巨人が19日の阪神との開幕戦(東京ドーム)に勝利し、球団通算6000勝を達成した。

 スポーツ報知では、「巨人6000勝の軌跡」と題して、1000勝から100勝ごとの節目勝利を、当時の記事で振り返る。

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◆巨人12-5中日(1970年6月26日・後楽園)〔勝〕山内14試合3勝1敗〔敗〕渋谷8試合1勝1敗〔本〕高木守4号3ラン(高橋一・4回)、長嶋8号(水谷寿・6回)、王25号2ラン(水谷寿・8回)

 大変な“記録ラッシュ”だった。17安打で12得点はともに今年チーム最高。高田、王、柴田と“猛打賞”がいっぺんに3人出たのも、もちろん初めてのこと。その中には、王の月間最多ホーマーの新記録あり、長島の45日、実に105打席ぶりのホームランありで、お客さんは大喜びだった。

 試合後、賞品を運ぶ係員は汗だく。いつもは1台の手押し車で簡単に済むのに、この夜ばかりは積みきれなかった。

 ベンチ出口の通路で待ち構える多勢の報道陣を見るなり、牧野コーチはニヤッと笑った。「一体、新聞社の人たちは誰をヒーローにするの? 決めるのに困っちゃうだろう」

 試合前の慌てぶりがウソのように、ロッカーは沸き返っていた。というのも、星野仙と予想していた先発が渋谷と分かった時だ。渋谷がどんなピッチャーか誰一人知らない。中には「左投手ではないか」と思っていたのもいるらしい。そのため、試合開始直前になって、ベンチ内で2度目のミーティングをやった。普通はロッカーで1度しかやらないから、異例のことだった。

 「何しろ、ウチは初顔に弱いからね」と川上監督。「好球必打で一回りじっくり見ていこう」と指示するのがやっとだった。

 ロビーでは、6月に入って14本目をマークした王が質問攻めに遭っていた。「球は低めのフォーク。練習を真面目にやっているせいか、技術的にはいいと思わないけど、気合が入っているんですよ」

 ベーブ・ルースの持つ世界記録、月間17本まであと3本。「3試合しかないから、ちょっと無理じゃない? それより、一日も早く30本台にたどり着きたいね。5試合連続ホーマーした時から、オールスターまでの目標を30本と決めているんですよ」

 ホームランにはいささか“優性”気味の王に比べたら、長嶋は心の底からかみしめているふうだった。5月12日の阪神戦以来だから無理はない。

 「会心の当たり。本当にしばらくだねえ。まだ、少しボールを振っちゃうけど、フィーリングは非常に良くなりましたよ。ええ」自分で相づちを打っている。

 これまで不振だった高田、黒江、土井のチビッコ・トリオもうれしさでいっぱいだった。

 「昨日から言っていたでしょ。もう、大丈夫。これからは絶対に打ちますって…」と強がっていた高田と対照的だったのが土井。5試合ぶりのフル出場のせいか「ヘトヘトです」と医務室へ入り込んでしまった。3日ほど前から、左手首けんしょう炎の古傷が痛み出していたが「敵になめられたら…」と包帯を外して頑張った。

 明るいムードであふれるこの夜のベンチで、しょんぼりしていたのは高橋一ぐらい。「始めは良かったのに、途中から変化球がストライクにならないんですよ。あんなに点をもらっていたのに情けなくて…」

 機嫌のいい川上監督も、高橋一のことを聞かれた時だけは顔を曇らせていた。「このところ良くなってきたと思っていたんだが…。3点なら代えなかったが、悪かったな」(萩野)