野田クリスタルが制作した「スーパー野田ゲーPARTY」が発売された「野田ゲー」というゲームのジャンルをご存知だろうか。これは、2020年の『R-1ぐらんぷり』と『M-1グランプリ』の二冠を制した野田クリスタル(マヂカルラブリー)が制作したゲ…
野田クリスタルが制作した
「スーパー野田ゲーPARTY」が発売された
「野田ゲー」というゲームのジャンルをご存知だろうか。これは、2020年の『R-1ぐらんぷり』と『M-1グランプリ』の二冠を制した野田クリスタル(マヂカルラブリー)が制作したゲームの総称だ。
野田は自身のプログラミングスキルを生かし、何年にも渡ってゲーム制作に心血を注いできた。彼が作り上げた数々のタイトルには自身のネタ内で使われるものもあれば、配信されて多くの人がプレーできるものもあり、野田ゲーの知名度はうなぎのぼりだ。
そして4月29日、野田ゲーの集大成ともいえるNintendo Switch向けソフト『スーパー野田ゲーPARTY』が発売された。本作は友人同士で遊ぶパーティゲーム的な内容でありながら、本人曰く「eスポーツ化(競技化)も視野に入れている」という。独自路線を突き進む野田に『スーパー野田ゲーPARTY』の制作の過程や、同作のeスポーツ的な要素などを聞いた。
――『スーパー野田ゲーPARTY』の制作に至るまでの経緯を教えてください。
面白法人カヤックさんに「一緒に何か大きなことをやろう」と相談したのがきっかけです。Nintendo Switchでゲームを出したら面白いんじゃないかと提案してみたら、先方が快諾しくれて、『ことばのパズル もじぴったん』(※)の生みの親で、現在はカヤックのメンバーでもある後藤裕之さんも協力してくれることになりました。
※バンダイナムコエンターテインメントより発売されている、もじブロックを組み合わせて言葉をつくるゲーム。
最初は少人数のオンライン打ち合わせから始まって、いざ制作の話になった時にお金が足りないことに気付きまして、じゃあクラウドファンディングしてみようということになりました。でも、クラウドファンディングって基本的に支援者のみなさんにリターンを用意しなければいけない。いろいろ議論した結果、「支援者さんをゲームの中に登場させる」などの案に落ち着きました。そうしたことを決めたうえで満を持してクラウドファンディングをスタートしました。
目標金額を400万円に設定していたんですが、内心では100万円も集まらないと思っていて、自腹を切ることを覚悟していたほどです。しかしあれよあれよという間に支援者が増えていき、最終的には目標金額を大きく上回って約1350万円もの支援をしていただくことになりました。いろんな人が応援してくれているんだと思って、めちゃくちゃうれしかったですね。
――多くの方からの支援を受けた『スーパー野田ゲーPARTY』ですが、制作上のこだわりを教えてください。
クラウドファンディングのリターンを「支援してくれた人の素材をゲーム内に登場させる」と設定したことが、『スーパー野田ゲーPARTY』の制作方針にかなり関わっています。ものすごい数の素材が集まって、それらをすべて使う必要がある。イラストに関しては約300種類、主人公は10人以上、他にもヒロインだったりアイドルだったり、ペットに関しては50匹以上ですからね。すべての素材を使い切れるゲームを考える必要がありました。
普通のゲームは制作者のアイデアから生まれることが多いと思うんですが、『スーパー野田ゲーPARTY』では素材が元になって生まれたゲームがいくつもあります。こういう特殊な構造になっているのが『スーパー野田ゲーPARTY』の特徴であり、「すべての素材を使う」というこだわりの現れでもあります。
ペットが50匹以上登場する
「新・干支レース」の画像
――ゲームの制作過程で印象に残っていることはありますか。
僕が『M-1グランプリ2020』で優勝してから忙しくなってきて、打ち合わせで集まりづらくなってしまったんですね。リモートの打ち合わせはできますが、テストプレーなどはどうしてもリアルで集まる必要があるわけです。でも僕のスケジュールにほとんど空きがない。だから、よしもと幕張イオンモール劇場での仕事と仕事の隙間時間に集まって、そこでテストプレーを行なったりもしました。そんなシチュエーションだったので、このテストプレーは印象に残っていますね。
――『スーパー野田ゲーPARTY』の中で、野田さん自身がお気に入りのゲームは何でしょうか。
「ボタン遠すぎじゃない!? 早押しクイズ」が好きです。早押しクイズの形式なんですが、ボタンが遠くにあったら面白いだろうな、っていう発想で作ったゲームです。作っている時には予想してなかったんですが、意外とみんなパニックになるんですよね。人間って2つのことを同時にはできないもので、迷路に集中しちゃうとクイズが解けなかったり、クイズに集中するとボタンまで辿り着けなかったり......。やってみると案外盛り上がると思います。
「ボタン遠すぎじゃない!? 早押しクイズ」。迷路&クイズの組み合わせが斬新
――野田さんはTV出演時やインタビューで「eスポーツ」によく触れていますが、『スーパー野田ゲーPARTY』をeスポーツ化したいと考えていますか。
eスポーツ化はしますね。本来はeスポーツモードも導入する予定だったんですが、時間が足りなくて......。eスポーツモードは『スーパー野田ゲーPARTY』の中から2人用ゲームをランダムに3つ選んで対戦するルールです。『スーパー野田ゲーPARTY』にはいろいろなゲームがありますから、人によって得意不得意のジャンルが出てきて、総合力が試されるモードになるはずでした。
残念ながら初期実装はできなかったんですが、今後のアップデートで追加する予定です。是非とも楽しみにしていただければと思っています。
――次はどのようなゲームを作ってみたいですか。
僕自身が好きというのもあって、次に作るとしたら格ゲータイトルを考えています。内容に関するアイデアも1つあります。最近の格ゲーはコマンドが簡易化されたり、細かい部分でストレスも減らされていたりと、初心者に配慮した作りになってきています。だから、あえてコマンドをメチャクチャ難しくしちゃおうかなと思っています。技を1つ出すのにもひと苦労で、出せたらほぼ勝ちみたいな、操作が難しすぎる格ゲーです。これもやってみれば意外と盛り上がりそうな気がしています。
――最後に野田さんからプレーヤーの皆さんに伝えたいことはありますか。
僕はゲームって「勝ちにいくと面白い」ものだと思っています。和気あいあいなのもいいんですけど、プレッシャーを感じながらプレーするのも面白い。それは『スーパー野田ゲーPARTY』でも同じで、内容はクソゲーだらけなんですけど、クソゲーも突き詰めていくとやりがいが見えてくるはずです。プレーヤーのみなさんには制作者側の想定を超えてきて欲しいというか、こっちが意図していないくらいやり込んでもらえるとうれしいですね。
【Profile】
野田クリスタル
1986年生まれ。マヂカルラブリーのボケ担当。「M-1グランプリ2020」優勝。コンビで漫才を披露する一方、自作ゲーム「野田ゲー」の制作でも話題となり、「R-1ぐらんぷり2020」で自作ゲームをプレーするネタで優勝している。
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