6月2日、川崎がリーグ再開に向けて、本格的にリスタートを切った。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、クラブは3月下旬から活動を休止。選手たちは自宅でのトレーニングを続け、緊急事態宣言の解除後に段階的にグループ練習をスタート。6月2日に約2か月ぶりにチーム全員でのトレーニングを再開させた。

 念願の再集合に鬼木達監督は、柔和な笑顔を浮かべる。

「実際にはグループトレーニングもありましたが、選手全員が集まったのは2か月ぶりです。選手たちはホッとしたと思いますし、僕も選手全員の動きが見れて、皆しっかりやれていたので、嬉しさを感じる1日でしたね」

 活動を再開するにあたって、選手たちには感謝の気持ちを持ってプレーしようと呼びかけたという。練習前にはチームはキャプテンの谷口彰悟を中心に、医療従事者らへの想いを込めた約30秒の拍手をグラウンドに響かせた。

「仕事をできるようになったのはどういう方々のお陰なのかということ。再開が決まったので、それに向かって頑張っていこうという話をしました」


 再開初日のトレーニングではランニングやパス回し、シュート練習、ミニゲームなどを実施。指揮官の目には選手たちのコンディションは良好に見えたようだ。ただし、パスサッカーをベースにする川崎ならではの課題もある。

「本当の意味で言いますと、パスひとつのズレだとかタイミング、自分たちの生命線のところはまだだと感じます。そこは意識のところでだいぶ変わると思いますので、初日から口を酸っぱく言いました。時間とともに解決していくはずです」
 
 またトレーニングマッチなどのスケジュールは現時点で不透明も、「状況にもよりますが、やらないと怪我につながってしまうと思いますので、最終的にやっていきたい」と話した。

 リーグ再開に向けては様々な懸念事項もある。例えば緊急事態宣言の解除はバラツキがあり、各チームの再スタートの日程も異なった。鳥栖はJ1で最も早く5月15日にチーム練習を再開。川崎とは2週間以上の差が生じている。もっとも鬼木監督は、俯瞰的な視点で、イレギュラーなリーグ戦へ臨むべきとの考えを示す。

「そこに関しては、スタッフたちにも話したのですが、得をしたとか損をしたとか、小さいことを言うのはやめようと。Jリーグが始まるまでの約5週間、しっかり期間を取ってもらえました。今年は自分たちのチームが勝つことも大事ですが、Jリーグ全体を盛り上げていくことがすごく必要だと思います。選手にもJリーグを盛り上げていこう、前だけを向いていこうと話をしています。今までどおり一戦必勝でやる。そしてやはりリーグ戦を盛り上げたいですね」

 今季のJリーグは、選手たちの負担軽減のため“5人交代制”や、日程の不公正などを配慮した“降格なし”ルールなど、通常とは大きな変化を見せそうだ。

 現に鬼木監督も「どのチームも連戦になっていくと思います。そのなかでもチームによると思いますが、前半45分をアグレッシブに飛ばしてくるチームもあるかもしれません。こればっかりは誰にも分からない展開が起きると思います。自分たちでいうと相手を疲れさせて、というところが、5人交代制だと効かないかもしれない」と予想する。

 ただそれでも意識するのは、スタイルを貫くことだ。

「自分たちがやってきたところが一番ベースになると思います。攻撃的なところですよね、そこのパワーを落とさないように試合は続けていきたい。攻撃のところは皆さんも期待していると思います」
 その意味では、リーグ再開までの約1か月の準備期間では、各選手のコンディションを向上させる狙いとともに、攻撃のさらなる強化へ今季から導入した4-3-3の成熟度を上げる作業も行なわれそうだ。

「システムを活かしたサッカーをしつつ、個人のところも逃したくない。やっぱり贅沢かもしれないですが、中からも外からもどこからでも崩せるのが、自分たちの魅力だと思います。だからこれを言い出したら全部だろうとなってしまいますが、遅行も、カウンターも、欲張れるところは欲張るサッカーをしていきたい」

 改めて強調するのは「期間の問題はありますが、そこに言い訳をせずにJリーグを盛り上げるという意味では、自分たちが、僕だけでなく、選手も先頭に立って引っ張っていきたいとの想いが強いと思うので、質の高いサッカーをどんな状況でも見せられるようにしたい」という点だ。

 その指揮官の考えは、小林悠が「連戦や、選手の交代人数、降格がないなど言い訳できる要素がいっぱいあるシーズン。言い訳せずに自分たちにどれだけ矢印を向けて、チームとして優勝に向かっていけるか。言い訳させない雰囲気にしないといけない」と語るように、チームにしっかり浸透しているようだ。

 不測の事態は続きそうだが、高い志を持った鬼木監督の下で、川崎は新たなスタートを目指す。一戦必勝、目の前の試合に全力で挑むチームの戦いからは勇気をもらえそうだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)