球団史上初めて開幕カードで阪神に3連勝を飾った、原辰徳監督率いる読売ジャイアンツ。Number Webでは本来の開幕時期に合わせて、原監督に今季の方針を聞いたインタビューを公開していましたが、開幕が約3カ月遅れたため、あらためてここに配信します(後編「巨人・原辰徳監督インタビュー(下)岡本和真ら若手と新外国人への本音。」は記事最終ページ下にある「関連記事」からご覧になれます)。

 巨人・原辰徳監督の2シーズン目がスタートした。監督復帰1年目の昨シーズンは「2番・坂本勇人」という攻撃的オーダーとともに、大胆な采配、用兵でチームを活性化。見事に沈滞気味だったチームのムードを吹き飛ばして5年振りのペナント奪回を果たした。今季はフリーエージェントでの補強などもなく、現有戦力の底上げが中心で連覇に挑むことになったが、原監督の胸の内にあるV2への秘策とチームにとっては悲願の日本一奪回への思いを直撃した。

戦い方としては何もかもやった。

――勝者として臨む復帰2年目のシーズンとなります。まず原監督ご自身の心境の変化やチームに対するアプローチの変化をお聞かせください。

「去年はチームに形があったとしても、あえてその形を見ずに全く解体してゼロから組み立てるつもりでチーム作りに取り組んだシーズンでした。選手に対しても予断や偏見を一切捨てて、まっさらな気持ち、目線で接した。その中で戦い方としては何もかもやったという感じでしたね」

――坂本選手の2番だけでなく、桜井俊貴投手の先発抜擢など、選手起用も大胆でした。

「先発がリリーフにいったり、リリーフが先発をやったり。慣れないポジションでも、それが勝つためにいい、必要だというなら思い切って使っていきました。

 野手にしてもね……坂本の2番にしてもそう。それでペナントは勝つことができて、チームとしてのある程度の形というものもできた。

 それで秋季キャンプがあって、今シーズンも2月1日にキャンプをスタートして、これからはオープン戦に入っていく。

 去年のいま頃が手探りで、ある部分、観察ということだったとすれば、今年はこの段階で6割くらいの組み立て作業の中から、スタートできている。ということはその分は強くなっていると思いますよ(笑)」

怒った回数もコーチに対しての方が多い。

――キャンプで練習は元木大介ヘッドコーチらにほぼ任せて、監督はむしろメディアへの対応や選手が練習に集中できる環境作りに専心しているようにも見えました。

「土台ができたということでは、コーチ陣についても同じように言えますね。

 昨年は元木ヘッドをはじめとして宮本(和知)投手チーフコーチら、しばらく野球を離れている人たちを連れてきた。それでも彼らには情熱と野球に対する豊富な知識がある、と評価してのことでした。

 しかし、練習方法であるとか、そういうものについては、去年はほとんど僕が作って構築してきた。だから昨年は選手へのミーティングの回数よりもコーチとのミーティングの回数の方が多かったくらいですよ。怒った回数もコーチに対しての方が全然、多いでしょうね」

固定観念を捨てて、どんどんトライする。

――指導者の育成ですね。

「これは巨人という組織を強くしていくためには、必ずやらなければならないテーマだと思っていました。

 その中で元木をヘッドコーチにして、さらに新しく技術を伝えるコーチが必要だということで石井琢朗(野手総合コーチ)を入れた。率直に言って、すごく良かったと思っています。

 私自身、宮崎と沖縄のキャンプの練習メニューは、ほとんど口を出していない。もちろん思い切った変更というのは、僕抜きではできないこともある。でも、ほとんど今年はコーチに任せてここまで進めてきました。

 そうすることで、コーチの選手への言葉、伝え方も強くなりましたね。僕が言ったことを選手に伝えるのではなく、伝えることに彼らの意思が入っているから、自然と言葉にも強さが出ている。そういうこともあってコーチ陣も同じように6、7のところからスタートできていると思います」

――その中で約1カ月に亘るキャンプを終えて、これからはいよいよ本格的にオープン戦もスタートしていきます。今年のチームの方向性は、かなり見えてきているでしょうか?

「まず1つ、言えることは今年も色々とチャレンジをするということですね。固定観念を捨てて、いいと思うことはどんどんトライしていく。

 去年の僕らは、最初は色々と言われましたけど『いいバッターは(打順の)先に置こうぜ!』ということで、2番バッターに坂本を置いた。それはそれで今年も継続するでしょう。

 でもそれだけではなくて、今年もそういうことはやっていくつもりですし、ピッチャーの方も、もう1回、新しいものを入れてやろうと思っています」

去年の2番バッターは他のチームからは笑われた。

――投手起用の新しい発想ですか?

「1つ言えるのは、我々は成長するために、強くなるためには固定観念に囚われずに、大胆な発想を持って、それを実行していくということです。

 去年の2番バッターだって、他のチームからは笑われていたけど、今年はみんなやっている。だから今度はピッチャーでもやろうぜ、と。ミヤ(宮本投手チーフコーチ)も同調してくれて『面白いですね』と」

――具体的には?

「それはね、シーズンが始まったら分かりますよ(笑)。

 ただ、昔の考え方というのはカードの初戦はとりたい、カードが変わって次のチームとの対戦になっても、また初戦はとりたい、というのがある。

 でも初戦を負けたらどうするんだという考え方ですね。それならいいピッチャーをどんどん回した方が効率的なんじゃないかという発想ですね」

――いい打者に多くの打席を回すのと同じでいい投手にできるだけ多く、登板機会を与えるということですか?

「日本は大体1カード3試合でしょ。それで週のうちに2カードで3試合、3試合。1番目のピッチャーが最初のカードの初戦に投げて、2番目のピッチャーが2カード目の1戦目。3番目が1カード目の2戦目という形で回していくのが基本的なローテーションの組み方ですね。それを変えようと思っている」

オープナーもいいよ、と。

――例えば開幕カードのDeNA戦の1戦目にエースの菅野智之投手が投げて、2戦目には現時点での2番手となるエンジェル・サンチェス投手でいくケースもある、と……。

「僕は先発を5人で回してもいいとも思っている。まあ見ててよ!」

――オープナーもありですか?

「オープナーもいいよ、と。投手陣の運用というのは、やりようによっては色々なやり方があるだろうから、その状況の中であてがっていったらいいと思っている。

 ただ、そういう風に今まで当たり前と考えられてきたことを変えていこうというときに、僕は一番大事なのは、我々の考え方を選手にきちっと伝えられることだと思うんです。

 例えば中5日はあって、中6日もあるけど、どんなに連戦が続いても中4日で投げさせることはしない、とか。そういうことはきちっと伝えて本人に納得させることなんです。そのためにこれからきちっと準備は進めていく」

先発陣の駒不足が生む考え方。

――昨オフには山口俊投手がメジャー移籍し、先発ローテーションの一角に計算していたC.C.メルセデス投手も左肘の故障で出遅れている。先発陣の駒不足がそういう考えを生むきっかけになっている?

「それもあるかもしれないね(笑)」

――そういう意味ではサンチェスの存在というのが、投手陣ではカギになると思います。2月24日の広島とのオープン戦初登板では1回で5安打を浴びて5失点と結果が出ませんでしたが、どう見ていますか?

「ボール自体は悪くなかったと思いますよ。まだ色々とアジャストしていかなければならない問題はあるかもしれないけど、コントロールも悪くないし、僕はいいと思います。力はあると思います」

相手球団のスコアラーが気づいていること。

――サンチェスは昨年の韓国プロ野球でのK/BBが3.52で日本で成功したソフトバンクのリック・バンデンハーク投手(同4.00)や元ロッテのセス・グライシンガー投手(同3.52)と同程度の数字です。

 三振を取れる決め球があり制球力があるという投手ですが、やっぱり制球力の高さが魅力になりますか?

「そうですね。まずストライクを取る力というのは投手の基本だからね。これはサンチェスだけに限らないですが」

――「投手の原点はまずアウトロー。その制球を磨け」というのは亡くなった野村克也さんが繰り返して求めたことでした。

「今年のウチのピッチャー見ていて、相手球団のスコアラーが気づいていることがあると思うんです。

 それはどの投手も1球目、2球目にどんどんストライクをとってきているということ。そういう意識を持ってマウンドに立っているということですね。

 それができれば、まず自分たちが優位なカウントで勝負ができるし、球数が少なくなってイニングを稼ぐことにもつながる。去年のウチの投手陣っていうのはボール、ボールと2-0カウントになることが多くて、その辺には非常に不満の残るところがありました。

 でも、そういうことも担当コーチが選手たちとしっかり話をして、きちっと意識づけできている。それがいまのところはいいですね」

メジャーと日本のいい部分を融合。

――メジャーの投球スタイルに近づいている。

「そうですね」

――練習でも投手の調整で単にシート打撃に投げさせるのではなく、アウトカウントなども実戦的なライブBP(打撃練習)形式での登板などメジャーの調整方法を取り入れたりしている。

 やっぱりそういうメジャーの効率的な部分はどんどん取り入れていこうというのが巨人の方針と考えてもいいですか?

「そうですね。そうとっていただいていいと思いますね。

 日本の野球とメジャーリーグと決定的に違うのは連戦です。メジャーは9連戦とか10連戦とかが普通にあるけど、日本の場合は6連戦が基本。だから逆に効率的に投手を回そうとすると工夫が必要になってくる。ただ単純に5人で回せばいいってわけにはいかない。

 メジャーのいい部分と日本的な部分をうまく融合させて、いかに日本のスタイルで効率的な形を作れるか。それは打線の編成でも同じです。

 ただ、そのためにはやっぱり発想の転換っていうのは、これからもっともっと大事になってくると思います」

批判されることは僕にとっては誇り。

――強くなるために、チームとして成長していくためには固定観念を打破したい。

「そういうこと! それが去年はまず2番打者に坂本を置いたということ。それを今年は投手でやる。他の人がやってないから、やらないじゃなくて、他の人がやっていないからこそ『いいじゃないか。やれるときにやっておこう! 早めにやっておこう!!』ということだね」

――批判もあると思いますが……。

「それは怖くない。そういうことは怖くない。批判されることは、僕にとってはむしろ誇り! だから今年、巨人の野球がどう変わるのかをファンの人にも楽しみにして、開幕を待っていて欲しいですね」

 次回「巨人・原辰徳監督インタビュー(下)岡本和真ら若手と新外国人への本音」では原監督がキャンプでのMVPに挙げたイスラエル・モタ外野手に新戦力のヘラルド・パーラ外野手、またビッグ・ベイビーから「若大将」へと成長した岡本和真内野手への期待。

 そして昨年の日本シリーズで敗れたソフトバンク打倒への思いを聞く。

<後編「巨人・原辰徳監督インタビュー(下)岡本和真ら若手と新外国人への本音。」は下の「関連記事」からご覧になれます>

(「プロ野球亭日乗」鷲田康 = 文)