原口元気が日本代表合流前の3日、ブンデス2部第3節で1ゴール1アシストの活躍を見せた。そんな彼が試合前、オンラインでのインタビューに応じ、今シーズンへの意気込みを語ってくれていた。

 ハノーファーで10番を背負い、3度目のシーズンを迎えた原口元気には、チームに加入してからもっとも大きな期待がかかっている。

 昨シーズンの前半戦は、成績不振に喘いだ。それでも11月にスロムカ監督が解任され、コチャク監督が就任してからはチームの成績が一気に上向いた。一時は16位にまで沈んでいた順位も少しずつ上げていき、最後は6位で終えた。

 シーズン後半戦だけの成績を見れば、1部に昇格したシュツットガルトと勝ち点差なしの4位だった。

 今季から1部に昇格したビーレフェルトも、2シーズン前の12月に監督交代。そこから順位を上げて、そのシーズン後半戦の成績は2位だった。そして、昨シーズンは2部で独走して優勝。1部に上がった。その原動力が志の高いパスをつないでいくサッカーと、選手が吐くまで続けた猛練習だった。

 今季のハノーファーも、プレシーズン中の猛練習で選手が病院に運ばれたこともあるくらい厳しいメニューに取り組んできた。監督交代に伴う成績の上昇以外にも昨季の2部王者・ビーレフェルトとの共通点があり、ハノーファーには1部昇格の期待がかかっている。

 昨シーズンはそんなチームでもっとも多くの公式戦に出場を果たした原口に話を聞いた。

「悪くなかった。この自信は簡単には崩れない」

――リーグ開幕戦でも1アシストを記録しましたし、チームも勝利。順調なスタートを切ったのでは?

「これまで準備してきた色々なものが出たというか、悪くなかったですね。数字は1アシストだけですけど、多くのチャンスには絡めていたかなと思いますし」

――今季はプレシーズンから自信や手応えをにじませていますよね?

「開幕戦を迎えるときには毎年ナーバスになります。『本当に上手くいくかな?』という感覚があったりするものですけど、今シーズンはそれが『上手くいくだろうな』という感覚に変わりつつある。もちろん、シーズンに30試合以上あるので上手くいかない時期はあると思いますが、今は色々なものがフィットしている感覚もあり、自信もあるかなという感じですね」

――その自信はどこから?

「フィジカル面、戦術やポジション、監督からの信頼やチーム状況など、総合的に考えて。簡単には崩れないかなと思います」

チームを助けられないと、もどかしい

――昨年11月にコチャク監督が就任してからボランチのような役割を担うことも多かったですが、昨シーズン終盤からはトップ下がメインになりました。監督とはどんなやり取りを?

「6番のポジション(守備的MF)、8番(インサイドハーフやセンターMF)、サイドと、昨シーズンからプレシーズンにかけて色々やりました。ただ、(9月5日に行われた親善試合の)ブレーメン戦の後に監督には『やっぱり10番のポジション(トップ下のこと)がやりたい』と伝えて。監督も納得してくれて、今はこのポジションに専念して準備していきたいなという感じです」

――トップ下をやりたいと伝えたのはなぜでしょう?

「簡単にいえば、左右両サイドのサポートにいけるから。左サイドのMFで試合に出たら、右のサポートには行けないじゃないですか? 自分が左サイドでプレーして、右サイドで攻撃を作っているときにチームが困っても、DFラインの背後への動きくらいしかできない」

――選択肢が限られているのがイヤなのですか?

「自分たちの戦いが上手くいっていない時間帯に、チームを助けられないと、もどかしさを感じるので。あとは、今のチームには両サイドにクオリティーのある選手がいるので、自分が中央にいたほう良いなとも思いますし。やっぱり色々なサポートの形があって、自分のやれることの可能性も広がるので、今は真ん中のポジションの面白さを感じてはいます」

真ん中のポジションはサポートにやりがいが

――「サポートの形」という考え方は、昨シーズンからスペイン人の個人分析官との契約をしてサッカーを学んでいることとも関係しているのでしょうか?

「そうですね。例えば、分析官とのディスカッションのなかで、試合前には僕のプレーについてだけではなくて他のトップ下の選手の参考になるプレーを提示してくれたりもして。チームのサポートについても、DFラインの裏をとるとか、ゴール前に入っていくものだけではなくチームを前進させていくためのものもあります。色々と分析しながら取り組んで、その精度が上がってきていると思っています」

――「前進させていくためのサポート」というのは?

「主には自分がピッチの上のどこに顔を出すかという話で……。サポートにも色々な種類があります。ピッチの幅をとるため、逆サイドに展開するというサポートもある。困っている選手を助けるための緊急のサポートもある。テンポよくパスをつなぐための中間のサポート……。サポートにも、4~5種類あるんですけど、『今は、このサポートをすべきだ』と使い分けながら、やれているので」

――チームを助けたいという想いと、個人的に取り組んでいることを出せるやりがいと、両方をトップ下のポジションでは満たせるわけですね?

「さきほど話した前進するためのサポートについても、去年1年間かけて何度も取り組んできたので。背後のサポート……要するに、裏への飛び出しも、10番のポジションで出るときには意識してやっているポイントです。真ん中のポジションだと左右両サイドにサポートにいけるので、やりがいがありますよね」

「状況認知」の能力は伸ばせている

――ちなみに、開幕戦の原口選手は味方のシュートにつながるパスを1試合で4本出していました。これは昨シーズンのどの試合で記録したものよりも多かったですが、周りを使うことを意識したからなのですか?

「いや、それは特別に意識していないです。ただ、ドリブルしているときにもどこにスペースがあるのかを見ながらやれていた。全てのプレーにおいて、余裕ができているので。視野の確保というか……いわゆる『状況認知』の能力は、地道にやりながら伸ばしてこれているポイントでもあるから」

――パスを意識したというより、周りの状況を認識できた結果が、シュートにつながるパスの数に現れたと?

「そうだと思います。そもそも、『自分で仕掛けられるときには、自分で行きたい』と思っているし。もちろん、点を取りたいから。チャンスに絡む数がすごく増えているというのは最近の試合でもわかると思うので。ポジショニング、状況認知、チームメイトとの関係、監督の指示、フィジカル……色々なものが、今はすごくマッチしているかなと」

「アシスト1つくらいで満足してもらっては困るぞ」

――ちなみにコチャク監督からの期待や信頼については?

「監督から特別に何かを言われているわけではないけど信頼は感じていますし、そうやって期待される立場にあると思っているので。でも、だからこそ責任はありますよ」

――開幕戦に勝った後、監督はキャプテンのカイザーと原口選手の2人の名前をわざわざ挙げて、もっと良いプレーを見せられるという趣旨の発言をしていましたが?

「実は、試合の前日に、『明日の試合で、何点とるつもりだ?』と監督から聞かれて。『少なくとも、1得点、1アシストはしたい』と答えたんですよね。『アシスト1つくらいで満足してもらっては困るぞ』と監督は言いたいのだと思います。目に見える結果を残す機会、つまり得点チャンスは今後もたくさんあると思うので。あとは、そこで自分のクオリティーを示すだけというか」

――自信がにじみでていますね?

「これだけチームの中心でやれているというのは、キャリアのなかでも多くないことだと思うので。(ヘルタ・)ベルリンにいた時は、そこまでリスクをおかせる立場ではなかった。左にカルーがいて彼がリスクをおかし、ボールロストはすごく多いけど結果を出していた。その分、逆サイドの僕はある程度はチームのバランスを見るという感じの仕事内容だったじゃないですか。それが、いまは自分がリスクをおかしても許されるという……。特別な立場を与えると言われているわけではないんだけど、監督とは信頼関係があるし。立場的にもそういう立場に来ていると思っているので」

室屋成は慣れない状況をポジティブに

――すでにレギュラーポジションをつかみつつある、新加入の室屋成選手については?

「サッカーにも、言葉にも、この国にも、まだ慣れていないけれども、彼はこの状況をポジティブにとらえてやっているので。もちろん、彼が上手くいくように僕もたくさんサポートをしているし。むしろ彼が上手くやってくれないと僕も困る。1部に昇格するためにね」

――加入前には室屋選手についての評価を原口選手にたずねたと監督らが話していましたが。

「監督に聞かれて、推薦したところはあるので。成のパフォーマンスが悪ければ俺のせいになるので、『それは困るよ』と彼には伝えましたけど(笑)」

エゴとは違う意欲を出せるように

――開幕戦についてもう1つだけ。アシストの直前のシーンは、原口選手とフランツ選手の間にボールがこぼれて、どちらが拾っても良いような状況でした。でも、原口選手は全力でボールを拾いに行き、ドリブルを仕掛け、アシストを記録しました。別のシーンでも、似たようなプレーがありましたが、それらのプレーの裏には何があったのでしょう?

「やっぱり、意欲のようなものを出していかないといけないと思っていて。『意欲』って、簡単な言葉ですけど、すごく大事で。それが結局、数字につながる……ハーランドの開幕戦(ブンデスリーガ1部開幕戦、ドルトムント対ボルシアMG)3点目のゴール、見ました?」

――試合終盤、ドルトムントが2-0でリードしている状況で、自陣のペナルティーエリアからおよそ100mの距離を走り、追加点を奪ったシーンですよね?

「あれはもう、意欲の塊でしょう。あれだけの距離をスプリントするのは『絶対に点を取るぞ!』という意欲からですよね。C・ロナウドも一番後ろから一番前に出ていって点を取るようなことがあるし、結果を残す選手にはそれがある。

 でも、ああいう意欲が自分にはまだまだ足りないなと思って。本当にチャンスだと判断したら、全部自分で行きたいと今は思っています。それはエゴイストになるということではなくて……言っている意味、わかります?」

――「チームを助ける」ために、点を取る意欲を出したいと?

「意欲があったら、やっぱり自分から出ていくんですよ。開幕戦のアシストの時も、ボールがこぼれて、もしかしたらフランツのほうがボールに近かったかもしれない。でも、自分が仕掛けたいと思ったから、そこからドリブルをしていったわけで。それがアシストにつながったし。その意欲こそ、今の僕が意識しているポイントでもあるし、それをやれるだけのクオリティーはつき始めていると思っています」

今季の目標は、最低でも……

――ということは、今季の目標は?

「最低でも10得点、10アシストすること。10番のポジションで出ているからこそ、毎試合、得点に絡む動きはしたいです」

――チームとしての目標は?

「1つでも多く勝って、昇格したいですね」

 開幕戦翌日、チームにはオフが与えられたが、原口はクラブハウスを訪れた。試合翌日にいつも取り組んでいるトレーニングをするためだ。オフであろうとも、サッカーのためにやることは欠かさない。

 クラブハウスには、ほどなくしてフィールドプレーヤーのなかで最年長となる33歳のフランツがやってきた。そこで2人は、チームに何が足りないのか、チームメイトを向上させるために自分たちには何が出来るのかを話し合ったという。

 昇格を目標とするチームを助けるために、地味な動きから、点を取る意欲、そして、チームメイトへの働きかけまで、やれることは何でも意欲的に取り組んでいきたい。そんな想いが、今の原口を突き動かしているのだ。

【この記事の写真】1部昇格を目指すハノーファー・原口元気と室屋成〈全3枚〉へ

(「欧州サッカーPRESS」ミムラユウスケ = 文)