プレシーズンマッチの流れを汲むかのように、ビジャレアルの開幕戦、久保建英はベンチスタートになった。2列目の攻撃的ポジションなら左サイドでも、右サイドでも、どこでも可能性がある久保だが、今のところはトップ下で起用されるケースが多い。

 しかし、ウエスカとの開幕戦、ビジャレアルのシステムは4-4-2だった。トップ下が存在しない。FWはパコ・アルカセルとジェラール・モレノが名を連ね、空席となったトップ下のスペースには、ジェラール・モレノが下りて縦パスの受け手となる縦関係の2トップが組まれた。この技術とキープ力に長けたスペイン代表FWは、ビジャレアルの攻撃のキーマンだ。

 圧倒的にボールを握って攻め込んだビジャレアルだが、ウエスカの組織的な守備にスペースを消された。背後を狙ったパスもオフサイドの網にかかり、なかなか攻め切れない。そんな展開が続くと、逆にウエスカのほうが先制ゴールを挙げることになった。42分、ウエスカはGKの配球から自陣でグラウンダーのパスをつなぎ、高い位置からボールを奪おうとするビジャレアルのプレスをかわして、右サイドのオープンスペースへ展開。最後はパブロ・マフェオが切り返し一発でDFをかわし、ゴール隅へ流し込んだ。

 追う展開となったビジャレアルは後半、さらにボール支配を強め、逆にウエスカは自陣に引く時間が長くなった。

 ビジャレアルの攻撃でもうひとり、分かりやすいキーマンと言えるのは、右サイドの突破型ドリブラー、サムエル・チュクウェゼだろう。若手で左利き、得意ポジションなど、久保との共通点が多く、ポジションを争うライバルのひとりとも目される。しかし、この開幕戦では相手の素早いチェックに苦しみ、良い状態で1対1を仕掛けるチャンスがあまり多くなかった。そのためか、後半はチュクウェゼが中央へ入り、入れ替わってジェラール・モレノが右サイドへ開き、相手の背後でフリーにボールを受けようとする試みが見られた。ここが打開のきっかけとなり、いくつかのチャンスを作った。

 そんなふうにスペースの使い方が変化していく中、ウエスカは割り切って引いているので、司令塔のパレホが自由にボールを持つことも多くなった。しかし、中でのコンビネーションは今ひとつ活性化しない。ポジションが重なって、お互いにパスコースを潰し合ったりすることも増えた。それでも68分、FK場面でのVAR判定により、ハンドでPKを得たビジャレアルはどうにか1-1に追いついたが、ウエスカの組織的な守備を崩すのは最後まで苦労していた印象だ。


 そして、そんな折に久保は、77分にパコ・アルカセルに代わって投入。チュクウェゼや左サイドハーフのモイ・ゴメスとともに、鋭いコンビネーションを見せる場面もあったが、全体的には1人でどうにかしようとする傾向が強く、空回りした。終了間際には久保が1人で無理な打開を試みたところから、ロングカウンターを食らい、チームをピンチに陥れた。1-1だったので、あの流れで失点していれば、久保はかなりの低評価が下されたはず。攻撃時のシンプルなコンビネーションの構築は、久保のみならず、ビジャレアルにとっても大きな課題になりそうだ。

 また、ビジャレアルは高い位置からの守備もハマっておらず、ウエスカの先制シーンのように外されてしまう場面が目立った。これも課題の一つだろう。

 プレシーズンマッチのレアル・ソシエダ戦を思い返すと、ビジャレアルは久保が絡むプレッシングからボールを奪い、ショートカウンターでフランシス・コクランがゴールを奪う場面があった。久保はそうした連動したプレスでも良いポジションを取れるので、今後、久保が安定してスタメン出場を掴むとしたら、守備の改善というところにも糸口はありそうだ。

文●清水英斗(サッカーライター)

【動画】ビジャレアルMF久保建英のラリーガ開幕戦プレー集