6月3日、日本サッカー協会(以下JFA)は、女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」の来秋開幕を発表した。一連の新型コロナウイルスに関わる社会情勢もあって、約2か月延期し、拡大予防措置としてオンラインでの発表となった。

 日本最初の全国女子サッカーリーグ(L・リーグ)は、企業チーム主体のアマチュアリーグとしてスタートした。その後の不況下で企業チームが次々に消滅。その後はリーグ存続と選手の受け皿を確保しながら、ピラミッドで言う、底辺部分の拡大に努めてきた。現在では、2部制のなでしこリーグに、東西に分かれたチャレンジリーグまでを含めると32チームによる、実質的な3部制のリーグとして活動している。

 そして、ピラミッドの頂点をより高みに引き上げるため、さらに上のカテゴリーが創設される。それが、来秋に開幕するWEリーグ。日本女子サッカー界で、初めてのプロリーグだ。これは、なでしこジャパンが優勝した2011年の女子ワールドカップ・ドイツ大会以降、激しさを増した女子サッカーの潮流に、取り残されないための挑戦でもある。

 男子で成功したメソッドと潤沢な資金、環境を使って、ビッグクラブが女子チームの強化を進めると、欧州勢はあっという間に世界を席巻した。昨年の女子ワールドカップ・フランス大会でも、優勝はアメリカに譲ったものの、ベスト8に残った他の7チームは全て欧州のチーム。日本も、2015年のカナダ大会では勝利したオランダに、雪辱を許した。

 なでしこリーグも、日本の女子サッカーの発展と、代表強化に貢献してきた。高倉麻子監督の率いる現代表も、主将の熊谷紗希、先月、アメリカ移籍が決まった籾木結花ら一部を除き、選手のほとんどを国内組が占めている。問題は、欧州勢をはじめ、他国の強化体制がさらに上を行っていることで、とりわけ劣勢を強いられているのは、選手を活かす環境作りだ。


 WEリーグでは、各クラブにプロA契約選手5名(他にプロB・C契約選手10名以上)との契約が義務付けられ、リーグが最小数の6チームで行なわれたとしても、30名以上のプロA契約選手が誕生する。「これで女子プロサッカー選手を目指す少女が、飛躍的に増える」とまで、筆者には断言できないが、トッププレーヤーの集団的待遇改善は大きな意味を持つ。

 チーム内で、ひとり、ふたりの選手がプロ契約をしても、練習環境は大部分を占めるアマチュアにプロが合わせることになる。プレーヤーの過半数がプロ契約となれば、そこが変わる。WEリーグでは、C契約まで枠を広げるとその数は90名以上(最小数の6チームとした場合)。単純計算では代表のラージグループに含まれる選手のほとんどが、サッカーを最優先にした生活ができる。

 当然、代表を視野に入れる選手は、プロ契約を目指してWEリーグに所属するだろう。これらのチームに戦力が集中することで、試合のレベルは一定以上に保たれる。監督は、S級ライセンスを持つ指導者(またはS級取得予定の女子指導者)に限られるから、選手は日常的に高いレベルの指導を受けることになるわけだ。

 さらに、国際大会に影響力の強い欧州のカレンダーに合わせた秋春制の導入や、降格制度の凍結は、国際大会に向けた選手のコンディション向上、代表強化スケジュールの円滑化につながる。4つの設立意義のひとつ、「なでしこジャパンを再び世界一にする」という点で、WEリーグがもたらすものは小さくない。

 最大の問題は、このWEリーグに参加する各クラブ(そしてリーグ自体)が、採算をとれるかどうかだ。リーグへの加盟金、年会費、さらに前述した最低15名のプロ契約に、プロリーグに相応しいトレーニング・試合会場の確保。そして、相当数の役職員雇用等が義務付けられている。これまでとは、支出金額が違う。

 選手やコーチングスタッフが、勝利を求め、良質のプレーを提供する。それは、スポーツとしての大前提だ。しかし、同じ畑だけを耕していても、前年度から飛躍的に収穫が増えることはない。これまで手を抜いてきたわけでなければ、なおさらだ。

 こうした中、「全てのチームが『リーグ優勝を目指す』とファンに約束しても、公約達成は1チームだけ。成績の浮沈だけに、集客、売り上げを託すのは、そもそも間違っているのではないか」と考えるクラブ関係者も増えてきた。彼らは、顧客満足度をベースに「試合結果は不確定要素を伴うが、楽しんで帰ってもらうことは約束できる」とアプローチのやり方を模索している。

 WEリーグのクラブ経営には、チーム強化以外の職能に秀でた人間が必要になっていくだろう。リーグに関わる「WE=私たち」の一人ひとりが、それぞれの多様性を活かし、長所、強みを発揮していかなければ、成功はおぼつかない。

 WEは、Women Empowerment の略。参入基準には「役職員の50%以上を女性とすること」が示されている。近年、女性の社会進出が叫ばれて久しいが、こうした「女性が活躍する場所」のモデルケースとしても期待されている。

 これまでは、先を走る男子サッカーを教本としてきた女子サッカー界。そこに女性特有のしなやかさを加えて、その魅力を伝え、WEリーグを発展させていってほしい。

文●西森 彰(フリーライター)

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