気付いたら左手の拳を握っていた。ピンチを抑えた今永の心はしかし、9回へ向かっていた。8回2死一、二塁。代打・糸原を148キロの直球で二ゴロに抑えた。1―0で8回を投げきり「うれしいとか、達成感はなかった。どう、9回に行こうかと」と切り替えていた。結局、この回でお役ご免。8回4安打無失点。2試合目の先発で今季初勝利をつかんだ。

 己と厳しく向き合っている。2年連続となった開幕の舞台。19日の広島戦(横浜)は5回2失点ながら93球を費やし負け投手になった。ベンチでは相手エースの広島・大瀬良の姿を目に焼きつけた。「フォーム、立ち居振る舞い、自分との違いを探しながら見ていた。球数は僕との目に見える差。負けがついてよかったなと思います。教訓にしないと」と、凝視していた。

 この日は8回114球。力で押すばかりでなく直球とチェンジアップを絶妙に配球。「速い球は大胆に。遅い球は慎重に」と打たせて取りながらここぞで7三振だ。「この1週間は苦しかった。正直、ほかの投手がいい結果を残して僕は勝っていなかったので」と自らを奮い立たせた。

 自粛期間中、ベッドに入ると満員のハマスタで投げている自分の姿を想像した。「本当だったら今頃…」。しかし、現実を見つめ直し、今できることに終始。食事は白米から玄米に変えた。夏場での開幕となり家では水以外の飲料を禁止。筋肉系のトラブル回避のため「お茶やコーヒーにも利尿作用がある」と、徹底した。ヒーローインタビューでも「試合後、30分以内に糖質、炭水化物を取らないと。筋肉の衰えは始まってますからね!」と、豆知識で笑いを取った。

 チームは5連勝。6年連続負け越し中の苦手・阪神との今季初戦を制した。「こういう試合を勝ちきっていくことが信頼につながる」。ハマの真のエースへ駆け上がる年にする。(岸 慎也)