バルセロナでこの中断期間中にメディアを賑わせた選手のひとりがアルトゥールだ。むしろ平常時よりも話題に上る機会が増えていた感すらあり、当然ながらこれはプレイヤーにとっては歓迎すべきことではない。

 実際、シャビの後継者という触れ込みで約2年前に加入して以来、期待されたインパクトを放つことはできていない。あまりにも目立たないがゆえにピッチ上でプレーしていることを確認するのが難しい印象を与える試合も珍しくない。これでは他の多くのチームメイトがそうであるように、トレード要員の扱いを受けても致し方ない。

 現在のバルサで必要不可欠な戦力はリオネル・メッシ、フレンキー・デヨング、テア・シュテーゲンの3人のみ。クラブの金庫は枯渇し、今シーズンの決算において6月30日までに1億2400万ユーロ(約155億円)を選手の売却から捻出する必要があるが、まだその目標額の半分にも達していない。

 昨夏、同じような状況で手っ取り早くキャッシュを手にするために、ネトとの交換トレードでヤスパー・シレッセンをバレンシアに差し出すという“ウルトラC”を編み出したのは周知の通り。このままではアルトゥールがたとえば最近獲得候補として急浮上しているミラレム・ピャニッチ(ユベントス)の交換相手に選ばれてもまったく不思議ではない。

 いまバルサに君臨しているのはメッシとルイス・スアレス2選手。そこにテア・シュテーゲン、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ、セルヒオ・ブスケッツといった同じく重鎮が攻守両面でサポート役を果たしている。年々チームの高齢化が進行しているとはいえ、ここに実力派の新戦力が加われば、ラ・リーガを勝ち続けることもチャンピオンズ・リーグ(CL)を奪還することも決して不可能ではない。

 だからこそクラブは近年伝統のプレーモデルから多少乖離してでも、勝利を最優先するチーム作りを進めてきたが、監督の権限が弱く、会長への風当たりが強まっているのが現状で、リーダーシップが欠落している。これでは2014-15シーズンのCL制覇を境に、チームが弱体化しているのも必然の結果である。

 結局のところダニエウ・アウベス、ハビエル・マスチェラーノ、アンドレス・イニエスタ、ネイマールといったその間、退団した主力の穴をいまだに埋めることができていない。

 昨夏の補強の目玉だったデヨングとアントワーヌ・グリエーズマンにしても、いまだにベストの起用法を見出すことができていない。とはいえヨーロッパで確固とした実績を築いてきた2人は多少のパフォーマンスの変動に関係なく、市場価値は高い水準を維持しており、そこがアルトゥールと異なる点でもある。

 このブラジル代表MFに対しては、先日、ルイス・スアレスとルイス・セサル・メノッティという2人の巨匠が揃って辛辣な意見を浴びせている。

 まずスペイン人で唯一バロンドールに輝いた前者が「ここまで貢献らしい貢献を見せていない。この程度なら、(カルレス・)アレニャ(現在ベティスにレンタル移籍中)を起用していたほうがましだよ」とセール・カタルーニャのラジオ番組で一刀両断すれば、バルサやアルゼンチン代表を筆頭に豊富な指導歴を誇る後者は、「ディアリオ・スポルト」のコラムで、「アルトゥールは毎試合無難なプレーしか見せていない。採点すれば6点止まりだ。バルサでプレーしたければ、時には8点や9点の採点を与えられるだけの活躍を披露する必要がある」と一喝したのだ。

 メノッティは同コラムでミスを恐れて無難なプレーに終始してしまうという指摘を他の中盤の選手やグリエーズマンに対しても範囲を広げて行っていたが、一つ確かなのは、アルトゥールに残されている時間的な猶予は決して長くはないことだ。

 もちろんメッシをはじめとする主力選手の庇護の下でプレーし続けるだけでは何も変わらない。評価を覆すためには、何をおいてもまずはミスを恐れずにプレーすること。そしてチームを引っ張っていくという強い気概を見せなければならない。

 ラ・リーガは6月11日の再開が正式に決定した。8月に同じく再開が予定されているCLも含め、アルトゥールにとって生き残りをかけた重要な戦いが始まる。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳●下村正幸

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