コロナ禍で大会が中止、チームに何も残せなかったと感じる中学生を応援 発生から1年以上が経過しても、今なお世界中で猛威を振るい続ける新型コロナウイルス感染症。感染拡大を防ぐため、2020年は人々の日常生活に様々な制約が設けられ、我慢を強いられ…

コロナ禍で大会が中止、チームに何も残せなかったと感じる中学生を応援

 発生から1年以上が経過しても、今なお世界中で猛威を振るい続ける新型コロナウイルス感染症。感染拡大を防ぐため、2020年は人々の日常生活に様々な制約が設けられ、我慢を強いられる場面も多かった。コロナ禍はスポーツ界にも大きな影響を与えた。それはプロの世界に限らない。アマチュアの世界はもちろん、小学生、中学生、高校生を対象とする大会も軒並み中止となってしまった。

 かつてない困難に直面する毎日の中でも、スポーツを通じて「夢」に向かって前進する力を生み出せないか。そんな想いを持って立ち上がった3人のアスリートがいる。サッカー日本代表の柴崎岳選手、バレーボール日本代表の石川祐希選手、ソフトボール日本代表の上野由岐子選手だ。

 3人はトップアスリートが夢を叶える企画「#DREAM with Team DESCENTE」に寄せられた数多くの「夢」から、それぞれ1つを厳選。夢の実現に向けて、惜しみないサポートをした。3人に共通する想いは「『夢』には未来を切り拓くチカラがある」ということ。第2回は、現在はイタリア・セリエAのミラノで活躍する石川による、中学生の夢のサポートだ。

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 イタリアで活躍する日本バレーボール界のエースが、中学生の想いに応えるため立ち上がった。体育館に集まったのは、福井県で活動するクラブチーム「マケンザ!!」の選手たち。キャプテンを務める中学3年生の清水大輔君は大きなモニターの横に立ち、集まった仲間たちにこう語りかけた。

「今年はコロナの影響で試合もなくなり、練習も思うようにできなくて、悔しい想いをしました、そんな時、2年間お世話になったマケンザにエンブレムを作り、マケンザに残したいと考え、スペシャルゲストの方にも力を借りて、一緒に作っていただきました。そのスペシャルゲストとはこちらの方です」

 この時、モニターに映し出されたのは、バレーボール日本代表のエースであり、イタリア・セリエAのミラノで活躍する石川祐希選手だ。

「大輔君からチームのみんなへ感謝の気持ちを伝えたいということで、大輔くんとデサントと僕でマケンザのマークとユニホームをデザインしました」

 中学2年の時に福井へ引っ越してきた清水くんは、イタリアでプレーしていた元バレーボール選手の父に影響を受け、同じバレーボールの道を歩んでいる。引っ越し先で加わったマケンザ!!のチーム方針は「チームが勝つことよりも、個人個人が好きなバレーをもっと好きになってもらう」こと。監督やコーチはもちろん、チームメートに温かく迎え入れられ、すぐに打ち解けると、翌年にはキャプテンを任されるまでになった。

 だが、コロナ禍により、思うような練習ができず、大会は軒並み中止となってしまった。

 お世話になったクラブチームに感謝とスピリットを残したい??。

 そんな清水くんの想いに心揺さぶられたのが石川だった。滞在するイタリアからリモートで清水くんとのミーティングに参加。オンラインではあるものの、憧れの選手を目の前にした清水くんはやや緊張の面持ち。「緊張してる、まだちょっと?」と石川から尋ねられると、「めっちゃ緊張してます」と初々しく答えた。

清水くんの想いを尊重「マケンザ!!らしいデザインにしたい」

 企画をサポートするスポーツ用品メーカー「DESCENTE(デサント)」から担当者が加わり、オンライン上で行われた“作戦会議”。「(チームが)自分たちで考えることを大事にしていると言っていたから、大輔くんの考えだったり、アイディアだったり(を尊重して)、マケンザ!!らしいデザインにしたいと思う」という石川は、トレードマークでもある自らのシルエットロゴを入れないことを提案。清水くんが希望する「青」を基調としたA、B、Cの3つのデザイン案を提示した。

石川「どう、これ? 大輔くん」

清水「Aがいいかなと思っています」

石川「やっぱり? ちょっと強そうだよね。意見が合って僕もうれしいです!」

 バレーボールのボールと恐竜の爪をミックスさせたデザインのエンブレム。石川が「これでチームメートは喜んでくれそうかな?」と聞くと、清水くんは「絶対喜んでくれると思います!」と顔を上気させながら即答する。うれしそうな笑顔に「よし、それなら最高だね。よしよし、いい感じいい感じ」と石川の顔にも満面の笑みが浮かぶ。

 こうして出来上がった新しいエンブレムとユニホームが、いよいよ清水くんからチームメートに手渡される時がやってきた。

「コンセプトは相手を圧倒し、マケンザ!!が勝利をつかみ取ることです。その力強さは福井県の大地に眠る恐竜の化石、その恐竜の爪は勝利をつかみ取るというイメージやスパイクのドライブ回転のようにバレーボールを力強くキャッチし、爪痕を残すという意味が込められています」

 真新しいユニホームを手渡す清水くん、大切なプレゼントを受け取るチームメート。みんなの顔に浮かぶのは、最高の笑顔ばかりだ。清水くんの大切な想いが込められたエンブレムのついたユニホームに袖を通すと、マケンザ!!のメンバーは紅白戦で火花を散らした。

 実は指を骨折している清水くんも、自ら志願して紅白戦に参加。背番号「5」のついた濃紺のユニホームを身にまとい、チームメートと忘れることのできない思い出の1ページを作り上げた。

「中学2年で福井に来て、マケンザ!!に初めて参加した時から、すぐに打ち解け、ともに過ごした仲間との出会いは、僕の宝物です。これからもずっとマケンザ!!OBとして誇りを持っていきたいと思います。そして、いつか石川祐希選手と一緒にコートに立てるようになりたいと思います」

 そう語る清水くんの感謝の気持ちとマケンザ!!のみんなが見せたとびきりの笑顔は、イタリアにいる石川にも届いたはず。コロナ禍の中で生まれた新たな縁が、この先もつながり続けることに期待したい。
(THE ANSWER編集部)