4月17日、フリーの坂本花織。演技を終え、喜びを全身で表わした 3月の世界選手権は6位にとどまった坂本花織。ショートプログラム(SP)、フリーともにほぼノーミスながら3回転ルッツのエッジエラーなどが響き得点を伸ばし切れなかった。 それから2…



4月17日、フリーの坂本花織。演技を終え、喜びを全身で表わした

 3月の世界選手権は6位にとどまった坂本花織。ショートプログラム(SP)、フリーともにほぼノーミスながら3回転ルッツのエッジエラーなどが響き得点を伸ばし切れなかった。

 それから2週間を置いて行なわれた世界フィギュアスケート国別対抗戦では、その悔しさを吹き飛ばし来季へ向けて意欲を高める結果を出した。

 坂本は大会前の1週間の練習で、以前は3回転フリップ+3回転トーループに集中していた意識を3回転ルッツのみに向けた。中野園子コーチがさまざまな角度から撮影した映像をチェックしながら、ジャッジやテクニカルコントローラーなどが見てエッジエラーにならない跳び方を研究した。

 そして、その成果は早速4月15日のSPで好結果につながった。3回転ルッツは認められて1.89点の加点がつき、3回転フリップ+3回転トーループも1.70点。スピンとステップはすべてレベル4の完璧な演技で77.78点の自己最高得点を獲得した。ロシア勢のアンナ・シェルバコワとエリザベータ・トゥクタミシェワはともに80点台に乗せたが、SP首位のシェルバコワと3.29点の僅差に抑える3位だった。

「スケート人生で初めてというくらいにルッツをずっと意識して跳んだので、認められたのはすごくうれしい。これからも続けていかなければいけないので、もっと加点がつくルッツが跳べるように練習をしていきたいです」

 そう話して喜んだ坂本の演技で改善されたいたのは、ルッツだけではなかった。公式練習の曲かけで目を引いたのは、序盤のスローな曲調の部分で以前より音に動きをしっかりと合わせた、柔らかく表情豊かなスケーティングだった。



SPの坂本。課題だった3回転ルッツをきれいに決めた

 本番でも同様の滑りを披露し、演技構成点で世界選手権に比べて1.60点高い35.84点。得点は2位のトゥクタミシェワより1.92点高い、シェルバコワに次ぐ全体2位の得点。つなぎの滑りやスピン、ステップにも気を遣い、表現の向上に取り組んだ今季の成果だ。

 17日のフリーでは、疲労感の強い中での演技になった。

「正直、現地入りしてから日を重ねるにつれて疲労がどんどん溜まってきて、今朝(17日)の公式練習もすごくきつかったんです」

 それでも2シーズン続けた『マトリックス』は今回が最後の演技。坂本は「最後だから笑顔で終わりたいと思って、きついとかじゃなくて本能のまま演じました」と笑顔を見せる。

 その演技は、3回転ルッツがノットクリアエッジ(明確でない踏み切り)と判定されてGOE加点1.06点にとどまり、3回転サルコウは4分の1の回転不足で0.09点の減点。しかし、それ以外はノーミスの滑りで、自信を持つ終盤のコレオシークエンスは勢いと迫力が増し、3回転ループも流れを崩さないきれいなジャンプにすると、最後のコンビネーションスピンは、スピードに乗った回転にして締めくくった。

 得点はSPに続き、2年前の国別対抗戦で出した得点を3.59点上回る150.29点の自己最高をマークし、2位。トゥクタミシェワを上回ったことを知ると、坂本は「えっ!」と驚いていた。合計もトゥクタミシェワを1.49点上回る自己最高の228.07点と、納得の結果となった。

「ルッツやサルコウだけでなく、ステップもレベル3に落とす細かいミスがあったけれど、150点は今シーズン頑張ってきたことが認められたと、本当に自信になりました。正直、『マトリックス』は1年目が本当にきつくて、早く変えたいと思っていました。でも、先生と相談して『完成形をやってから変えよう』ということになって。苦しかったけれど、新たな自分の魅力を見せられたし、大きく成長できたので続けてよかった」

 こう話した坂本は、トリプルアクセルや4回転ジャンプがない構成で高得点を出すことができ、「来シーズン、4回転を入れたら、どれだけよくなるのかなってすごくワクワクします」と笑顔を見せた。

「ここ1カ月は4回転の練習はしていなかったけど、世界選手権後の自主隔離期間は鍵山優真くんと練習する時間がたくさんあって、優真くんの練習を見ていたら自分も跳べそうな気がしたので、『やってみようかな』という前向きな気持ちになってやってみました。来シーズンはそういう環境も設けて、どんどん練習してプログラムに入れられる完成度にしたいと思っています」

 昨年の外出自粛期間中、坂本は前シーズンに崩れたジャンプを取り戻すために、体幹やそれまで使っていなかった筋肉のトレーニングを実施。フリーで体力がもつようになっただけではなく、ジャンプでほとんどミスをしなくなった。これからトレーニングの質や量をさらに上げていけば、トリプルアクセルや4回転も跳べるようになると考えている。

「来年は五輪シーズンなので、攻めて、攻めて、攻めまくりたいです!」

 そう語り表情を輝かせた坂本にとって、この大会の好結果は、そんな気持ちを強く後押しするものになった。