新型コロナウイルスは、高校生の部活動にも影響を及ぼした。夏の大会が次々と中止になり、努力の成果を発揮する場は失われた。例年とまったく違う夏を過ごす高校生たちに、いまの思いを聞いた。

 「本気で全国優勝を狙っていたし、できるはずだった」

 全国大会で3連覇したこともある岩手高校将棋部。橋本力(りき)君(3年)は唇をかみしめた。中学3年と高校1年の時に全国大会の個人戦で優勝。今年は団体戦への強い思いがあった。

 強豪校として全国的に知られ、他県から入学してきた部員も多い。橋本君も千葉県出身で中高一貫の同校へ中学校から進学した。団体戦では数年前から優勝候補として名前が挙がっていたが、2年前は準優勝、昨年はベスト8止まりだった。そしてこの夏、文化部の全国大会「全国高校総合文化祭」の将棋部門は、新型コロナウイルスの影響で中止になった。

 団体戦は3人のメンバーが同時に戦い、2勝したチームが勝利となる。「それぞれ戦っているけれど、仲間の勝ちが流れを作る。チームが勝ったときの喜びも個人戦の何倍も大きい」と橋本君は話す。将棋は続けるつもりだが、仲間と一緒に戦える最後の機会がなくなったことが、なにより悔しかった。

 団体戦3人のメンバーに入る予定だった仁多見遊心(にたみゆうしん)君(3年)も中学時代、全国大会に出場した。そこで優勝した橋本君を追って、新潟県から岩手高に進学。寮生活をしながら3年目でレギュラーをつかんだところだった。「橋本と、一緒に全国大会で勝とうと話していた。正直気持ちの整理はつかない」

 それでも、3年生15人は受験勉強の合間に部活に来て後輩を指導している。公式戦がないまま引退することになった3年生に藤原隆史監督(48)が「君らの力を借りないと、後輩たちが強くならない」と呼びかけた。「部員同士が切磋琢磨(せっさたくま)して強くなってきた部活。彼らの悔しさを後輩が受け継いでいくはず」と話す。

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 盛岡商業高校のグラウンドに大きな声が響く。「タテに勝負しろっ」「こっちフリーだ」。公立校ながら2007年に全国優勝し、旋風を巻き起こしたサッカー部は、中止となったインターハイの代替となる県大会に向けて練習を続ける。

 中田洋介監督(38)は「インターハイは大学やプロのスカウトへのアピールの場になるはずだった。3年生の多くは将来へのプランが崩れた」と心配する。

 4月末に中止が決まってから数週間、3年生たちは練習に気持ちが入らなかった。感染対策として、全体練習ができない日々も続いた。それでも彼らには負けられない相手がいた。昨年夏と冬の県大会決勝で2度敗れた専大北上高校だ。

 村上絢太(けんた)主将(3年)は、ピッチに立って経験した2度の負けを鮮明に覚えている。いずれも相手にリードされて、雰囲気がどんどん下がってしまった。同じことを繰り返さないように、練習から声を出し、苦しいときこそチームを盛り上げられるメンタルと体力を作ってきたつもりだ。

 大会がなくなり、夏に引退するほかの部活の同級生も多い。「夏の県大会、冬の選手権がある自分たちは恵まれている。チャンスをもらったからには盛商の強さを見せたい」(中山直樹)