フランクフルトでプレーする鎌田大地が、第28節フライブルク戦でようやく待望のブンデスリーガ初ゴールを決めた。

 2017-18シーズンにブンデスリーガ3試合、そして今季は21試合に出場し、何度も何度もシュートを打ち続けてきた。だが強烈なシュートも、巧みなシュートも、なぜかことごとくゴールに嫌われていく。ギリギリに外れたり、ポストやボーに跳ね返ったり、GKの好セーブに阻まれたりした。ゴールかと思えばVAR判定でほかの選手がオフサイド判定となり、ファールをするなどで取り消され、得点だと喜べば試合後にオウンゴールに変更されたこともあった。

 一方でヨーロッパリーグ(EL)では8得点、ドイツカップでも2得点を決めている分、逆になぜブンデスリーガだけゴールが生まれないのか、ファンも首脳陣も、指導陣もチームメイトも不思議がっていた。もちろん本人も、好プレーを続けていたという自負があった。

「悪くないと思うし、僕自身シュートが下手だとは思っていないので、こうたまたま今、点が取れない時期なのかなと。我慢しないとだめだと思う。こういう経験は今までもあった。1点が取れれば変わると思う。プレー自体は僕自身今日もすごい良かったと思うし、できることも増えてきて、成長も感じられてる。あとはほんと点が取れればすごいまたね、成長できるかなと思います」(第3節デュッセルドルフ戦後のコメント)

 鎌田は、得意のトップ下だけではなく、2トップの一角、右サイドFW、右インサイドハーフ、左インサイドハーフなど様々なポジションで起用法をされた。毎試合ごとに自分の役割を整理し、チームのためにやるべきことをしっかりとこなしながら、するするとゴール前に抜けて出ていくチャンスを狙い続ける。

 ただ、フリーでペナルティエリア内に走りこんだのにパスが出てこない。今スルーパスを出してくれたら抜け出せるというタイミングで、ドリブルで持ち込まれてしまったりするシーンも少なくなかった。相手がペナルティエリア付近に守備を固め、マンツーマン気味に相手に食いつかれるとやりにくさは出てくる。試合ごとにチャンスにたくさん絡めることもあれば、なかなかボールを触る機会がないまま急にシュートチャンスが訪れることもある。

 それでも鎌田は自分のプレーに対する自信を失ったことはない。何度シュートを放っても、何度も不運なことになっても、そこへ至るまでの狙いは間違っていないと続けてきた。

「(自信を失うとか)そういうのはまったくないです。自分の狙っている通りに、内に入って股下とかを、狙って。僕自身の意図としてやっているけれど、たまたま入っていないだけ。最後の部分には自信を持っているので、気持ち的な問題ではないと思います」(第5節ドルトムント戦)

 昨年末のケルン戦後には、こんなことも語っていた。

「シーズン始まるまでは自分がこのチームでここまで試合に出ているというイメージはあんまりなかった。試合に出られているというのはいいことだし、いろんな部分で自分も成長を感じている。でも、試合に出たらでたでいろいろ苦しい部分もある。出られなかったときよりもいい悩みですけど、欲深いもので……」

 そして、こう続けた。

「上を目指しているという証拠だとも思う。ひとつずつ、難しい時期になりましたけど、またここで頑張ればもう一回り成長できるはず。あと半年というか、試合数はたくさんあるので、しっかり試合で続けられるようにしたいなと思います」

 なお、ようやく決まった鎌田のブンデスリーガ初ゴールは、泥臭いゴールだった。フライブルク戦の79分、ペナルティエリアで不用意な動きをしたドイツ代表DFロビン・コッホに一気に迫る。ボールを左足のつま先でかすめる形で放たれた3メートルの距離からのシュートがやっと、やっとゴールネットに収まった。1-3と苦しい展開だったチームにもたらした貴重な得点だ。

 この日、鎌田は2トップのトップ下でスタメン起用され、躍動した。アディ・ヒュッター監督は「カマダはトップ下のポジションで本当にいいプレーを見せてくれた」と試合後に称賛を送った。35分にアンドレ・シウバが決めたゴールも、鎌田のシュートから生まれた。53分にもフリーでシュートチャンスもこれはGKのセーブにあっていた。

 リーグで5試合勝ち星がなかったチームは、フライブルク戦からまた3バックシステムに回帰。長谷部誠も3バックの中央でレギュラー復帰を果たし、チームに確かな秩序と落ち着きをもたらした。軽率なミスから3失点というのはまだまだ改善の余地があるのは間違いないが、1-3から3-3に追いついたことには大きな価値があった。

 長谷部から攻撃陣への正確でタイミングのいい好パスが配給されることで、攻撃の流れもだいぶ良くなっている。トップ下の位置でボールを呼び込む動きにたけた鎌田が、起点となるプレーで何度もチャンスを生み出していく。『Frankfurter Allgemeine』紙は鎌田が新システムの大事なギアとして機能していた点をあげ、「今後に向けて大きな希望になるだろう」と評していた。

 ヒュッター監督は「試合全体を振り返ると、勝利できるチャンスの方が大きかった試合だった。3失点はやはり多すぎる。引き分けで終わったのは、トップパフォーマンスを見せていたフライブルクGKアレクサンダー・シュボローがいたことに加え、自分たちのチャンスを決めきる力が欠けていたことが理由としてあげられる」と勝ち試合を逃したことを悔しがったが、土壇場での同点劇だっただけに「重要で価値のある勝ち点」を素直に喜んだ。

 ただ指揮官は「2トップとトップ下のダイチは非常にいいプレーをした。ただアンドレ(・シウバ)とダイチにはそれぞれあと1~2点ずつは取ってくれたらという願いもあった。バス(・ドスト)も2つのチャンスがあった」と注文も忘れずに付け加えていた。攻撃陣には今後チャンスを決めきる力が求められるのだ。

 その要求に、鎌田は応えつつあるといえるだろう。改めて潜在能力の高さを披露した背番号15に、クラブも契約延長の話を進めているようだ。スポーツディレクターのブルーノ・ヒュブナーは「我々にとって、いいアイディアを持っている重要な選手」と評価し、「話し合い中」であることを明かしていた。契約延長は今季終了後に行なわれるとみられる。

 初ゴールをあげた23歳は、続く第29節ヴォルフスブルク戦でも決勝ゴールを決める活躍でクラブを勝利に導いた。このままクラブをリーグ残留へ、そしてバイエルンとのドイツカップ準決勝、バーゼルとのELベスト16突破へ導く活躍をみせてくれることを期待したい。

筆者プロフィール/中野吉之伴(なかの きちのすけ)

ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを保持する現役育成指導者。執筆では現場での経験を生かした論理的分析が得意で、特に育成・グラスルーツサッカーのスペシャリスト。著書に「サッカー年代別トレーニングの教科書」「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」。WEBマガジン「中野吉之伴 子どもと育つ」(https://www.targma.jp/kichi-maga/)を運営中