フランスは、ヨーロッパのサッカー大国の中で唯一シーズンを再開せず、リーグ打ち切りを決めた国である。4月28日にフランス政府が、観客動員5000人以上を見込まれるすべてのスポーツイベントの9月以前の開催禁止を発表。その結果、フランス女子リーグ(リーグアン)も6節を残し終了となり、リヨンの14連覇が決まった。

 パリ・サンジェルマンは今季もまたリヨンの牙城を崩すことができなかった。これでリーグは3年連続の2位。リヨンが14連覇する間の、8度目の2位である。チャンピオンズリーグでも、2度目の決勝進出を果たした2017年は、延長PK戦の末にリヨンに敗れている。フランスカップ決勝でこそ1度破ったものの(=2018年。しかし両者の決勝での対戦成績はリヨンの3勝1敗)、PSGにとってリヨンはいまだ超えられない大きな壁である。

『フランス・フットボール』誌4月7日号でフランク・シモン記者が書いているのは、そんなPSGの外出禁止期間中の様子である。シーズンの打ち切りが決まる前、リーグの再開をじっと待つ間、選手はどんな生活を送り、クラブはどんな活動をしていたのか。そしてどんな思いを抱いていたのか……。シモン記者がレポートする。

監修:田村修一

未来に、シーズン再開に備えて。

 活動停止を余儀なくされたPSG女子チームでは、12カ国の国籍が異なる選手たちが、それぞれのやり方で個別に活動を続けているのだった。

 今も、そしてこれからもずっと適応し続ける。

「もちろん今は誰もがそれぞれのやり方でこの状況を過ごしているが、われわれにはそれが仕事でもある」と監督のオリビエ・エシュアフニは語る。

「これまでに例を見ない状況である以上そうせざるを得ない。われわれの活動もすべてテレコミュニケーションを通しておこなっている」

 プロのクラブはどこも似たような状況であるが、外出禁止期間中の活動については速やかに決められた。それは未来に備えてのことであり、そしてこの不安な春の間にシーズンが再開する可能性に備えてのことでもあった。

パリに残るか、帰国するか。

 PSGの場合、すべては国際試合による中断明けの3月13日(金)に始まった。エシュアフニが説明する。

「クラブには18人の各国代表選手がいる。その中でチームへの復帰が最も遅れたのはシービリーブスカップ(アメリカ)にスペイン代表として参加したイレーネ・パレデスだった。彼女がパリ(正確にはパリ郊外のサンジェルマン・アン・レ=PSGの本拠地)に戻ったのが13日の朝7時だった」

 その前日、サッカー協会の決定によりフランスはあらゆる大会、すべての活動を停止した。この決定は、ただちにリーグ連盟に追認された。ブージバル(チームの練習場)が閉鎖され、エシュアフニはテクニカルスタッフやメディカルスタッフと話し合って、状況に対処するための新たな組織をすぐに作りあげた。

「その第一の目的は、練習が再開されるまで選手たちのコンディションをいい状態に保つことだ。だから23人の選手に、個別のプログラムを提案した」

 このプランを実行する前に、クラブがまずおこなったのが12カ国の異なる国籍を持つ選手たちへのアンケート調査だった。質問の内容は外出禁止期間中にフランスに留まるか、それとも帰国するか、である。クラブが勧めたのは彼女たちがその間もパリに残ることだった。禁止令が出されたときに帰国を試みて大変な思いをするよりも、パリにじっくり腰を落ち着けたほうがいいというのがその理由だった。

選手たちの居住環境はそれぞれで。

 帰国を選んだのはアメリカ代表のアラナ・クックとカナダ代表のジョルディン・ウイテマの2人だけだった。そして外出禁止が正式に実施された3月16日に、クラブは新たな活動組織を正式に発足させた。

「まずは選手たちがどういう状況にあるかを尋ねた。どこに住んでいて、どんな居住環境であるのか。トレーニングのためにどんな器具や用具を使えるのか、と」とエシュアフニが説明する。

「回答のための時間を48時間与えた後に、状況に応じたグループ分けをおこなった。飽きることなくモチベーションを維持できるように、2日おきに練習プログラムを全員に送った。ひとり暮らしの人もいれば、家族と一緒の人もいた。さらにはビデオミーティングも毎週定期的におこなって、不安なことやわからないことのないようにした」

理想的ではないが気持ちを保って。

 期間中もフランスに残ったキャプテンのイレーネ・パレデスは、トレーニングについて次のように証言する。

「一戸建てに住んでいるか共同住宅住まいかでトレーニング環境は全く異なる。適応は簡単ではなかった。私は自転車を持っていないうえに、サンジェルマン・アン・レの森が閉鎖されていたから、共同住宅の周囲をジョギングするしかなかった。また筋力トレーニングも重点的にしている。あとは犬と一緒に散歩するぐらいかしら……。みんな気持ちをしっかりと保って、ここまでは誰もがいい状態を維持している。もちろん理想的とはいえないけど、こうする以外にはないから……。

 それから選手たちとはコンタクトをとるようにしている。みんな高いモチベーションを保ったまま頻繁にメッセージを交換している。直接会って冗談を言いあうことはできないけど、ポジティブな状態を保ってはいるわ」

 エシュアフニとクラブにとってもうひとつの懸念事項が、精神面でのサポートであった。エシュアフニは言う。

「特に外国人選手たちとは(精神的に)身近に寄り添って、決して見放したりしないという態度を示した。定期的に電話をかけているし、情報を収集して家族や近しい人たちの健康を気遣うようにしている」

選手と冗談を言い合えるように。

 エシュアフニが例外的にうまくいったと語るのはナディア・ナディム(本コラム5月12日参照)のケースである。外出禁止令の出る直前に彼女は、制限がより緩やかなデンマークに帰国できたのだった。

「毎日のように森に行ってリフレッシュしているという。北ヨーロッパはここフランスよりもずっと過ごしやすいようだ」

 エシュアフニ自身は、禁止令が出される直前にツールーズ近郊の自宅に戻ることができた。パリを離れても、選手たちとの関係を維持していくうえでは何の問題もなかった。

「もちろん彼女たちと一緒にいられるわけではない。ただ、それでもテレビ電話などを通していろいろ話をして冗談を言いあえるのはこんな状況になったからで、それはそれで逆に良かった。彼女たちには様々なメッセージを送っている。『気持ちを強く持とう!』、『メンタルこそが最も重要なんだ!』、『家族を大事にして彼らの力になって!』というような」

ここまでいい流れに乗っていたのに。

 コミュニケーションツールとしてはワッツアップが活用された。選手たちのグループ、テクニカル及びメディカルスタッフのグループのふたつに、様々な情報や通達事項が伝えられた。エシュアフニは言う。

「選手の最大の関心事は『いつ活動が再開するか?』だ。あと数週間は我慢が必要であるのは分かっている。だから今はそのときのために備える。リーグはまだ6節残しているから、優勝の可能性は大いにある。リヨンとの決戦(首位リヨンと2位PSGの勝ち点差は3)を残しているし、ボルドーとのフランスカップ準決勝もある。3月25日にはアーセナルとのCL準々決勝第1戦も控えていた。昨シーズンからここまで、PSGはとてもいい流れに乗っていたんだ……」

 だが、活動が再開ができない今は、心身両面から選手たちを気遣う以外にない。

「(サッカー以外の)スポーツをする。あるいは犬と散歩する。いずれにせよ普段は時間がなくてなかなか出来なかったことができる時間を得たのだから、その時間を大いに活用すればいい」とエシュアフニは言う。

続く、我慢の日々。

「私に関して言えば、対戦相手の試合をこれまでになくたくさん見ている。これからの試合に向けて、じっくりと分析して十分な対策が立てられるからね。それから次の移籍市場の準備もしている。チームの弱点を明らかにして出来る限り効率的に補強ができるように、やれることは今のうちにすべてやりたいと思っている」

 今はまだ再開への兆しは何も見えてはいない。未来が見通せない今の状況を打破するためにも、エシュアフニはこの中断のダメージが最小限に収まることを願っている。だが、ことはそう簡単ではない。

「3月は実り多い月になっているはずだった。シーズン当初からの努力が実り、すべてがいい方向に進んでいた。しかし今日の状況を考慮すると、今はサッカーよりも重要なことがたくさん見えてくる。私たちにできるのは粛々と日々の生活を営み、政府の指示に従いながらその日を暮らすだけだ。そしてそんな日々に、なるべく早く適応することを求められている……」

 我慢の日々は、まだしばらく続く。

(「フランス・フットボール通信」フランク・シモン = 文)