水戸はリーグ中断期間中の3月に浦和と練習試合を行なっていた。45分×4本で最終スコアは10-10という派手な打ち合い。そのなかで特に存在感を示したのが今季、鹿島から期限付き移籍で加入し、背番号10を背負っている山口一真だ。

 2本目の途中から左サイドハーフに入ると、キレのある動きで攻撃を牽引。右サイドの松崎快からパスを受けてペナルティエリアに侵入し、右足を振り抜いて得点も奪った。

 阪南大時代に関西大学リーグで3度のアシスト王に輝くなど、大学屈指のアタッカーとして注目を集めた山口。しかし18年に加入した鹿島では、2年間でリーグ戦の出場はわずか17試合、先発にいたっては3試合と思うような活躍はできなかった。

 それでも「理想の自分に一歩一歩近づいている実感もある」と下を向くことはない。

「試合に出られなかったからこそ、学んだことはあります。学生時代は常に試合に出ていたので、出られない選手の気持ちが分かりませんでした。でも、今は分かりますし、そういう時期を過ごしてひと回り大きくなったと思っています」

 その進化を実証するためにプロ3年目の今季、移籍を決意。様々な選択肢があるなかで選んだのは「最も熱意を感じた」水戸だった。


 しかし、開幕戦に背番号10の姿はなかった。沖縄キャンプ中に負った怪我の影響で、コンディション不良。欠場を余儀なくされた。それでも「焦りはなかった」という。

「いつか自分がチームに必要な時が来るはずですから。その時のためにしっかり準備しています」

 リーグが中断しても自らと向き合ってトレーニングに励み続けた。その結果、先述の浦和戦をはじめ、チーム活動休止前のいくつもの練習試合で好パフォーマンス。コンディションは良好で、チームメイトとの連係も深まっている。

「誰がどういうプレーをして、どのタイミングでボールを欲しがるか理解できた。コンディションも良くなりましたし、フィジカル面でもパワーアップした実感があります。中断は自分にとってプラスなのは間違いありません。時間を有意義に使えたかは結果でしか示せない。良い状態でプレーできれば、必ず結果を出せると思っています」

 山口は鋭い視線でいいプレーではなく「プレーで違いを見せる」と言い切る。想像力に溢れ、ダイナミックかつ鋭利にゴールへ迫るスタイルで水戸の、そして自らの未来を切り開いていく。

取材・文●佐藤拓也(フリーライター)

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