今や日本人選手の欧州における主戦場はドイツではなく、オランダもしくはベルギーだ。多くの若手選手が切磋琢磨しながら4大リーグなどへのステップアップを目指す、欧州チャレンジのスタート地点にもなっている。
 そのオランダ、ベルギーの両リーグは、新型コロナの影響を受けともに今季の打ち切りを決めた。オランダの場合、発表されたのは4月24日でちょうど東京五輪の1年延期が決まった1カ月後だった。リーグ戦8試合を残し、優勝や昇格降格はナシ。そんな、前代未聞の事態を選手たちはどう受け止めているのだろうか。
 マンチェスター・シティからのローンでオランダ・1部リーグのフローニンゲンでプレーし、五輪代表候補でも主力センターバックである板倉滉に、今季のこと、コロナのこと、五輪への思いを聞いた。

 現在は各クラブが練習を再開させているオランダだが、3月に政府が大規模イベント禁止を決定したことによりリーグ戦は中断され、クラブの活動は一旦休止していた。

 板倉は、この休止期間の1カ月程度日本に帰国し、リーグ戦打ち切りが発表されたのちの5月上旬にオランダに戻った。来季以降の動きは見えなくとも、チーム練習が再開されたからだ。

--日本に一時帰国して、その後オランダに戻ったとお聞きしました。

「オランダに戻って、試合はないのに練習していますね。来季まで間隔が空きすぎちゃうからチームに戻ってこいと言われました」

--3月8日のPSV戦を最後にリーグ戦が行われていないわけですが、3月中はどのようにされていたのですか?

「オランダで、コロナの状況がここからどうなっていくか様子を見てクラブの方針決定を待っている段階で、ほぼ家にいました。チーム練習はなくなって、メニュー出されて外に走りに行くくらいでしたね。

 だから、もうずっと中山雄太(PECズヴォレでプレー、五輪代表チームの主将でもある)に家に来てもらってました。彼はうちから車で1時間くらいのところに住んでいて、実は今日も今から来るんです(笑)」

サッカーができない焦りもさほどなし。

--家にいる間、どんなメニューを渡されたのですか? みんなでオンラインで筋トレとか?

「Zoomを見ながらみんなで筋トレということはうちはなかったんですけどね、GPSでどれくらい走ったかがわかる機械を持たされて、走った距離とか全部管理されてました」

--中断、のちに打ち切りが決まった時点で、どう受け止めました?

「最初の方は、コロナがここからどうなるんだろうという不安とか心配はありましたけど、まあでもこんなにまとまった時間を休めることもないしと思って。早くサッカーやりたいな、という気持ちもそこまでなくて。時間ができて暇になりすぎてしまって、楽しめているかと言われたら楽しめてはいなかったですけど、でも走りや筋トレに重点的に時間を割けるのでそれほどネガティブには捉えなかったんですよね。

 他の人と話していると、『まじサッカーできないのきついなー』とかも聞きますけど、僕は全然大丈夫です」

--それよりは、まずは体づくりだと。

「そうですね。オフでもこんなに走りこんだことないかなと思うくらいの距離は走ってますし、それこそこんなに長いオフ自体がこれまでなかったので、筋トレをメインにしたり。1人だと限られたことしかできないので、体と向き合いましたね。とはいえ、たまにモチベーションがない時もありましたけど」

--先も見えず、仕方ない部分はありますよね……。

「いっつもひとりで走るんですけど、走る前はうわーめんどくせーって思いながら玄関をでてました。もう、毎日走ってばかりでマラソン選手みたいな感じだなと思って。でもここで1回さぼったらだめだ、とか自分との戦いでした」

得意料理はサラダチキン乗せ。

--さて、フローニンゲンでの今季を振り返りたいと思うのですが、開幕からスタメンを獲得しましたが第17節から第23節、突然メンバーから外れるようになりました。ですがその後は、スタメンに復帰。この期間、どう乗り越えたのですか?

「もちろん、監督に話はしにいきました。昨季、加入したばかりで試合に出られなかったときとはまた違ったシチュエーションで、連続で出てるのにポンと外されて、自分では全く納得いってなかった。パフォーマンスが悪くて外されたわけじゃなかったので、それもあって監督に話にいきました。

 主張というよりは『なんで出さないの?』って。はっきりした答えはでてこない、『お前は悪くない』って言われても、『じゃあなんで使わないんだ』って思うだけなのでそれも伝えたし。でも、まあそんなこと言っても自分としてはやるだけで、その期間毎週Bチームのほうの試合には出してもらっていたので、そこでしっかりプレーして、もう1回戻るという気持ちでやってました。そこで落ちなかったのはよかったのかなと。ふてくされることもなかったし。

 もちろんムカついてはいましたけど、それもうまく自分のモチベーションに変えられたかな。その期間、全部トップでの試合に出ていたかったというのはありましたけど、まあでもスタメン取り返したのでそこはポジティブに捉えて良いのかなと」

--自分と向き合う時間になったのですね。

「1人ですし、孤独ですからね。家に帰っても1人だし、メシ食ってても1人だし。よくも悪くもいろいろ考える時間が多いですよね。日本いるときこんなにサッカーのことばかり考えてなかったし、まあそれはこっちにきてよかったかなと思います。時間はありますよね、こっちにいると」

--ネットフリックスを見たり?

「ほんと、ネットフリックスですよ(笑)。海外ドラマをよく見ますし、映画もいろいろ見ました。で、あとは、『雄太いつくるのー』って。言ったらすぐ来てくれるので(笑)」

--笑。中山選手のおうちには行かないのですね?

「ないですね。雄太がいつも来てくれます。雄太とは一緒にご飯作ったりしてますよ。基本自炊です。もう、自炊するなんてほんと日本いるときじゃ考えられないです」

--得意料理、聞いてもいいですか?

「サラダチキン乗せ、かな。ほぼ毎日食べてます。日本にいるときは美味しいものを食べたい気持ちがあったけど、こっちいるときは食えればいいと思ってるので。体に入ればいいんです。栄養です(笑)」

五輪延期も「しょうがない、なるようになる」。

--でもそうやって、試合に出られなかった時期を乗り越えたのですね。

「今思えばあの期間も自分にとってはよかった。もちろん試合出るのがベストだけど、試合に出られない期間にどれだけ“やれるか”も大事だと思うし。性格的にもあまり落ち込むことはなくて、どこかポジティブだし、悔しさは反骨心とかそういう気持ちになってくので。

 絶対自分のほうが(試合に出てる選手よりも)良いと思ってたし。自信もあったのでそこまで慌てず準備できてたのかなと思います」

--リーグ戦が中断に入ったあと、東京五輪の延期も決まりました。

「やりたかったですけど、延期って決まってしまったものはしょうがないし。モチベーションを保つのは難しいですけど、そこまで考えて生活してないという。しょうがない、なるようになると思っていましね」

--男子サッカーの場合、年齢制限が変更されるかが話題になりました。

「それは気になりました。延期になったのはしょうがないと思ってましたけど、五輪をモチベーションにしてここまで頑張って来たのはあるので、頼むから24歳までにしてくれ、という気持ちはありました(東京五輪出場選手は1997年1月1日以降生まれで変わらず)。でもまあ、それもなるようになるだろうなと思って」

--自分で決められることでもないですしね。

「そうなんですよ。自分がどうこうしても、仕方がないので。大人しく発表を待とうと思いました。1年間しっかり準備できる期間が増えたわけだし、選手として大きくなって五輪迎えられたらなと」

--とはいえ五輪代表チームとしてはあまり時間が取れず結果も出ていませんでした。

「僕的には去年コロンビアに負けたりとか、今年のタイ遠征もよくなかったけど全く心配してなかったんです。オリンピック前にそういう経験ができて、逆にこのままじゃなダメなんだぞっていう、気持ちをみんなが持てたと思うんです。それは本番に向けてはプラスになると思ってた。

 自分自身も危機感というか、このままじゃ優勝できないと思ってたら延期になったので、今年じゃなかったんだな、もう一回しっかり準備しろってことだったんだなと思いました。もちろん海外組も多いし、今はコロナのこともあって集まれないですけど、個人個人が成長するしか優勝に近づく道はない。今は個人個人が成長することだけにフォーカスして、でまた集まった時にチームとして成長できてればいいですね」

「毎試合が就職活動くらいの気持ちで」

--優勝というのは、統一意識としてあるのですか?

「それは間違いなくみんな思ってると思います。優勝しかないですよね、さすがに。3位とか2位とかとっても、ちょっとアレなので。日本でのオリンピックで優勝して、日本がどんな感じになるのかをみたいです」

--サッカーは盛り上がりますしね。

「そうですね。毎回見てる人は多いと思うし、サッカーが金メダル取るっていうのはまた違った盛り上がりが出てくると思うので、金メダルとったときの景色を見てみたいです。それがすごく楽しみです」

--昨年はA代表にも招集され始めましたが、今年3月、6月の代表戦も合わせてなくなりましたね。

「移籍したい、フローニンゲンより上にいきたいという気持ちはめちゃめちゃあるんです。だから、オランダの残りリーグ戦8試合もそうだし代表戦もなくなったというのは、自分の中で移籍のことだけを考えたら痛かったなという気持ちはありますね」

--アピールのチャンスでしたものね。

「フローニンゲンでスタメンとって満足はしてないですし、もう今いるチームよりさらに上いきたい。できるなら、毎年毎年いきたい。そういった意味で最後アピールできる8試合がなくなっちゃったっていうのはちょっと自分にとっては痛かったなというのはありつつ、それもなるようになると思ってるし、それで決まったことが自分にとって良かったこと、って思うようにしています。

 この夏移籍はどうなるか、とにかくいつでも準備しておくというのが大事だと思ってます。理想は今よりもステップアップしたチームで頑張ってスタメンをとるのが理想ですけど、フローニンゲンに残る可能性もあるし、移籍する可能性もあるし。今は待つしかできないので、なるべくコンディションキープしつつ、準備はしておきたいなと思います」

--去年は、堂安律選手がPSVにステップアップするのを間近で見ましたね。

「律もそうだし、フローニンゲンの他の選手もそうだけど他にも何人かステップアップしてる選手をみてるので、ここで頑張って結果残したらいけるんだぞと感じています。律の活躍は間近で見ていたけど、PSVにいったというのは律自身が勝ち取ったもの。もちろん律がいって、次はオレの番だぞという気持ちもありつつ、うまく決まればいいとも思うし、決まらなくてもまたチャンスは転がってる。

 こっちにいると、いつ見られてるかわからないんですよね。そういった意味ではこっちにきておもしろいなというか、日本の時とはちがうというか。いろんな国のいろんな人が見ているんだなと。毎試合が就職活動というか、本当にそのくらいの気持ちでやってます」

理想は、どしんといるだけで守れるCB。

--将来について、どんな目標がありますか?

「そうですね。今はやっぱりプレミアリーグに行きたいなと思いますね。まあ世界一のリーグですしね。プレミアに近づくためにドイツにいったほうがいいかもしれないし、他の国のほうがいいかもしれないし、という考え方をしています。いろんなとこでやってみたいです」

--オランダでプレーするようになって1年半、どんどん華奢な印象がなくなっています。

「ちょっとずつですね。体重も増えてます。でも、もっともっと増やす必要があると思っているんです。いざプレミアで戦うとなったらもっとごつくてでかい選手がいっぱいいる中でやるわけで、もっともっとそこも伸ばしていかないと」

--一方でパス成功率、技術の高さはオランダでも光っています。

「そこはもうフロンターレのときから鍛えられてましたし、自分の良さでもあります。監督もシーズン途中でかわったりしましたが、なかなかうるさい監督もいるのでそれぞれの監督の色を見て、自分の良さの繋いでくところもだせたし、プレーの幅が広がったなと思います。ただパスの部分は自分の良さとして続けてく必要もありつつ、守備のところ、ディフェンスで戦うとか1対1の守備とかそういう部分はもっと伸ばしていかないと」

--大きくて動けるディフェンダーですね。

「そうですね。でもそうでないと上にはいけないと思う。強いだけじゃ逆にだめだと思うので、そこは両方動けて速くて、足元のあるセンターバックを目指していきたいなと」

--理想像はいます?

「あんまそういないんですけど、あえていうと今ならファンダイクとかは、どしんといるだけで最後守れる。ああいう選手になりたいなと。CBでも存在感出せる選手になりたいですね」

--そんな日本人ディフェンダーが出現したら、楽しそうですね。

「おもしろいですよね。そうなれるように頑張ります」

(「欧州サッカーPRESS」了戒美子 = 文)