『ワールドサッカーダイジェスト』では、現役イタリア人監督のロベルト・ロッシ氏にセリエAでプレーする23歳以下の選手の中から、「超ワールドクラス」へ到達しそうな有望株をポジション別にひとりずつ選んでもらった。

 元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニの下でスタッフを務めたこともある指揮官が厳選した「次代のトップ・オブ・トップ候補」7人を紹介する。

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「ストライカー」
ラウタロ・マルティネス
■現所属クラブ:インテル
■代表/国籍:アルゼンチン代表
■生年月日:1997年8月22日(22歳)
■身長・体重:174㎝・72㎏
■19-20公式戦成績:31試合・16得点・4アシスト

 身長は175センチにも届かないが、体幹の強さが示す通り筋肉量が多いコンパクトな体格に強大なパワーを秘め、すでに技術的にも戦術的にも極めて完成度が高い。

 アルゼンチン人ストライカーとしてはテベス、アグエロの系譜に連なるタイプで、この世代では間違いなく世界のトップ5に入るタレントだ。

 前線をダイナミックに動きながら組み立て、崩し、フィニッシュと攻撃の全局面に絡む1トップとしても、基準点型のCFと組んでその周辺で動くセカンドトップとしても機能。今シーズンのインテルでは後者としてプレーし、パートナーのルカクと連携した動きで中盤からのパスを引き出し、攻撃をフィニッシュする役割を担っている。

 その一方で、アルゼンチン代表で見せているように、「偽9番」的な1トップとして頻繁に中盤に下がって組み立てに絡み、ゴール前に作り出したスペースを使ったり使わせたりするプレーも秀逸。数年以内には、世界トップ5のストライカーに成長する可能性は十分だ。


「ウイング/セカンドトップ」
フェデリコ・キエーザ
■現所属クラブ:フィオレンティーナ
■代表/国籍:イタリア代表
■生年月日:1997年10月25日(22歳)
■身長・体重:175㎝・70㎏
■19-20公式戦成績:26試合・7得点・5アシスト

 爆発的なスピードと強力なシュート、思い切りのいいプレー選択に象徴される強いパーソナリティーを持ち味とするイタリア屈指のタレントだ。

 90年代後半から00年代にかけてパルマやフィオレンティーナなどでストライカーとして活躍した父と比べると、やや粗削りでテクニックの面でも見劣りするが、際立ったフィジカル能力を武器に同等かそれ以上の違いを作り出す。

 マーカーをぶっちぎる長短のスプリント力だけでなく、高強度のアクションを試合終盤まで高い頻度で繰り返せる持久力の高さをも兼ね備えているところが最大の長所。まだ戦術理解力の面に難があり、単独で局面を打開することにこだわり過ぎて無駄にエネルギーを浪費してしまう傾向があるものの、今後その部分が改善され、効果的に周囲と連携しながらより効率的にプレーする術を身につければ、持ち前のクオリティーをチームのために活かし、より高い頻度で決定的な違いを作り出せるようになるだろう。

 伸びしろの大きさも含めて考えれば、数年後にはイタリアを代表するだけでなく、世界のトップ10に入るサイドアタッカーに成長できるはずだ。




「攻撃的MF」
ニコロ・ザニオーロ
■現所属クラブ:ローマ
■代表/国籍:イタリア代表
■生年月日:1999年7月2日(20歳)
■身長・体重:190㎝・79㎏
■19-20公式戦成績:24試合・6得点・2アシスト

 1月に膝の靭帯断裂という大怪我を負って長期離脱中だが、ポテンシャル的にはウイングのキエーザやセントラルMFのバレッラと並んで、イタリアを代表するワールドクラスに成長する可能性を秘めたビッグタレント。190センチの身長にスピードとコーディネーション、そしてテクニックとファンタジアを備えたモダンな攻撃的MFだ。

 左足のテクニックとゴールセンスに代表される攻撃のクオリティーが抜きん出ている一方で、守備に関してはまだ戦術理解度と集中力・継続性の両面で大きく向上の余地を残していることもあって、現時点ではトップ下、ウイングといった前線のポジションで起用されるケースが多い。

 しかし、資質的にはフィジカル的にも技術・戦術的にも、もう一列下がった中盤で攻守両局面に貢献できるだけのものを持っている。チーム全体を押し上げ敵陣でボールを支配して戦うタイプのチームでならば、例えばデ・ブルイネやディ・マリアのように攻撃的なインサイドハーフとして機能し、違いを作り出せるはずだ。

 トップ下やウイングとしては爆発的なスピードと突破力にいささか物足りなさが残るだけに、そこで世界トップ10に入るのは難しいかもしれないが、攻撃的MFならばワールドクラスに成長できる。90分を通して集中力を保ち、攻守両局面に常にアクティブに関与するインテンシティーを身につけることが、そのための最重要課題だろう。


「セントラル/守備的MF」
ニコロ・バレッラ
■現所属クラブ:インテル
■代表/国籍:イタリア代表
■生年月日:1997年2月7日(23歳)
■身長・体重:172㎝・68㎏
■19-20公式戦成績:29試合・3得点・6アシスト

 小柄ながら、抜きん出たダイナミズムと高い技術、優れた戦術眼を備え、ピッチの広いゾーンをカバーするモダンな万能型MFだ。インテルでもイタリア代表でも、3MFのインサイドハーフとして他の2人とポジションを入れ替えながら、攻撃的にも守備的にも振る舞うタスクを担う。

 攻撃時は最終ラインからパスを受け、前線に質の高いキーパスを送り込む「出し手」としても、前線に走り込こんでパスを引き出し、仕掛けやフィニッシュに絡む「受け手」としても機能。守備でもアグレッシブなプレッシング、コンタクトプレーによるボール奪取、パスコースを読んでのインターセプトと、いずれのプレーも高いレベルでこなす。

 この年代では際立った完成度を誇り、経験値をさらに高めてプレーの安定性・継続性が高まればワールドクラスの仲間入りも十分に可能だ。

 「セントラル/守備的MF」というカテゴリーにぴったり当てはまるわけではないが、攻守の比重が半々に近いプレースタイルを持ち、さらにセリエAのU―23世代に彼に比肩するクオリティーを備えたセントラル/守備的MFが見当たらないため、このカテゴリーに選出した。



「サイドバック」
テオ・エルナンデズ
■現所属クラブ:ミラン
■代表/国籍:フランス
■生年月日:1997年10月6日(22歳)
■身長・体重:184㎝・78㎏
■19-20公式戦成績:25試合・6得点・3アシスト

 SBとしては世界トップクラスの爆発的なスピード、さらには左足の正確なクロスや強力なシュートを併せ持ち、潜在能力では太鼓判が押せる超ワールドクラス候補生だ。

 課題は試合の中でも、シーズンを通して見てもパフォーマンスにムラがあり、安定感に欠けること。その点がA・マドリーでもR・マドリーでもレギュラー定着を果たせなかった理由のひとつだ。

 ただ、昨夏に加入したミランでは途中就任したピオーリ監督の信頼を得て、絶対的な主力に君臨。そして、サポーターからの支持も後押しとなり、持ち前のタレントを存分に発揮する場面が一気に増えた印象だ。

 SBには守備力以上に攻撃力が求められる時代になってきているだけに、戦術面などまだ課題の多いディフェンスを磨き、パフォーマンスの安定度を高めれば、世界のトップ3に入る左SBに成長しても不思議はない。



「センターバック」
マタイス・デリフト
■現所属クラブ:ユベントス
■代表/国籍:オランダ代表
■生年月日:1999年8月12日(20歳)
■身長・体重:189㎝・90㎏
■19-20公式戦成績:27試合・2得点・0アシスト

 身長189センチ・体重90キロという強靭な身体に、必要十分なスピードとアジリティー、安定したテクニックと対人守備の強さ、鋭い読みと戦術眼、そして際立ったパーソナリティーとリーダーシップを備えた超ワールドクラス予備軍だ。

 この年代のCBとしては段違いの完成度に達しており、しかもユベントスという競争力が高い環境の中で着実な成長を遂げている。

 ユーベ1年目の今シーズンは、キエッリーニの故障離脱を受けて序盤戦から安定した出場機会を手に入れた。その当初は小さなミスが重なって失点に絡む場面も目に付いたが、試合を重ねるに連れてセリエAの環境とサッカーに慣れ、パフォーマンスも明らかに高まっている。

 コンビを組むボヌッチが「最終ラインのレジスタ」としての機能を担っている関係もあり、ビルドアップにおける貢献度はそれほど高くはない。ただ、必要とあらばリスクを怖れない縦パスでボールを前に進める積極性は持ち合わせている。

 現時点では数的不利やオープンスペースでの1対1といった守る側にとって難易度の高い状況では困難に陥るケースもあるが、経験値が積み上がればこうした場面の勝率も高まっていくはず。超ワールドクラスの仲間入りは、単に時間の問題でしかないだろう。



「ゴールキーパー」
ジャンルイジ・ドンナルンマ
■現所属クラブ:ミラン
■代表/国籍:イタリア代表
■生年月日:1999年2月25日(21歳)
■身長・体重:196㎝・90㎏
■19-20公式戦成績:26試合・33失点・10クリーンシート

 すでにセリエAでレギュラーとして5シーズンを過ごし160試合以上に出場している守護神が、まだ21歳。にわかには信じ難い。

 ミランというプレッシャーの大きなビッグクラブで、しかも困難な時期の方がずっと長い5年間を過ごす中で、一時的には停滞期を迎えたこともあった。

 しかし直近の2シーズンは、プレー展開の読みや状況判断、シュートブロックや飛び出しの技術が着実に高まってミスの頻度も明らかに下がり、さらにビルドアップへの参加がより積極的かつ効果的になるなど、GKとしての総合的なクオリティ-が大きく向上している。

 196センチという大柄な体格に似合わぬアジリティーに、際立ったパーソナリティーを備えた超逸材であり、年齢からすればGKとしての完成度の高さは驚異的なレベルにある。

 超ワールドクラスへのステップアップに足りないのは、CLの舞台で主役を演じることで初めて得られる経験値だけだ。

 それを愛するミランで果たすのか、それとも現クラブ以上のメガクラブに移籍することで果たすのかは、今後の見どころである。

分析●ロベルト・ロッシ
翻訳●片野道郎

●分析者プロフィール
ロベルト・ロッシ/1962年3月16日生まれのイタリア人監督。MFだった現役時代は、チェゼーナの育成部門でアリーゴ・サッキ(元イタリア代表監督)に、ヴェネツィアではアルベルト・ザッケローニ(元日本代表監督)に師事。99年に引退し、01~08年はラツィオやインテルなどでザッケローニのスタッフ(コーチ兼スカウト)を務める。その後は独り立ちして下部リーグの監督を歴任。19年1月からチェゼーナ女子(セリエB)の指揮官を務める。『ワールドサッカーダイジェスト』ではチーム戦術やプレーヤーの分析が好評を博している。

※『ワールドサッカーダイジェスト』2020年5月21日号より転載