-Future Heroes 一覧はこちら-  8月29日から9月8日まで韓国で行われた第29回WBSC U-18ワールドカップ。そこで5大会ぶり3回目の優勝を果たしたのが、人口約2378万人の台湾だ。元来、野球熱が高いとはいえ、大会5連覇…

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 8月29日から9月8日まで韓国で行われた第29回WBSC U-18ワールドカップ。そこで5大会ぶり3回目の優勝を果たしたのが、人口約2378万人の台湾だ。元来、野球熱が高いとはいえ、大会5連覇を狙った野球大国・アメリカを破っての優勝は快挙と言っていい。投打ともに身体能力の高い選手を複数擁していたが、中でも有望株は陳柏毓(チェン・ボーユー)。大会通じて3試合14イニングを投げて自責点2被安打9本の内容で優勝に貢献した大型右腕に話を聞いた。

 最後の打者をライトフライに抑えると優勝が決まり、その瞬間に陳柏毓は両手を突き上げてピョンピョンと跳ねまわった。その姿からも体のバネを感じた。

 台湾の胴上げ投手となった陳柏毓は来年秋に高校を卒業する新3年生。身長188cmで顔が小さく手足が長い。そのスラッとした体をしならせて投じられるストレートの最速は151キロで、相手をねじ伏せることができる。またカーブやチェンジアップ、スライダーといった変化球で相手をかわすこともできる。そして制球力も高い。決勝のアメリカ戦では走者を背負った場面で登板。MLB予備軍の強打線に対して臆することなく初球からストライクを投じ、自慢のストレートで空振りを奪う場面も多かった。

 先発し6回4安打1四球1失点7奪三振で勝利投手となったスーパーラウンド・韓国戦の登板後にじっくりと話を聞くと、茶目っ気も交えながら明るく答えてくれた。

 投球内容については「ストライク先行で投げることができて良かったです」と笑顔。2ヶ月の合宿や強化試合を経て大会を迎えただけに「チームメイト同士の息もぴったりで、コンディションもうまく調整できたと言えるかもしれません」と好調の要因を明かした。この時はまだ日本との決勝戦の可能性もあり「佐々木朗希(大船渡)と投げ合いたいですか?」と尋ねると、「対決するよりも一緒に写真を撮りたいですね」と冗談を飛ばして、いたずらっぽく笑った。
 
 高校卒業後は「チャンスがあればアメリカに行って野球がしたい」と真剣な眼差しで語る。MLBのスカウトは「すでに1億円くらいの価値は彼に付いている。かなりの球団が獲得に動くでしょう」と評しているだけに、その現実性は増していくばかりだ。

 10月に台湾・台中で行われ、日本は侍ジャパン社会人代表が出場する第29回BFAアジア選手権の台湾代表の強化チームにも高校生ながら選出。国際舞台でのさらなる活躍と、世界最高峰の舞台で投げる姿が楽しみで仕方ない。

文・写真=高木遊
翻訳協力=駒田英