新型コロナウィルスは世界的におさまったわけではないし、国内でも終息したわけではない。

 ただ、ひとときの感染拡大は、地域によって異なるが、おさまりを見せつつあり、国内では一時とは明らかに違う局面にある。

 スポーツ界でも動きが出てきた。プロ野球は6月19日に開幕、Jリーグは6月27日にJ2・J3から再開する。

 ようやく、ここまで来た、そんな感がある。

 各五輪競技も同様だ。軒並み中止や延期となってきたが、延期された大会の新たなスケジュールが出たり、従来予定されていた大会が開催される見込みとなったりしている。

「匂いや感触が懐かしかった」

 例えば陸上。

 延期になっていた大会のうち、主だったところでは、日本選手権混成は9月26、27日に、日本選手権は10月1日から3日に開催されることになった(5000m、10000m、3000m障害については12月初旬開催を目指す)。

 陸上は、マラソン、競歩以外の五輪代表は決定しておらず、トラック種目の選手たちは徐々に本格的な練習を始めている。

 先月28日には味の素ナショナルトレーニングセンターの陸上施設の利用が再開。初日にはリオデジャネイロ五輪4×100mリレーで銀メダルを獲得した飯塚翔太らが練習を行った。

「匂いや感触が懐かしかった」と、久々のトラックを走れたことに喜ぶ姿があった。

 飯塚と一緒に銀メダルを獲得した山縣亮太は、YouTubeでのトークライブで大会に触れた。

「来年、(東京)オリンピックのメンバーに選ばれることもそうですけど、今年の日本選手権がある。しっかり自己ベストを出して、『山縣、頑張ってるな』と思ってもらえるようにしたいです」

土井杏南「いろいろなことに挑戦できる年」。

 山縣は気胸などにより、昨年5月以降、大会から遠ざかり、実戦の日を心待ちにしていた。目指すべき場所ができたことで、取り組みも加速していくだろう。

 ロンドン五輪に出場後、怪我などに苦しむも、昨年は上昇傾向にあった土井杏南も「200mにも出たいです」と日本選手権を心待ちにしている。

 100mを主戦場とするが、「いろいろなことに挑戦できる年」であるからこそ、実戦で200mに取り組みたいと考える。そして日本選手権はその舞台になる。

内村航平が顔認証型検温器を寄贈。

 体操も代表選考の対象となっていた4月の全日本選手権、5月のNHK杯などが開催できず、12月に全日本選手権を開く方向で進めている。実施概要は今後検討されていく。

 6月1日、リオ五輪金メダリストの内村航平が再開されたナショナルトレーニングセンターで、さっそくトレーニングに励んだ。

 内村は新型コロナウィルス感染拡大後、コメントを出していなかった。

 6月5日に長崎県と諫早市がそれぞれ内村から顔認証型検温器を寄贈されたことを発表した際、添えられた内村のコメントが発表された。

「いつもの日常を取り戻せた時に、美しくて、感動してもらえるような体操をみせることができるように、自分も『新しい生活様式』を頑張ります」

 トレーニングセンターでの練習がスタートし、大会の開催も見えてきた。怪我に苦しんできたが、その回復のための時間という点も含め、延期された全日本選手権そしてその後を見据える。
 
 日本協会と国際連盟との対立によって代表枠が宙に浮いた形となっているスポーツクライミングだが、8月9日から11日にかけて、到達高度を競うリードのジャパンカップを開催することが決定した。今年3月に開催される予定だったが延期されていたものだ。

中学、高校でも代替大会開催の動きが。

 2月22日のスピードのジャパンカップを最後に、これまで国内大会はすべて開催されなかった。実に5カ月半ぶりの実戦となる。

 柔道においても、延期されていた大会の年内の開催を模索している。

 シニアのトップクラスのための大会ばかりではない。全国高校総体中止を受けて、各地域の高校総体も中止となっていたが、代替大会の開催の準備が進められている。中学生のための大会でも同様の動きが広がる。

 のちに第一線で活躍するようになった選手の中には、中学、高校時代の大会の思い出や経験を糧にしているアスリートも少なくない。大会が開かれることは、のちのち貴重な財産になるだろう。

 いくつか見てきたように、トレーニングできる場が再び開かれ、そして大会の実施も、少しずつ現実化している。

 選手たちの姿が見られる機会が近づいているのは楽しみだ。

 なによりも、大会や練習の場を失った選手たちにとって大きい。彼らは目標となる試合が決まるまで辛い思いもしたはずだ。

 その中で前を向いて、やれる範囲で努力をしてきた彼らがどのようなパフォーマンスとともに姿を見せるか。

 そのときを、楽しみにしたい。

(「オリンピックへの道」松原孝臣 = 文)