男女各6名のトップクライマーがルートセッターとタッグを組んで課題をセットし、選手同士で登り合うボルダリングの新大会「THE SIX」が19日、主催するボルダリングジム「B-PUMP荻窪」(東京都)で無観客開催され、男女とも自身の課題を含む4課題を完登した楢崎智亜、森秋彩(あい)が栄えあるチャンピオンに輝いた。

 オリジナルルールを採用したこの大会では、1つの課題を1トライごとに5名が順番で登り、3巡目終了後、“ルートオーナー”と呼ばれるその課題を作成した選手が登る。選手は1トライ1分間、トライは3回までという制限下でTOPホールドに到達しなければならない。1トライ目の完登で100ポイント、2トライ目で50ポイント、3トライ目で30ポイントが与えられ、全6課題終了時点での最多ポイント獲得選手が賞金30万円を射止める。

男子出場選手とセッター陣(後列左から平嶋元、濱田健介、渡辺海人、頭師雅⼈、堀創、吉井玲雄)。

 大会前日、ペアとなったセッターと相談や試登を重ねながら、自らの得意な動きを取り入れた課題を作成した選手たち。楢崎智亜、藤井快、杉本怜、緒方良行、楢崎明智、天笠颯太が参加した男子から未知の戦いに挑んだ。

 男子第1課題は、藤井快の担当課題。楢崎(明)、楢崎(智)が序盤のカチ取りを一発で決めると、そのまま完登。緒方、杉本、天笠の3人は同パートに苦戦して登れずにいると、満を持して登場した藤井快は“オーナー”だからこそ知る正解ムーブで一撃した。

平嶋元との共同作業で作り上げた第1課題を登る藤井快。

 緒方が担当した第2課題も登り、首位に浮上した楢崎(明)だったが、自ら担当した第3課題でまさかの展開に。ゴール取りは高身長の強みを生かした設定にしていたが、“難しすぎる”とTOPホールドまでの距離を近めに調整。これに「助かった」と話した兄・智亜と藤井が一撃し、“登らなければいけない”というプレッシャーからかミスを重ねた明智はようやく3トライ目に完登。兄と藤井に首位の座を明け渡してしまう。

 楢崎(智)と藤井は、オーナーの杉本らしいパワフルな内容の第4課題を一撃するも、一転して天笠が担当した強傾斜のスローパー課題を登れず。優勝決定は楢崎(智)が担当した第6課題に持ち越された。最終課題は、これまた楢崎(智)らしいホールド上を“走る”課題。しかし、勢いをつけて進むものの壁から体が離れてしまう選手が続出し、藤井も難関の餌食になってしまう。3トライ以内に登れば優勝が決まる楢崎(智)は、冷静に1トライで攻略。4完登をすべて一撃して400ポイントまで数字を伸ばし、300ポイントで2位の藤井らを上回った。

他5人が作ったフィジカル系の課題と異なり、吉井玲雄と唯一テクニカルな課題を作った楢崎智亜がこの最終課題を完登して見事王者に輝いた。

 野口啓代、伊藤ふたば(指の怪我のため前日セットおよび自身の担当課題のみ出場)、中村真緒、森秋彩、小池はな、倉菜々子が参加した女子では、地ジャンスタートから勢いをつけて飛び降りる第1課題に中村がラストトライで登った以外は大苦戦。しかし最後に登る課題発案者の森がピタリと着地を決めると、得意なスラブ壁を着実に登って首位発進となった。

「飛び降りるのが好き」だという森秋彩が、その特徴をセッター濱田健介と協力しながら取り入れた第1課題を登り切った。

 終始足場が不安定な第2課題も、森は一撃。オーナーの小池以外は登れず、森がポイント差を広げていく。しかし、核心を3か所設定したという野口の強傾斜課題で保持に苦しんだ森が失敗。3巡しても完登者は現れなかったが、野口が華麗に正解ムーブを披露して100ポイントを獲得した。

華麗な正解ムーブを披露する野口啓代。

 中村の設定した第4課題では、1トライで競技を終えた森に続きたい野口が「奇跡的にポジションが取れた」と核心のゴール取りを成功させ、100ポイント差のまま森を追う展開に。第5課題では様々なムーブを駆使して登ったオーナーの伊藤以外は歯が立たず、順位に変動なく最終課題に突入する。

オーナーの意地を見せて自身の課題を完登し、笑顔を見せる中村真緒。

 倉による第6課題は、序盤のランジから静的ムーブに移行する内容。ここで先頭の森が失敗したのを尻目に、野口が1トライで沈める。ついに追いつかれた森だったが、2巡目にムーブを修正してTOPホールドに到達。唯一の4完登で合計350ポイントとし、女王の座を勝ち取った。

 男女12名とも、3トライまでかかった選手はいたが、全員が自らの担当課題を完登した。その際は多くがホッとした表情を見せるなど、普段のコンペとは違う独特な緊張感に包まれた「THE SIX」。大会の映像は、スポーツチャンネル「J SPORTS」で3月21日から順次無料放映され、選手が自身の課題の解説者となって競技を見守る模様や、選手やセッター陣の担当課題に対するコメントなども収録される予定だ。

CREDITS

取材・文

編集部 /

写真

田中伸弥