新型コロナウイルス感染症の影響による活動休止を経て、グループ練習から全体練習へと移行しようとした矢先、ホームタウンの北九州市が感染の第2波に襲われた。

 5月19日に練習を再開し、順調にコンディションを戻してきていたが、リーグの再開(J2は6月27日)が決まるとほぼ同時に、練習メニューを再び後退させることになった。

 それでも前向きに活動している。チームを率いる小林伸二監督は5月29日にオンライン上での記者会見を開き、「(試合日程が)決まったのでフォーカスしてやれる。現状に応じてチャレンジしていく。我々にできることでチャレンジする」と強調。全員が揃っての練習ができないことも想定しながら再度の開幕に備える。

 そのなかで再開後のキーパーソンになるのが、キャプテンの川上竜だ。シーズン前から「サポーターの熱い想いと期待は僕たちも感じ取っている。あとは選手たちがピッチで表現して必ず勝利したい」と奮闘を誓い、福岡と対戦したリーグ開幕戦でも存在感を示した。

 福岡市出身の川上にとって特別なダービーマッチだったが、「チームとして戦ったのでそういう想いは試合の時は置いていった」と目の前の勝負にこだわり、ほぼ満員のホーム・ミクスタで躍動した。
 チームでは開幕までにCBが相次いで離脱。福岡戦では、川上はボランチでの出場を有力視されていたが、急遽、CBへとポジションを下げた。それでもJ3時代にボランチとCBをこなした経験を活かし、意欲的にラインを押し上げるなど攻撃重視のサッカーを体現。守備でも身体を張り、数的不利な状況でのカウンターを受けても、ゴールを死守するなど、0-1で敗れたとはいえ、福岡の分厚い攻撃陣を最少失点にとどめた。

 敗戦も手応えのあるものだった。川上は惜敗したゲームを「できたこと、できなかったことをチームで整理してまた、次の試合に向けて準備していきたい」と振り返り、気持ちを新たにした。

 小林監督は川上を「ぶれない選手」と評価する。

「ゲームに勝った次の週は楽しいし、負けると考えごとが増えるという状況になっても、彼はトレーニングで必ず先頭に立っている。我々がチャレンジするには引っ張る選手がいる。シーズンを通して伸びていくチームを作ってほしいし、そういう個人であってほしい」

 再開後も川上のパフォーマンスがカギを握るはずだ。「今のサッカーは強度が高い。切り替えの早いサッカーをしていく」(小林監督)というチームコンセプトを考えれば、視野が広く、リスクコントロールもできる川上は貴重な存在と言える。戦術練習が満足にできないままに再開日を迎えた場合、ピッチ上のコンダクターとしての役割も担うだろう。

 それに、北九州の現実を考えれば、チームを複数に分けたまま再開を迎える可能性は否定できない。川上のいくつものポジションに難なく対応できるユーティリティさは、その事態に陥っても頼もしい。

「自分のプレーをしっかりすることを考えて、その上でチームを引っ張っていきたい」。川上は今年のシーズンをそう見据えている。今年のレギュレーションを考えれば、距離が近いという点で、敗れた福岡との再戦も早々に組まれるかもしれない。難局で矜恃を示すキャプテン。精神的なタフさと冷静な頭脳を活かし、厳しい状況の北九州でチームの先頭に立ってみせる。

取材・文●上田真之介(フリーライター)

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