リーガ再開日が確定した5月末、おおいに心配されていたのは故障リスクの高さだった。なにしろ準備期間が短すぎる。

 個別という制限付きで練習が再開されたのが5月上旬。10人までのグループによる練習が許可されたのが5月18日。6月1日にチーム練習を始めたところで、試合までは10日あまりしかない。

 リーガの選手たちは3月中旬には外出を控えるようになった。それからおよそ7週間、サッカーの練習と呼べるものはしてこなかった。おかげで深部感覚が鈍っている。状況に見合った信号を脳が筋肉に即座に送るメカニズムが、おかしくなっている。

 だから試合中、その修正が間に合わない。

バルサの元責任者もリスクを指摘。

「5週間あればフィジカルコンディションを整えることはできる。が、チームで練習して試合に備える期間が2週間未満というのは短すぎる」

 セルタのメディカルチームの責任者であり、スペイン代表のドクターも務めるフアン・ホセ・ガルシア・コタは5月下旬にこう指摘している。

「ケガの予防は身体の使い方を平常化することから始まる。サッカー選手の場合、できる限り試合に近い状況を作ってチーム全体で練習したり、練習試合を実施したりする必要があるということだ。そうすることによって、本番での身体の動きに身体自体が慣れていく」

 準備不足の状況下で痛めやすいのは足の筋肉だが、関節や靱帯も危ないとバルセロナのメディカルチームの元責任者ジョルディ・アルデボルは言う。

 リスク因子は、同じく実戦的なチーム練習の少なさである。

「試合で必要な動きを身体が忘れている状態は、膝にとって危険です。シーズンの始めに十字靱帯を痛める選手が多いのはそのせいです」

イスコ、デヨング、ホアキンが。

 筋肉は緊張することで関節や靱帯や半月板を守っている。しかしその保護機能は筋肉が正しく反応しなければ働かない。

 例えば、急な方向転換やジャンプ後の片足での着地等に慣れていない筋肉は、試合のときに関節たちを丸裸にしてしまう瞬間が多くなってしまうということだ。

 実際、リーガ再開からケガ人が続出している。試合間の練習で負ったケースも含めると、第28節が始まった6月11日以降の故障者は20人近くになる。

 主なところでは、大腿部に肉離れを負ったバレネチェアやイジャラメンディ(R・ソシエダ)、フェリペ(A・マドリー)、ハムストリングを痛めたイスコ(R・マドリー)にコクラン(バレンシア)、ふくらはぎを負傷したデヨング(バルサ)にホアキン(ベティス)、古傷の膝蓋腱炎を悪化させたデトマス(エスパニョール)、足首を捻挫したカバコ(ヘタフェ)。

 ケガと言うほどではないけれど、練習や試合を休まざるを得なくなる筋肉・腱の拘縮を負った選手もA・ビルバオのイバイ・ゴメスやベニャを始め何人かいる。

医療スタッフが留意していても。

 どのチームも再開後の最初の節だけで10人を越える故障者を出したブンデスリーガに学び、国内のドクターたちが鳴らした警鐘に耳を貸してきた。

 テクニカルスタッフは選手の体調管理に普段以上に留意して、選手自身はケガの兆候を感じたら直ちにスタッフ側に伝えるようにしてきた。

 それでもこの有り様なのだから、故障はリーガに押しつけられたシーズン再開のコストとして受け入れるしかないのだろう。

 ときに、故障リスクを高めている因子は他にもある。5週間で11試合という異常な強行日程である。

週2ペースの試合に不慣れだと。

 優れた医療施設としてFIFAのお墨付きを得ているリポル・イ・デプラド医療センターは、過去20年のデータを使って、この11試合で発生する故障の数を予測した。

 そのレポートによると、長く続いた外出制限の影響(20%)、選手たちが抱えるストレス(5%)、過密日程による練習時間の減少(4.5%)もそれぞれ故障のリスクを高めており、週2試合ペースに慣れていないチームは平年の50%増にあたる17.12件(筋肉系6.67件、靱帯2.91件、その他7.54件)もの故障が発生するという。

 CLやELの常連チームの場合も、約39%増の17.46件(筋肉系6.81件、靱帯2.97件、その他7.68件)という数字が出ている。

 レポートは天気が及ぼす影響にも触れており、気温が29度、湿度が75%を越えると故障リスクはさらに高まるらしい。

 この先、ケガを減らしていくのはやはり難しいのだ。となるとチームパフォーマンスが突然揺らぎ出すことも十分考えられる。

 順位争いは今後、二転三転するかもしれない。

(「リーガ・エスパニョーラ最前線」横井伸幸 = 文)