プロ野球が開幕し、6月27日にはJリーグも再開するなど少しずつスポーツの明るい話題が増え始めてきました。ですが、それでもまだスポーツ界、特に小学生から大学生を取り巻くスポーツ環境は、変わらず厳しい状況が続いています。

 多くの大会が中止や延期を余儀なくされる中、私に何ができるのか。ツイッターやインスタグラムなどSNSを通じて投げかけたところ、こんな声が寄せられました。

「バレーボールをしている娘が、大会もなくなり、何のために続けているのかとバレーボールから心が離れかけています」

 心に突き刺さりました。せっかくバレーボールを選んで、楽しいと思って続けて来た子たちがもうバレーボールに魅力を感じなくなっている。彼女だけに限らず、きっと数えきれないほどたくさんの子どもたちが、同じような感情を抱いているのではないか。今、その子どもたちの心を引き留められなかったらバレーボール界の未来なんてない。そう思うと、何かしなくてはならないと使命感にかられました。

大会開催は考えた、でも……。

 実際に、バレーボールをしている子どもたちの親御さんから寄せられたメッセージの中でも多数を占めたのが「大会をしてほしい」という声です。インターハイなど全国大会やそこに至る都道府県予選の開催がかなわない分、代替案として「大山加奈杯」のような形で大会を開催することができるのではないかとも考えました。

 でも、本当に子どもたちはそれを望んでいるのか。ずっと目指してきた大会出場という目標や夢が潰え、今は無理矢理でも気持ちを切り替えて受験を頑張ろう、とか、他の目標に向けて進み出した選手は少なくないはずです。それなのに今更「バレーボールの大会をやります」と言われても、全国へとつながる公式戦ではないためモチベーションも高まらないかもしれないし、練習から離れていたら急に試合へ臨むことでケガのリスクも生まれる。会場使用や移動の問題、さまざまなリスクを考えれば考えるほど、大会開催に向けて動き出すのはまだ非常に難しい。

 あれこれ考えを巡らせていた矢先。とある高校3年生のバレーボール部に属する女子選手からメッセージが届きました。心に突き刺さっただけでなく、その言葉で思わず涙が出ました。

「私は大会がなくなって、正直ホッとしています」

勝たなければ監督に怒られる。

 なぜそんな風に思うのか。

 彼女は、大会になれば勝たなければ監督に怒られるから。でも自分に自信がないからいつも怯えながらプレーをしているし、仲間に迷惑をかけてはいけない、と不安しかない。最後までそんな思いをするぐらいなら、大会がなくなったことで怯えながらプレーする必要がなくなった。だから「ホッとしている」と言うのです。

 好きで始めたバレーボールを、大人のせいで楽しむどころか苦しむことしかできず、集大成である最後の大会も「怖い」と感じて臨まなければならない。胸が締め付けられるような苦しさを感じたのと同時に、このままバレーボールを嫌いにならず、取り組んできた時間を少しでもプラスにするために、私に何ができるだろうと真剣に考えました。

 そして、さまざまな人たちの意見も聞きながら思いついたのが、Zoomを使って全国各地のOGたちと語り合う「セイトーーク!!」と題したオンライントークの開催でした。

少しでも「楽しい時間」になれば。

 第1弾に出演してくれたのは後輩の冨永こよみ(埼玉上尾)、大竹里歩(デンソー)、黒後愛、石川真佑(共に東レ)、そして妹の大山未希です。私と同じように「何かしたいけれど、何をしたらいいかわからない」と思っていた現役選手に発信する機会をつくると同時に、小中高校生や大学生が日本代表経験を持つ選手たちが話す姿を見ることで、少しでも「楽しい」と思ってくれるような時間をつくりたいと考えました。

 見方によっては、OGたちが集まって話しているだけ、と捉える方もいるかもしれません。ですが、まさに今、日本の代表チームやトップリーグで活躍する選手たちは紛れもなく、小中高生にとっては憧れの存在です。親御さんたちからの「大会をやらせてあげてほしい」という声と同じぐらい、学生たちから「Vリーグの選手と試合がしたい」「Vリーグチームの練習を見てみたい」という声も多く寄せられています。憧れの選手たちが高校時代どんな風に過ごしてきたのか。それを伝えるだけでも元気になれるのではないか、という私の願いに賛同し、快く引き受けてくれた後輩たちのお陰で再生回数も多く、たくさんの方に見ていただくことができました。

それぞれの居場所を見つけ、輝く。

 そして私にはもう1つ、どうしても伝えたいことがありました。

 それが実現したのが第2弾です

 揃ったのは、現役時代もマネージャーや、キャプテンでも出場機会がなかった、どちらかと言えば光の差す場所ではなく、陰となる場所でチームを支えてくれたOGたちです。

 中には全国優勝を経験したメンバーもいますが、コートに立つどころかユニフォームを着ることができず、スタンドから応援したり、試合に出る私たちをさまざまな形でサポートしてくれた大事な仲間ですが、私と未希を除けば、出演者の中に日本代表やVリーグでプレーした選手、現役で活躍するバレーボール選手、チームスタッフとして活動する人は誰もいません。いわば、無名の人たちです。

 でも、彼女たちは今、それぞれの場所で、自分がやるべきこと、やりたいことを見つけて職に就き、とても輝いています。なぜなら、たとえ試合に出られなくても、華々しい場所で活躍することがなくても、支え合ったり、励まし合ったりしながら仲間と過ごしたかけがえのない日々が今も力になっているからです。

勝つことだけが幸せではない。

 必ずしも選手としての成功、試合に出て勝つことだけが人生の幸せではありません。

 まさにそれを体現している彼女たちの姿、言葉に、「自分も諦めないで頑張ろうと思います」「勇気をもらいました」など、第1弾を遥かに上回る多くの反響がありました。

 もしもその中に、「試合がなくなってホッとした」と思う選手もいて、「試合がなくなってホッとしたけれど、私がバレーボールを頑張って来た毎日はムダじゃなかった」と思ってくれるなら。オンラインでの一方通行に見える発信でも、それだけで私は価値あるものになったと思っています。

これまで以上に重要となる伝える力。

 アフターコロナと位置付けるにはまだ遠く、しばらくはウィズコロナの日々が続きます。これまでならば直接会って、見本を見せながら進められたバレー教室も、オンラインを利用することが増え、今後の状況次第ではもしかしたら学校やクラブの指導もオンラインを主流に、というケースも生じてくるかもしれません。

 画面越しに見えるものが限られる中、怒鳴りつけるだけの指導をしていたらどうなるか。ただでさえバレーボールから離れかけている心は、完全に離れてしまいます。

 学生最後の大切な思い出、これからを生きる力になるはずの最後の試合を「なくなってよかった」と思わせることなどないように。指導者も一方的にああしろ、こうしろと押し付けるのではなく、求める動きを言葉で伝える力がこれまで以上に求められます。

 今までの当たり前に甘えず、会えないからこそ、オンラインを活用できるからこそのコミュニケーション能力が必要なのは、子どもより大人たちなのではないでしょうか。

(構成/田中夕子)

(「大山加奈のVolleyball is Life 」大山加奈 = 文)