー走行から一歩一歩、少しずつビルドアップしながら予選までにまとめ上げたいと思っています。

 イモラと同じような速さがあるのなら無理をする必要はないし、アグレッシブに行かなければならないところは行く。その姿勢は保ちつつ、攻めるべき状況を見極めて攻めていきたいと思っています」

 一方、レッドブル・ホンダはイモラで今季初勝利を収め、結果でもタイトル争いができることを証明してみせた。

 アルガルベは、これまでの2戦とはまた異なるサーキット特性であり、同じような勢力図になるとは限らない。昨年は再舗装されたばかりのアスファルトから油が染み出し、路面のグリップレベルが極めて低い状態での走行となった。

 あれから1年が経って、路面がどのように変化しているか。その読みの正誤によっては、事前のシミュレーションが大きく違ってくる。どのチームも金曜フリー走行は、その誤差修正に追われることになりそうだ。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターはこう語る。

「走ってみないとよくわからない部分が大きいですし、去年とはクルマも違いますから、ある程度の値(想定グリップレベル)でシミュレーションしたのを持ってきて、1年こなれた路面でどのくらい全開率が変わってくるかを見つつ、とくにエネルギーマネジメント関係はFP1の中で迅速に対応しながら最適化を進めていきます」

 いずれにしても、レッドブル・ホンダとメルセデスAMGの大接戦になることに変わりはなさそうだ。

 ほんのわずかな差が勝敗を分ける。だからこそマシンパッケージのすべてを引き出すことが何よりも重要になると、マックス・フェルスタッペンは語る。

「僕らとメルセデスAMGとの差は極めて小さい。だから毎週末、マシンのすべてを引き出すことだけを考えているし、ほんのわずかな差が大きな意味を持つ。それは今週末も同じだよ。

 過去2戦で速かったからといって、ここでも完璧に機能するわけじゃない。ここではまた、ここに合わせたいいセットアップが必要なんだ。だから、そのために僕らはベストを尽くす。

 僕はいつだって自信を持っているけど、それでレースで勝てるかどうかはまた別問題だし、(ライバルの速さは)自分の力でどうこうできるものではない。とにかく開幕2戦でとてもコンペティティブだったのと同じように、今週もそうであることを願うしかないんだ」

 果たして今週末、フェルスタッペンのその願いは通じるだろうか?