2020年のプロ野球が19日、3カ月遅れで開幕した。阪神タイガースは東京ドームで巨人と対戦したが、無観客で行われたため、東京・大阪の虎党ファンは、阪神戦を中継する“猛虎居酒屋”に集結し、テレビ画面に熱い声援を送った。店では、新型コロナウイルス感染防止のため、さまざまな取り組みも。“新しい応援様式”の中で、待ちわびた球春到来を楽しんだ。

 兵庫県尼崎市の阪神タイガース応援居酒屋「寅吉」。一時は阪神がリードする試合展開に「阪神はヤジがない無観客試合のほうが強いんちゃうか」と軽口も飛び出していたが、まさかの暗転劇。沈黙の後、客のヤジがマスク越しに飛び始めた。

 阪神の得点シーンでは、店内のカウンターに座っていた客が総立ちになった。大きな拍手だけで、六甲おろしを歌ったり抱き合ったりのシーンは見られない。新しい生活様式での、熱い応援。店に詰めかけた虎党は、社会的距離をきちんと守っていた。

 同店を営む敏夫さん(71)は「生まれてから阪神ファン」と名乗る筋金入りの虎党。毎年、宜野座キャンプに足を運ぶほどだ。プロ野球開幕延期が続き、客足は落ち込んだが「無観客試合でも、野球があるだけでもありがたい」と話す。回が進むたびに、会社帰りのファンが店を埋めた。

 開幕戦で敗れはしたが、スタッフも客も今季の阪神優勝を信じる。糸原のレプリカユニを着て、店に出陣した尼崎市の介護士三好昭子さん(43)は「今年こそ優勝です!」と声を弾ませる。鳥谷の阪神時代のレプリカユニを大事そうに着込む同市の運送業福島陽子さん(43)も「毎年そう思ってる。勝ってもらわんとあかんねん」と語気を強めた。

 神戸市の運転手上田隆さん(56)は、宜野座キャンプも視察。「木浪とか近本に期待。優勝しかない」と確信する。試合が終わった瞬間、家路につく客が続出したが「久々に野球が見られてよかった」と、プロ野球がある喜びを実感していた。

 一方、東京・秋葉原にある居酒屋「虎民族おかげさん」には待ちに待った“伝統の一戦”を見守るために多くの“虎民族”が集った。コロナ禍を乗り越え、やっとの思いでたどり着いた今シーズン。ユニホームを着たファンが熱心に応援する日常が戻った。

 同店も東京都の自粛要請で2カ月間の休業を余儀なくされた。店主の露口喜一さんは「(開幕に対しては)思いがありすぎて…。自分の商売も大変だし、大好きな野球も見られなかった。やっと始まるのかと思って一安心」と胸をなで下ろした。都の休業要請もこの日から全面解除に。同店では店内の消毒や換気を徹底し、露口さんもユニホームで作った猛虎愛たっぷりの縦じまマスク姿で接客した。

 狭い店内では、テレビに映る選手たちの迫真プレーに来店客がくぎ付けに。三回表での西の先制本塁打では思わず“密状態”でフィーバーする店内だったが、巨人に逆転されると「あぁ…」とうなだれた。それでも山口優星くん(9)は「負けちゃったけど西が二刀流ですごかった。目指すは日本一!」と笑顔。会社員の谷昂洋さん(30)は「今日という日が待ち遠しくて早く仕事を終わらせてきた。負けでもシーズンが始まった幸せを感じてる」。泣いて笑って…虎党の1年がスタートした。