オカダ・カズチカはいったい何がやりたいんだ?

 オカダは、7月11日大阪城ホールでのニュージャパンカップ決勝戦でEVILに敗れてIWGP奪還が遠のいたのに、それ以降もどういうわけか余裕ある態度を見せ続けていた。EVILに負けた時は、バレットクラブの乱入、とりわけ高橋裕二郎の投げをまともに食らってしまったことが最大の敗因だったのに、そんなイレギュラーな攻撃を受けて負けたことにも、とくだん憤慨するような態度を見せもしなかった。

 そして何を思ったのか、8月29日に開催される神宮球場大会の内容を説明するオンライン会見(7月28日)に姿を見せたオカダは、「KOPW」なる新しいタイトルの新設を新日本プロレスの菅林直樹会長立会いの下に発表してのけたのである。

 その前段階として、8月26日の後楽園ホールでそれぞれのルールで4試合を行い、29日の神宮球場では4人が同時にリングに上がって戦う4WAY形式での優勝決定戦を行い初代王者を決める、と言い放ちもした。

 このタイトルは、ゆくゆくは「王座防衛戦」まで行うという継続的なものとして設定されているという。だが、オカダが提唱した新タイトル「KOPW」にはベルトがないのだ。トロフィーは作るらしいが……。

 この「KOPW」 というタイトル名だが、何の略なのかの説明はオカダからない。だから筆者なりに勝手に想像してみたのだが……さすがに「King Of Pro-Wrestling」の略ではないだろう。「Knock Out Pro-Wrestling」でもないはず。ズバリ「Kazuchika Okada Pro-Wrestling」なのだと私は断言する。つまりこのタイトルは、オカダ・カズチカの冠がついた「個人タイトル」なのではないか、ということだ。

まだ若い現役のオカダがなぜ。

「モハメド・アリ・トロフィー」という大きなトロフィーがボクシング界にはある。プロレスにも「ルー・テーズ杯」や「カール・ゴッチ杯」などというのはあったが、個人の名のついたトーナメントやリーグ戦に本人が参加して戦うことはなかった。ましてや、オカダは現役のレスラーであって、まだ若いし、レジェンドでもない。

 オカダは「ルールは試合ごとに決める。金網やラダーマッチがあってもいい」とまで言っていた。そんな無茶な説明をしながら、しかもオカダはずっと笑っていたのである。「(このタイトルは)新日本プロレスらしくない」と言ってみたり、様々なタイトルにまつわる「権利証」の存在に言及してみたり……その説明の間、終始ニヤニヤ笑っていたのだ。

まさかKOPW勝者にもIWGPの挑戦権が!?

 オカダが会見でふと言った「権利証」という曖昧な言葉が気になった。つまり、なんの権利証の話をしたかったのか? ということだ。新日本プロレスで普通に思いつく権利証は「IWGPヘビー級王座」への挑戦権以外、他にない。

 そもそもこの権利証は、G1クライマックスの優勝者に与えられてきたものだが、それと同等の価値をKOPWのタイトル保持者ももらっちゃおうとオカダは目論んでいるのではないだろうか。

 今年のG1は秋(9月19日から10月18日)に行われる。素直にG1優勝を狙えばそれで済むはずなのだが、オカダのずる賢い、言い方を変えると「保険的な思惑」がここにはあるような気がしてならない。このちょっとした「悪だくみ」が、オカダのニヤニヤ笑いの仮面の裏側にあるのではないか……。

「風船男」の次は「ニヤニヤ男」に。

 IWGPを持っていない時のオカダは、いつも突拍子もない行動に出る。

 2年前、2018年夏のG1クライマックスで髪の色を変え「風船男」になった時も意味不明のパフォーマンスを続けて、「すわ乱心か!」とファンを心配させた。当時も、「前の格好いいオカダ・カズチカに戻ろうとは思っていない」とも言い放っていた。あの時は、まだぎこちない笑顔だったが。

 今回は格好こそ奇抜ではないが、不自然な感じの「ニヤニヤ男」になっている。オンライン会見で話すときも、説明しながらタブレットに目をやるときも、何がそんなに愉快なのか、終始、ニヤニヤしている。

 オカダが「1vs.3でやってやる」と言い放った時には、ちょっと格好良くは映ったが、もともと「(KOPWは)シングルマッチで」と言っていたわけなので、その後に出してきた1vs.3という戦い方のスタイルは、どうにも理解し難い。

猪木が経験済みの1vs.3の無謀な戦い。

 オカダの個人タイトルだから……百歩譲って提唱者であるオカダにその運用の決定権は委ねるとして、新日本プロレスにおける「1vs.3」の試合と言えば、1982年11月にアントニオ猪木が“国際はぐれ軍団”、つまりラッシャー木村、アニマル浜口、寺西勇の3人と蔵前国技館で戦った時の試合が代表的だ。

 当時の猪木は「まとめて倒してやる」と、この史上初の“禁断の戦い”に挑んでみせたのである。

 もちろん、リング内で猪木と戦えるのは1人に限られた。そして、全員からフォールまたはギブアップを奪って初めて猪木が勝ちになる、という自分に非常に厳しいルールでもあった。周囲から無謀だとさんざん言われていた時の、猪木の姿を覚えている。周囲の人間は本気で「これだけはやってはいけない」と言っていたのである。それほど無謀な戦い方だった、ということだ。

 だが、猪木はこの1vs.3を決行した。

 レフェリーは山本小鉄、柴田勝久、栗栖正伸の3人を用意。

 試合では、寺西を逆十字、浜口を延髄斬りで倒してみせた猪木だったが、木村にはロープを足に引っかけられ宙づりにされてしまいリングアウト負けを喫してしまった。

 翌年2月、同所で再戦が行われた。猪木はまず木村をフォールして、寺西もコブラツイストに捕らえて破ったが、浜口には場外で反則を取られて敗北。結局このスタイルでの試合では一度も勝つことができなかった。

「猪木vs.国際はぐれ軍のルールとは違う」

 猪木の場合は、結果として1勝もできない無謀な戦い方として記録に残ったわけだが、オカダは、今のところ比較的自分に有利なルールを設定している。「猪木vs.国際はぐれ軍団のルールとは違う」とオカダは言っている。3人のうち1人からフォールを奪うだけで良し、ということらしい。

 この1vs.3の形式で発表済みのカードはオカダvs.高橋裕二郎だが、高橋側に付く邪道からでも外道からでもオカダがフォールを奪った時点で試合は終わる、というルールになっている。

 もちろん、その逆もあるから、その時は誰からフォールを奪われてもオカダの負けになる。ただ、「3人まとめてオカダを攻めてはいけない」と今の時点では決まっていないから……これだとオカダにまず勝ち目はないだろう。

「ランバージャック」は面白くならない。

 オカダvs.高橋というKOPWルールのもうひとつの注目ポイントとしては、高橋側が提案してきた「ランバージャック&レザーベルト・デスマッチ」というのがあるが……これは面白くならないだろう。「ランバージャック(場外に出た選手を無理やりリングに押し上げて完全決着を求める試合形式)」と名のついた試合で面白いものに出会ったことがないからだ。セコンドが2人ずつというのでは、リングの周囲を選手たちでグルリと囲むことで成立するランバージャックの形態にもならないだろうし。

 どちらのルールで試合を行うかは、新日本プロレスの公式Twitter上で8月23日の23時59分まで行なわれているファン投票で決められるが、果たして37年ぶりの1vs.3を見ることができるだろうか。

“ニヤニヤご乱心”のオカダがこの1vs.3でどんな戦いを見せてくれるのかは大いに興味がある。

果たしてオカダの思惑通り、観客が満足するか!?

 今回のKOPW には8選手がエントリーされており、まずは8月26日の後楽園ホールで4試合が行われることになっている。

 小島聡vs.エル・デスペラードは「必殺技指定マッチ」か「必殺技禁止マッチ」で。

 矢野通vs.BUSHIは「ピンフォール2カウントマッチ」か「場外リングアウト5カウントマッチ」。

 SHOvs.SANADAは「サブミッションマッチ」で決定済み。

 それにオカダvs.高橋の「1vs.3」か「ランバージャック&レザーベルト・デスマッチ」が加わる。

 オカダ・プランが、オカダがニヤニヤするようにファンにとっても面白いものになるのか、単なるオカダだけの楽しみになるのかは、後楽園ホールの試合が終わった時に評価されることになる。

(「プロレス写真記者の眼」原悦生 = 文)