レース史上最多のGI馬8頭が出走する第61回宝塚記念(6月28日、阪神芝内回り2200m、3歳以上GI)のスタートが近づいてきた。

 ファン投票1位のアーモンドアイは不在だが、新型コロナウイルスの影響で海外遠征が難しいこともあって、例年以上に豪華なメンバーが顔を揃えた。

 アーモンドアイは現役最強馬として古馬戦線の頂点に君臨している。そして、3歳勢では、デアリングタクトとコントレイルという牝牡それぞれの無敗のクラシック二冠馬が、さらに力を蓄えている。

 この宝塚記念を制し、それらの「歴史的強豪」と、秋に覇権争いをするのはどの馬か。

サートゥルナーリアはメンタル面が課題。

 1番人気になるのは、年明け初戦の前走、金鯱賞を完勝し、「復権」に向けて順調なスタートを切ったサートゥルナーリア(牡4歳、父ロードカナロア、栗東・角居勝彦厩舎)だと思われる。

 無敗のままホープフルステークスと皐月賞を制するも、圧倒的1番人気に支持されたダービーではスタート前にエキサイトしてしまい、4着に終わった。

 神戸新聞杯を楽勝して力の違いを見せつけたが、天皇賞・秋でもダービー同様テンションが高くなりすぎ6着。つづく有馬記念では、勝ちに行く競馬をしてリスグラシューの2着。並外れた能力の持ち主であることは間違いないのだが、案外脆く負けることもある。

 メンタル面に課題があるだけに、無観客競馬がプラスであることは間違いない。それを金鯱賞で証明し、予定していた香港遠征はパスしたものの、スムーズに照準を切り換えてきた。

「牝馬の時代」を象徴するラッキーライラック。

 2番人気になるのは、前走の大阪杯で牡馬勢をなぎ倒したラッキーライラック(牝5歳、父オルフェーヴル、栗東・松永幹夫厩舎)か。

 3連勝で阪神ジュベナイルフィリーズを制して2歳女王となるも、牝馬三冠ではアーモンドアイに主役を譲った。

 が、昨秋のエリザベス女王杯で久々の美酒に酔い、香港ヴァーズ2着を経て、またGIを勝ったあたりはリスグラシューとイメージが重なる。

 操縦性がよくなったことでレースに幅が出て、枠やコースやペースによらず力を出せるようになった。「牝馬の時代」を象徴する存在になりつつある。

メジロの夢と執念が宿る1頭。

 そのラッキーライラックを昨年の香港ヴァーズで3馬身半突き放し、GI初制覇を遂げたグローリーヴェイズ(牡5歳、父ディープインパクト、美浦・尾関知人厩舎)も、日本を代表する1頭になり得る馬だ。

 3代母は史上初の牝馬三冠馬メジロラモーヌ。ラモーヌの父モガミは、メジロ牧場の創設者・北野豊吉が、シンボリ牧場の和田共弘と共同で所有してフランス走らせたのち、種牡馬として輸入した馬だ。

 そのラモーヌにメジロライアンを配合して、グローリーヴェイズの2代母メジロルバートが生まれた。ライアンの2代母シェリルも、北野が輸入した馬だ。これにメジロアサマを付けて誕生したメジロティターンと、その産駒メジロマックイーンが天皇賞父仔3代制覇を達成したことはつとに知られている。

 このように、グローリーヴェイズの血には、往年の名門オーナーブリーダー・メジロ牧場の夢と執念が注ぎ込まれている。

ライアン、パーマー、マックイーン……。

 メジロ牧場はしかし、2000年代になると成績が落ち込み、’11年5月に解散した。残された土地と繁殖牝馬を引き継ぐ形でレイクヴィラファームが発足し、ノーザンファームのサポートを受けながらマーケットブリーダーとなった。そのレイクヴィラファームの生産馬として初めてGIを制したのが、このグローリーヴェイズなのだ。

 宝塚記念の勝ち馬には、メジロムサシ、メジロライアン、メジロパーマー、メジロマックイーンと「メジロ軍団」が名を連ねている。しかも、ライアン、パーマー、マックイーンは、軍団による3連覇であった。

 グローリーヴェイズのように、自らの活躍によって、血に眠る物語を見せてくれる駿馬には、個人的にどうしても肩入れしたくなってしまう。

上位馬には外国人騎手がずらり。

 今年の宝塚記念は、ここに記した「3強」に、キセキ、ブラスワンピース、クロノジェネシスらが挑む、という図式か。

◎グローリーヴェイズ
○サートゥルナーリア
▲ラッキーライラック

 上記3頭の鞍上は、ダミアン・レーン、クリストフ・ルメール、そしてミルコ・デムーロ。これも今の日本の競馬界の姿だ。

 この宝塚記念が最後の「無観客GI」となることを願いながら、ハイレベルな叩き合いを堪能したい。

(「沸騰! 日本サラブ列島」島田明宏 = 文)