小平グラウンドに、懐かしい呼び名が帰ってきた。木訥な人柄だけど、ダイナミックなプレーが魅力的な以前の彼とは違う。ただし、こちらも十分魅力的な新たな“コンちゃん”だ。

「彼は、凄いんですよ」

 長年、大学サッカーを支えてきたライターの方から、そう教えられたのが大学時代の紺野和也だった。初めてプレ-を見た感想は、ひと言に尽きる。たまんねぇな――。161センチと小柄だが、機知に富んだプレーに拳を握り、変速ギアを巧みに使って追っ手を交わすドリブルには感嘆の声が漏れた。左利きで、小よく大を制すスタイルに、高校時代から“武南のメッシ”と呼ばれることにも頷けた。

 昨年2月に、複数のJクラブが獲得に乗りだす中で、FC東京への加入を決めた。昨季は特別指定選手としても、J3の4試合に出場した。迎えたプロ1年目の今季は、ACLのグループステージのパース・グローリー戦や、J1開幕戦の清水戦で途中出場。すでに、その魅力の一端を垣間見せた。

 新型コロナウイルス感染拡大による中断を経て再開するリーグ戦では、さらに活躍の場が広がるだろう。過密日程の中で交代枠も5人に拡大され、同じくプロ1年目の安部柊斗や、中村穂高の大卒ルーキートリオの出場機会は増加するはずだ。

 高校時代から校名を冠して武南のメッシ、法政のメッシと呼ばれてきた。本人は、「言ってもらえるのは嬉しいことだけど、あまりにも(リオネル・メッシが)スーパーなので若干プレッシャーですけどね」と言う。だが、数多いるネクスト・メッシのひとりとしてひとくくりにするのは惜しいほどの素材だ。

 チーム最古参選手となった森重真人も、「大卒の3人にはこの1年を掛けて主力として戦ってほしい」と語り、期待を寄せるひとりだ。そんな森重は、紺野についてこう口にしていた。

「コンちゃん? いいよね。きっと、これから研究されて潰される場面も出てくるかもしれない。それでも今と変わらず強気に仕掛けてほしい。そうなると、きっと面白くなると思うよ、ああいうタイプは」


 そうした期待を集める紺野は、プロとして歩み始めたばかりだが、そこでの作法も理解している。

「この世界は、どれだけ得点やアシストを記録することで評価される。チャンスをもらったときに、結果を残せるかどうか。いつ、そのときがきてもいいように常に100パーセントの準備をしていきたい」

 そして、そのプレーからあふれ出るのは、サッカーに対する変わらぬ思いだ。

「何よりもサッカーを楽しみたいし、それをプレーで表現したい」

 ブラジル人トリオや、永井謙佑ら定位置を争うライバルは強烈だが、そこに埋もれない光がある。ボールを持てば胸躍り、スタジアム全体を巻き込む個性だ。ようやく再開するJ1で、その紺野のプレーがまた楽しめる。無造作過ぎるヘアースタイルの少年漫画の主人公みたいに、叫ばずにはいられない。「ワクワクすっぞ」。

取材・文●馬場康平(フリーライター)

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