-Future Heroes 一覧はこちら-  無名大学の選手や地方リーグ勢の活躍が目立つ近年の大学野球。関西にも近畿学生連盟の2部リーグという普段は日の目を見ることが少ないリーグにプロ注目の選手がいる。その名は米田知弘。最速150㎞/hの…

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 無名大学の選手や地方リーグ勢の活躍が目立つ近年の大学野球。関西にも近畿学生連盟の2部リーグという普段は日の目を見ることが少ないリーグにプロ注目の選手がいる。その名は米田知弘。最速150㎞/hの速球を投げる制球力の高い投手で来月のドラフト候補にも挙がっている。

 和歌山・橋本高時代の最高成績は県大会2回戦。投打の中心選手として活躍していたが、肩や肘の故障が多く、目立つような成績を残すことはできなかった。「あまり大学を知らなかった」という米田は高校の先輩が進んでいた大阪大谷大に進学。入学当初は保健体育の教員免許を取るのが目標だった。

 しかし、大学に入ってすぐに目標が変わる。1年春から先発の一角として起用されると、すぐに結果を残して、関西オールスター5リーグ対抗戦のメンバーに選ばれた。その際に1部の強豪大学の監督と話す中で初めて社会人で野球をすることを意識し始めたという。「『上でやるのか?』と聞かれた時に『上って何なんだろう』と思ったんです。その時に色んな話を聞いて、社会人野球を目指そうと思いました」

 2年生で教職課程を諦め、卒業後は野球で就職すると決めた。だが、この時もまだ目標はあくまで社会人野球で、プロ野球を目指しているわけではなかった。それもそのはず。大阪大谷大は2008年創部と歴史の浅いチームでプロ野球選手も出ていない。普段はマスコミが来ることもない2部リーグでプロを意識する方が難しかったのだ。

 ところが、米田はひょんなことからプロ志望に気持ちを切り替える。それは今年の春季リーグの取材に来たスポーツ紙に取り上げられたことだった。自身がプロ注目投手と書かれたことで「自分の手に届くのかなと思って、プロを意識し始めました」とこの時にようやくプロ入りを考えるようになったのだ。

「まさかここまで野球をするとは思わなかった」と笑う米田は9月17日にプロ志望届を提出。大学初のNPB入りと1部昇格を目指してこの秋も懸命に投げている。米田が入学してから2部では3度のリーグ優勝を経験しているが、いずれも入れ替え戦で敗戦。この秋に懸ける思いは強く、「最後は1部に上げて恩返しできたらと思います」と意気込んでいる。チームと自身の目標を達成させるため、ラストシーズンに全力を尽くす。

文・写真=馬場遼