東京パラリンピック開幕まで、24日であと半年となった。パラカヌーの女子スプリント・カヤックシングル(運動機能障害KL1)で代表に内定している瀬立(せりゅう)モニカ(23)=東京・江東区協会=と、自転車トラック種目女子中距離で五輪代表内定の梶原悠未(23)=筑波大大学院=がオンラインで対談した。同い年のメダル候補は、それぞれの東京大会への思いを語り、“オリパラ金メダル”を誓った。(取材・構成=遠藤 洋之、宮下 京香)

 パラカヌーと自転車競技。過去に金メダル獲得がない両競技の選手が、運命的な出会いをしたのは高校3年の12月。2人が筑波大を受験した時のことだった。

 瀬立(以下瀬)「水泳の実技試験で悠未を見かけて。その直前にテレビ番組で特集をしていたのを見て知っていたんです。太ももが本当に太くて、もうカルチャーショックでした(笑い)」

 梶原(以下梶)「その時、すごく緊張していたんですけど、この場で友達を作りたいと思って。それでモニカに話しかけました。モニカはよく話すけど、私は対照的に人見知り。でも話してみると気は合うし、考え方も同じ。特に1年生の時はトレーニングルームでよく一緒にやっていたよね」

 瀬「トレーニングが終わると、よく語り合った。しゃべり出すと、止まらなくなるんだよね」

 梶「モニカが信念を持って夢を実現する姿が、格好いいなと憧れでした」

 瀬「悠未は自分で練習メニューを考えていたり、私も尊敬しかなかった」

 2人は幼少期から水泳など様々なスポーツに取り組んだ後、瀬立は競技歴2年で16年リオ・パラリンピックに出場して8位。梶原は昨年、世界女王に上り詰めた。

 瀬「3歳から12歳まで水泳をしていた時も五輪に出たいと思っていたし、やるなら頂点を目指すのが私のスタイル。パラカヌーを始めた日から『パラリンピックを目指して頑張ります』と周りにも話していました」

 梶「この話は初めて聞いたけど私も同じ。競泳をしていた時から五輪が目標。自転車競技に転向してからも、世界一を目指して全力で取り組んできました」

 瀬「リオの時も、東京のためにどう生かすかということを考えていました。地元のブラジル選手が表彰台でメダルをかけてもらった時の地響きのような歓声を生で聞いて、私も東京でこうなりたいと強く思った」

 梶「モニカが大きな舞台で戦う姿を見ていてすごく刺激をもらったし、4年後は私もこの舞台に立ちたいと思いましたね」

 昨年3月、新型コロナウイルス感染拡大で大会は1年延期。それでも2人の気持ちは決してぶれない。むしろ、金メダルへの思いは強くなった。

 梶「1年強くなる時間が増えたと気持ちを切り替えられた。国際大会がない中で、国内でロードレースに出たり、基礎から見直して持久力を高めました」

 瀬「私も年齢的に伸び盛りだと思うので、純粋に金メダルに近づくための時間が延びたと前向きに捉えられた。(カヌーの)シートの素材をよりパワーが必要な硬いものに替えたり、チャレンジしてきました」

 パラリンピックは8月24日の開幕まで半年。五輪は7月23日の開幕まで5か月を切った。新型コロナの収束が見通せない中、2人は強い思いを持ち続けている。

 梶「世界中の皆さんの健康が第一と思っています。大会があるかどうかは開幕前日に決まればいいと思っている。だから、五輪はあると仮定して頑張っていくだけです」

 瀬「アスリートにとっては人生最大のイベント。もちろん厳しい目があることは分かっているけど、準備をする必要がある。競技人生に一度あるかないかの“メンタルトレーニング”だと思ってやっています。大会があれば、悠未が先に五輪でいい流れを作ってくれている。だから、リオよりメダルを取りやすい環境にあるのかな。刺激を受けながらあと半年、一日、一日精進していきたいです」

 梶「私も五輪では夢や希望を届けられるよう最高のパフォーマンスをお見せしたい。モニカと2人で金メダルを取りたいです」

 ◆瀬立 モニカ(せりゅう・もにか)1997年11月17日、東京生まれ。23歳。中学の部活動でカヌーを始める。東京・宝仙学園高1年時の2013年、体育の授業で倒立前転を失敗し「体幹機能障害」を負い、車いす生活に。1年のリハビリ後、パラカヌーで復帰。16年、筑波大に進学し、同年のリオパラリンピック女子スプリント・カヤックシングルで8位。19年に同種目で東京大会代表に内定。「モニカ」は母・キヌ子さんのクリスチャンネームから名付けられた。

 ◆梶原 悠未(かじはら・ゆうみ)1997年4月10日、埼玉県生まれ。23歳。1歳から中学3年まで競泳選手。埼玉・筑波大坂戸高1年時に自転車競技に転向。2015年のアジア選手権ポイントレースなどで5冠。16年に筑波大進学。17年W杯オムニアムで日本勢初優勝を飾り、通算4勝。昨年の世界選手権同種目で日本女子初の金メダルを獲得し、東京五輪代表入り。筑波大大学院に在学中。

 ◆瀬立のパラ展望 16年リオ大会で8位入賞後、17年のW杯セルビア大会でKL1カテゴリーで初優勝するなど躍進。19年のパラ代表選考を兼ねた世界選手権決勝は58秒93で5位に入り、2大会連続代表に内定。同大会優勝のマリーナ・マズーラ(ウクライナ)が最大のライバル。気象状況や場所にもよるが、リオ大会で10秒以上あった世界トップとの差が世界選手権では3秒に縮まっており、日本勢初の表彰台へ着実に力をつけている。

 ◆パラカヌー 1艇に1人が乗り、8艇が一斉スタート。200メートルのスプリントでパドルでこぎ進み、タイムを競う。カヤック(KL)とヴァー(VL)の2種目あり、KLは左右にこぎながら前進し、VLは浮き具のついた艇で左右どちらかでこぐ。障害の程度によりL1~L3のクラスに分かれる。16年リオ大会でKLが初実施され、東京でVLも追加。9月2~4日に東京・海の森水上競技場で行われる。